ここ数年、東芝やシャープなど日本を代表する企業の経営危機が立て続けに起こるなか、「プロ経営者」の存在が注目を浴びることが多くなった。そこで今回は、プロ経営者としてこれまで数多くの企業再建に携わり、4月に『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版)を上梓した山田修氏に、企業再生に必要な条件や具体的手法について話を聞いた。
――山田さんは本書で「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」と指摘されています。
創業社長は情熱とエネルギーをもって遮二無二働き、直感勝負をします。構造的分析や戦略的立案などのアプローチではなく、エネルギーのままに突っ走って、成功と失敗に分かれてしまいます。戦略なき経営でも成功して、会社が成り立っている場合もあるのです。
一方、サラリーマン社長は出世の報酬として社長という職位に就くので、従来の経営を踏襲し、ほかのことはやらないのが基本的なパターンです。社長に指名してくれた先輩を裏切れないことも踏襲の理由で、しかも多くの場合、先輩は会長や顧問、相談役などに就いて影響力を発揮しています。従って戦略的な決断ができにくい環境にあるわけです。こうした意味で、「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」といえます。
――残りの1割は、どのような社長なのですか。
山田 1割もいませんが、プロ経営者です。たとえば、元LIXILグループ社長の藤森義明氏、資生堂社長の魚谷雅彦氏、カルビー会長の松本晃氏。それから私は必ずしもプロ経営者だとは思っていませんが、ローソン会長の玉塚元一氏(5月末で退任)も、世間ではプロ経営者として扱われています。要するに他の業種に移っても、それまで培ってきた本人が築いてきた実績の再現性を期待され、実際にうまく経営できる人で、外資系出身が多いですね。
どの業界に行っても状況分析ができて、こういう手段を打てばよいと判断できて、実績を上げるのがプロ経営者です。口はばったいのですが、私も外資系4社と日系2社で社長を務め、すべて異なる業種でした。私が社長を務めていた時代にプロ経営者という言葉はなく、私は「企業再生経営者」と呼ばれていました。