田辺三菱製薬は、パーキンソン病の治療薬を開発するイスラエルの医薬品ベンチャー、ニューロダームを11億ドル(約1241億円)で買収する。10月末までに全株式を取得し、完全子会社として連結決算に組み入れる。取得価格は17.5%のプレミアムを上乗せし、1株39ドルとする。
ニューロダームは2003年の設立。開発中のパーキンソン病治療薬は、皮下注射や皮膚に貼り付けるパッチ製剤によって、飲み薬では難しい安定した濃度で投与が可能になるという。
パーキンソン病は進行性の難病で、慢性的な足の震えや動作が緩慢となるなどの症状が出る。患者数は米国で100万人以上、全世界で1000万人を超えるとされる。症状を抑える薬はあるが、根本的な治療薬はない。
パーキンソン病治療薬の市場規模は米国、欧州ともに各1000億円ほど。ニューロダームは19年度に欧州と米国で新薬を発売、初年度に400億円の売り上げを見込む。
田辺三菱製薬は今年8月、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の進行を遅らせる治療薬の販売を米国で始めた。ニューロダームの新薬と合わせて21年3月期に米国の売上高を800億円に伸ばす目標を掲げている。
田辺三菱製薬の17年4~6月期の連結決算(国際会計基準)の売上高に当たる売上収益は前年同期比2%増の1077億円、営業利益は24%減の219億円、純利益は23%減の169億円と増収・減益となった。主力の関節リウマチ治療剤シンポニー、糖尿病薬テネリアとカナグルの売り上げは伸びた。
海外事業は、これまで製薬大手に製造販売権を供与し、ロイヤリティ収入を得ることに主眼を置いてきた。4~6月期のロイヤリティ収入は3%増の204億円だった。米国で販売を予定するALSの治療薬の販売準備費用や、糖尿病などの研究開発費の増加が響いて減益となった。
18年3月期の売上収益は4%増の4410億円、純利益は0.3%増の715億円を見込んでいる。
ニューロダームの買収が決算に寄与するのは21年3月期からで、それまでは開発負担が重くのしかかる。
日本の製薬会社は買収のターゲットにされている
国内の製薬会社は規模で欧米のメガファーマに大きく劣る。大型再編で米ファイザーやスイス・ノバルティスの売上高は5兆円を超える。国内首位の武田薬品工業でも、世界では10位以下だ。
国内各社は規模を追うより、有力な大型新薬の候補(パイプライン)を手に入れる動きが目立つ。武田薬品は今年2月、白血病治療薬などを持つ米アリアド・ファーマシューティカルズを6100億円で買収した。
2位のアステラス製薬、3位の第一三共もM&A(合併・買収)に力を入れる。国内7位の田辺三菱製薬は海外展開で出遅れていたが、やっと海外でのM&Aに踏み出した。
だが、実は日本の製薬会社は、買収する側ではなく買収される側だ。巨大製薬会社、英アストラゼネカが第一三共に対して買収の提案をしていたとのニュースが流れた。成立すれば買収額が1兆円規模に達する超大型M&Aだった。世界的な製薬再編の波がとうとう日本にも押し寄せてきた。
武田薬品をはじめ日本の製薬会社は、メガファーマと呼ばれる世界の大手のM&Aのターゲットにされている。
(文=編集部)