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電力小売り自由化、一瞬でブーム終了か…破綻・撤退相次ぐ、「結局は東電」の様相

文=小川裕夫/フリーランスライター
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電力小売り自由化、一瞬でブーム終了か…破綻・撤退相次ぐ、「結局は東電」の様相の画像1東京電力ホールディングス・川村隆会長(ロイター/アフロ)

 2016年4月、これまで一部の電力会社に地域独占されていた電力の小売りが自由化されたことで、消費者は電力会社を選んで自由に契約することが可能になった。これらは一般的に電力の自由化と呼ばれるが、もともと電力自由化は1990年代から議論されていた。

 2000年、経済産業省は大規模工場や百貨店、オフィスビルなどを対象にした2000kW以上の特別高圧をいち早く自由化。04年には500kWの高圧も自由化されて、中小規模工場やオフィスにも電力の契約先を選択する自由が与えられた。翌年には、さらに基準を大幅に引き下げ、自由化の領域を50kW以上までに緩和している。

 こうした電力自由化にいち早く反応したのが、東京都世田谷区だ。

「世田谷区では10年から区庁舎・小学校・体育館、公民館など181カ所もある公共施設の電力供給先を新電力へと切り替えました。それまで年間の電気代は約11億円でしたが、新電力に切り替えたことで電気代を9億円に削減を達成したのです」(世田谷区職員)

 世田谷区は新電力をうまく使った成功例といえる。「ほかの地方自治体でも『世田谷区に続け』とばかりに、新電力の切り替えが検討されましたが、いつの間にか話は出なくなった」と、地方自治体関係者は話す。

 世田谷区の成功事例があるとはいえ、新電力への切り替えは心理的なハードルが強い。新電力への切り替えに二の足を踏むのは地方自治体ばかりではない。民間事業者も同じだ。50kWまで制限を緩和したとはいえ、特別高圧や高圧の電力を供給するには大規模な発電所を必要とする。そうした設備を整えるには、莫大な投資を要する。

 大規模発電施設を保有しているのは既存の電力会社しかない。また、絶対に工場や営業所の稼働を止めることができない大規模工場やオフィスにしてみれば、停電リスクは絶対に避けたい。大規模工場・オフィスが実績の乏しい新電力から電気を調達することに不安を感じてしまうのも無理はない。

 そうした事情から、特別高圧・高圧の電力が自由化されても、電力ビジネスに新規参入する企業は思ったほど現れず、新電力に切り替えようと考える民間企業も多くなかった。

電力戦国時代の幕開け

 ところが家庭用や個人商店といった参入しやすい低圧領域が自由化されると、電力事業に参入する企業が続々と現れる。その数は約400社にものぼった。

 それら新電力に参入した事業者を大別すると、東京ガスを筆頭とするガス系、JXTGエネルギーといった石油元売り系、東急パワーサプライなどの鉄道系、KDDIなどの通信系、地方自治体が出資する第3セクター系など多岐に及んでいる。電力の完全自由化を受けて、テレビや新聞は“お得になるプランを比較する特集”などを積極的に組み、大々的に電力自由化を後押しした。まさに、2016年は電力戦国時代の幕開けだった。

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