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『西郷どん』大河らしくないノリで視聴率上昇…史実こだわらずドラマの面白さ追求が好感

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第9回が4日に放送され、平均視聴率は前回より0.6ポイント増の14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。初回で15.4%を記録して以来、14~15%台で堅調に推移している。

 島津斉彬(渡辺謙)とともに江戸に上った西郷吉之助(鈴木)。すでに江戸藩邸で暮らしていた仲間たちは、祝いに飯を食いに行くと称して彼を品川宿の宿屋に連れて行く。だがそこは、建前上は客の給仕をしながら売春にも応じる「飯盛女」のいる宿だった。

 それに気付いた吉之助は「だましたとな!」と激高。地元の仲間たちや家族が必死にかき集めてくれたお金で江戸に来たのは殿に仕えるためであって、女に酒を注いでもらうためではないと断固拒否する。

 正論ではあるが、相変わらず頭が堅い。現代に例えていうならば、サラリーマンが栄転先で歓迎会と称してキャバクラに連れて行かれ、「こんなことをするためにここに来たのではない」と言い張るようなものだろうか。

 言っていることはわかるが、「ずいぶんめんどくさいやつだな」と思われること間違いなしである。一度そういう店に行ったからといって、志がどうにかなるものでもあるまい。つまり、吉之助は「めんどくさい奴」なのである。

 思い返せば、相撲対決で対戦相手の負傷箇所を責めろと助言された時も「卑怯なことはしたくない」と言い張って拒否した。こうしたエピソードを何度も描くことで、視聴者に吉之助を「実直でまっすぐな人間である半面、頭が堅くて融通が利かない人物」と印象付けようという意図が感じられる。こうした人物描写が、後々の吉之助の行動の伏線として効いてくることを期待したい。

 この後、吉之助は、貧しさゆえに売られた農民の娘・ふき(高梨臨)と偶然にも再会する。ふきは流れ流れて品川宿の飯盛女に身をやつしていたが、「何も苦労とは思っていない」と明るく笑い、身請けしてくれるかもしれない客に出会ったと吉之助に打ち明ける。

 借金のカタに売られていくふきを助けられなかった若き日の吉之助のエピソードはなかなか切なかったが、再会したふきが明るくニコニコ振る舞っていたのは救いである。高梨自身も飯盛女役から大化けしそうで、今後の活躍が楽しみだ。

 この後、ふきの上客として登場したのが「ヒー様」こと一橋慶喜(松田翔太)。さらさらと似顔絵を描いて飯盛女たちにキャーキャー言われているという“食えない”人物だ。趣味人として暮らした明治維新以降の慶喜をほうふつとさせる人物描写がおもしろい。粋な町人風の松田の演技とドタバタした演出とが相まって、この場面だけ同じNHKの『BS時代劇』のようなノリになっていたのには笑った。

 例年だと、こうしたノリは「大河ドラマはかくあるべき」と額に青筋を立てた視聴者に批判されがちだが、今回はSNSなどでの反応を見ても、それほど悪くない。それどころか、おおむね好感を持たれている様子だ。脚本を担当する中園ミホ氏が歴史に詳しくなく、史実へのこだわりがないことが純粋にドラマとしてのおもしろさを追求するように作用し、良い結果となっているのかもしれない。吉之助が江戸に出たとたんに次々と新たな人々に出会い、新たな役目を授けられるなど、世界がぐんと広がったという全体の構成も良かった。この調子を継続できれば、視聴率はさらに上向いてきそうだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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