柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第20回が5月21日に放送され、平均視聴率は前回から0.6ポイント増の14.5%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
今回は、すでに殺害されている井伊直親(三浦春馬)の娘を名乗る謎の女・高瀬(高橋ひかる)が井伊谷に現れたことに始まる隠し子騒動が描かれた。直親も高瀬の母もすでにこの世を去っているため、真偽を確実に確かめる術はない。だが、最終的には直親の笛の音を再現した鼻歌が決め手になり、直虎(柴咲)は逃亡生活を送っていた頃の直親が現地で設けた子であると認定。直親をめぐってわだかまりを抱えていた直虎としの(貫地谷しほり)も、そろって直親の甘い言葉にだまされていたことに気付き、意気投合して完全に和解した――という展開だった。
今回、なんといっても視聴者の注目を集めたのは、ドラマ初出演となる高橋ひかるが演じた、直親の忘れ形見・高瀬。粗末な格好に毛皮をまとい、顔は土ぼこりで薄汚れているが、整った顔立ちにキラキラした瞳と白く輝く歯が圧倒的な美少女感を醸し出す。見事に八の字になった困り眉で、母が死んで身寄りが亡くなったので、母の話を頼りに井伊の亀之丞を訪ねてきた――と直虎に事情を説明するも、南渓(小林薫)や祐椿尼(財前直見)に「娘がいたとは聞いたことがない」と否定されてしまう。すると、食い下がることもなく「おらぁの聞き間違えだったのかもしんねぇない。ありがとうごぜえました」とあっさり帰ろうとする。けなげすぎて、これでは直虎が引き留めるのも無理はない。
視聴者からも「高瀬役の高橋ひかるちゃんかわいい。演技も悪くないし、伸びそう」「原石を見た。これから推すぞ」「ひかるちゃんを一目見て、もし出番が多いのなら毎週観たいと思った」「まだ15歳とか信じられない」「同い年とかつらい」など、「全日本国民的美少女コンテスト」グランプリ受賞者でもある高橋のビジュアルや存在感、演技などをたたえる声が多く上がった。
正式に井伊の家に迎えられた高瀬は、家臣たちに「私のような者をお認めいただきありがとうごぜえます。この上は井伊のお家のために尽くしてまいりやすに、皆さまよろしうお導きくださいませ」とあいさつ。かわいい上に性格もいいという最強の娘である。ただ、父親のない農民の家庭で育ったにしては、言うことが立派すぎるのではないかという疑いがないわけでもない。この後高瀬は、諸国の情報を集めて領主たちに知らせる情報屋のような役割を果たしている山伏・常慶(和田正人)の姿を見て意味ありげな表情を浮かべるシーンもあった。
直親はさわやか系クズだった
視聴者の間でも、どこか怪しさが垣間見える高瀬について「間者ではないのか」「史実でも直親に高瀬という娘がいるのだから、間者であるはずがない」と意見が真っ二つに割れた。「高瀬は笑顔がほんとに直親そっくりで、すがすがしい物言いもよく似ている」「人の懐に入るのが上手そうな雰囲気は直親の娘に見える」と、キャスティング的に直親の娘に違いないと想像する人もいるが、なかには「直親の娘であり間者でもあるという可能性もあるのでは」との意見もあるなど、突然の美少女登場に視聴者もかき回された格好だ。1回の放送でこれだけ強い印象を残したキャラクターであるだけに、今後どんな出番が高瀬に用意されているのかは大いに気になるところだ。
今回はこのほか、直親がさわやか系クズだったと知った直虎としのが、彼の悪口で盛り上がるシーンにも注目が集まった。歯の浮くような台詞をさらりと言ってのける直親の生前のシーンが、2人の悪口で一転して笑えるシーンに変わるというおもしろ演出に大笑いした人も多かったのではないか。一方で、虎松(寺田心/菅田将暉)が後に名乗る「直政」の由来を「直親と政次(高橋一生)から一字ずつ取って直虎が名付けた」と想像していた一部の視聴者からは「今後の展開がわからなくなった」との声もある。今作は史実で明らかになっていない部分が多いため、誰が死ぬかくらいは予想がついても、詳細な成り行きが予想できないおもしろさがある。作品のスケール感として、大河ドラマとしては物足りない部分があるかもしれないが、ドラマとしてはかなり評価できる作品だと思う。盗賊団の頭を演じる柳楽優弥が大暴れする、史実にはない来週からの完全創作ストーリーにも期待が集まる。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)