柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第26回が2日に放送され、平均視聴率は前回から0.1ポイント増の12.4%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。今回は東京都議選開票の影響で通常より15分遅れてのスタートとなり、大河の裏でも各局の開票速報番組が放送されたが、視聴率に目立った影響はなかったようだ。ただ、これで5週連続の12%台。このドラマを熱心に視聴し続けるファンは、この程度の水準で固定化されてしまったと見ることもできる。
今回は、龍雲丸(柳楽優弥)一党が本拠地としている商人の町・気賀が舞台となった。今川氏真(尾上松也)は、気賀の町が武田への「塩止め」の禁を破って利益を手にする商人たちの巣窟になっていると知り、気賀に城を築いて今川傘下の国衆である大沢(嶋田久作)に治めさせようと考える。直虎(柴咲)は賛成派と反対派に二分されていた気賀の商人たちの双方から話を聞き、築城を受け入れる代わりにこれまで通りの自由な商いを守れるように願い出れば良い、と彼らを説得。直虎から事の顛末を聞いた瀬戸方久(ムロツヨシ)は、大沢ではなく井伊がその城に入れば良いのではないかと提案した――という展開だった。
「ピンチの後にチャンスあり、チャンスの後にピンチあり」をきっちりと描いた脚本であり、次週以降に起こる動乱の導入編としては良かったと思う。だが、城を守るために父親が討ち死にしたというエピソードを持ち出して、『城があるから戦が起こって人が死ぬ』という理屈を展開した龍雲丸には大いに違和感が残った。現代で言えば「基地があるから攻められる」「自衛隊があるから戦争が起きる」というおなじみの論理である。ドラマレビューで政治思想を語るつもりはないが、戦国の世でそんなことを言い立てる人物はさすがにおかしい。城がなくても戦は起こるし、城がなければあっという間に攻められて死ぬだけである。
作中でも直虎が「城さえなければ助かるという話ではあるまい」と龍雲丸を諭すが、彼は「できもしねえこと言ってんじゃねえわ」といちゃもんを付けて耳を傾けずに去っていってしまう。これには視聴者からも「龍雲丸のキャラ変わってないか?」「鋭いこと言っているようで、内実は駄々をこねているだけの子供」「もうちょっと頭の切れるキャラかと思っていた」など疑問の声が相次いだ。中盤以降のキーパーソンになるかと思わせておいて、意外に考えの浅い子供じみた人物だったというオチでは少々残念過ぎる。直虎にありきたりな平和思想を語らせず、「戦が起こるかどうかは城のあるなしでなく城主の采配次第」と言わせたくだりは良かっただけに、登場人物の中で龍雲丸だけが妙に浮いていたことは否めない。