同記事によれば、経営再建中のシャープは、テレビや半導体などの分野でライバル関係にあった韓国サムスン電子の出資を受け入れ、シャープが3月に実施予定の第三者割当増資をサムスンが引き受け、約100億円を出資し、出資比率が約3%となる見通しだという。サムスン電子を含むサムスングループはシャープの、金融機関を除く事業会社では最も上位の株主(第5位)となる。
シャープは、米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone 5」の伸び悩みを受け、同製品用パネルの生産量を当初計画より減らしたこともあり、主力の亀山工場(三重県亀山市)の稼働率は5割以下に低迷し、減損処理など業績への悪影響も懸念されていた。シャープは、同工場などで生産する薄型テレビ用の32インチパネルの一部をサムスンへ供給してきた。サムスンからの出資受け入れで財務を改善するとともに、サムスン向けのパネル供給を拡大することで、工場稼働率を改善し、連結売上高の3割を占める液晶パネル事業の営業黒字化を目指す模様。
一方、サムスンは価格下落が続く液晶パネルを、工場建設などの新規投資を抑えながら、シャープから安定調達できる。安値攻勢を強める中国や台湾のメーカーに対抗するため、両社は液晶パネル以外にも協力分野を広げることを検討していくという。
米調査会社・IDCによると、サムスンのスマホの世界シェアは昨年10~12月期で29%で、アップルの21%を上回る。薄型テレビでも、サムスンの世界シェアは28%で世界トップ。シャープは、連結売上高が約17兆円に達するサムスンと組むことで、業績改善を図る。
経営再建中のシャープは、昨年3月、鴻海から9.9%の出資を受けることで合意し、「アップルー鴻海(ホンハイ)精密工業連合」との提携を、再建の柱としてきた。今回のアップルのライバルであるサムスンとの協業が、アップルとの取引へ悪影響を及ぼす可能性も考えられる。アップルが製品情報の流出などを警戒すれば、取引の拡大は望めない。シャープの再建は、世界のスマホ市場の2強である、アップルとサムスン両社との協業が成立するかが、大きく左右する。
加えて、昨年9月、シャープは海外工場売却や国内外で1万人の従業員削減を柱とした経営再建策を、主力取引銀行であるみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行に提示し、総額3600億円の協調融資契約を結んでいた。しかし、協調融資の期限は今年6月までであり、9月には約2000億円の新株予約権付社債の償還を迎える。資金繰り面でも、依然として懸念材料を抱える。
(文=編集部)