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ブラック企業の代名詞(?)光通信、なぜ社員から評判良い? 実力主義、高待遇…

文=新田 龍
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ブラック企業の代名詞(?)光通信、なぜ社員から評判良い? 実力主義、高待遇…の画像1『ITバブルの内幕 光通信の天国と地獄』
(道出版/氏家和正)
 世の中には「ブラック企業ランキング」「不人気企業ランキング」といったものが存在する。しかし、ブラック企業アナリストの新田龍氏によれば、「ブラック企業」に該当しない企業が含まれていることがあるという。内情は優良企業でさえあるのだが、その企業が属する業界や、一部の個別企業によるダーティなイメージが投影されている可能性があるためだ。新田氏がそのような企業を取り上げ、「何がブラック企業イメージの原因か」「実際はどうなのか」について、多角的に分析していく。

 まずは、次の企業データからご覧いただきたい。

・資本金:542億5900万円
・売上高:4,990億円(2012年3月末実績)
・従業員数:約8,570名(グループ計/2012年3月末)
・株式:東京証券取引所第一部上場
・事業所:直販事業所 350拠点、コールセンター(中国含む) 49拠点、ショップ数 2,490店舗、地域販社及び合弁会社 約100社

 売上高が同規模の東証一部上場企業といえば、ローソン(4,790億円)、キユーピー(4,860億円)、小田急電鉄(5,080億円)などがある。規模的には堂々の大企業だ。

 ちなみにこの会社では、新卒学生を対象に「幹部候補生」を募集している。そちらの採用条件や募集要項を見てみると、ますます大企業の貫禄がうかがえる。

・幹部候補採用:年俸420万円〜560万円
 ※内定後のプログラムの評価により、入社時に決定致します。
・昇給:年4回
 ※実力主義なので年齢や経験に関わらず、能力や結果で評価します。東証一部の大手企業ですが、入社2年目の係長、入社3年目の課長も誕生します。
・諸手当:住宅手当、残業手当、資格取得手当、通勤交通費(当社規定による)、持株奨励金
・福利厚生:入社支度金(入社初月に50万円支給)、ストックオプション制度、資格取得支援制度、独立支援制度、FA制度、社会保険完備、社員持株会、従業員会、慶弔金制度、出産手当金制度、出産後復職助成金制度
・勤務時間:9:00〜17:30
 ※それぞれのワークスタイルにより様々ですが、 平均の退勤時刻は、19:00〜20:00の間が目安です。

【先輩の出身校】

●2013年度 採用実績校(入社予定)
慶應義塾大学・埼玉大学・首都大学東京・中央大学・東京工業大学・東京工業大学大学院・東京大学・東京大学大学院・東京理科大学・東京理科大学大学院・一橋大学・明治大学・横浜国立大学・早稲田大学

●2012年度 採用実績校
大阪大学・大阪府立大学大学院・慶應義塾大学・高知大学・上智大学・中央大学・東京大学・東京理科大学大学院・同志社大学・法政大学・明治大学・立教大学・早稲田大学・早稲田大学大学院

 さて、この“一見”一流企業はどこだろうか?

 光通信である。

 ブラック企業ランキングでは長らく上位を不動のものとし、ブラック企業の代名詞ともいえる存在だ。一般的な印象としては、「何をしている会社かはよく知らないが、ブラックであることは知っている」という感覚ではなかろうか。

 後述するが、同社は2000年に起こした事件によって、一時期表舞台から姿を消した。確かにその頃の同社の所業はブラックだった。ただ今回は同社の「現在の労働環境」についてフィーチャーしたい。当時の同社を知っている人にとっては、今の同社がだいぶ違う会社になったと思われるかもしれない。

ITバブル崩壊の立役者?

 まず2000年前後の光通信のイメージは、「携帯電話とYahoo! BBのブロードバンド回線を売る営業会社」というところだろうか。現在もその事業は継続しているが、ほかにも事業の柱が加わっている。簡単に説明しよう。

・携帯電話販売事業(店舗数2490店で国内最大規模)
・法人事業(OA機器、通信回線、携帯電話などオフィスインフラの販売。OA機器分野での売上は国内トップクラス)
・メディア広告事業(「e-まちタウン」をはじめとするポータルサイト運営とモバイル広告)
・保険事業(医療保険を中心とした保険商品を、コールセンターを通して販売)

 光通信は携帯電話やPHSの爆発的普及期に、携帯電話販売代理店「HIT SHOP」を全国展開していた。「携帯電話を無料で配って契約させ、キャリアから報奨金を得る」というモデルで売上を伸ばし、ITバブルで同社の株価は高騰した。しかし2000年3月、大量に獲得した契約は架空のもの(寝かせ)であったことが発覚し、株価は急落。同社が投資していたITベンチャー企業はもとより、同社とは無関係な他のIT系企業も軒並み株価が大幅安となり、「ITバブル崩壊の立役者」とさえ言われる始末となった。

 その後は何度か倒産疑惑が持ち上がったが、創業当時の事業であるOA機器販売に回帰して経営危機を脱した。02年からは医療保険の販売に乗り出し、04年に再度黒字化して以降は、また携帯電話販売網を拡大しているところだ。同社の強みはまさにプッシュ型の営業そのものにあり、強みが生かせる分野を伸ばして再起した格好である。

 私自身、身近に同社出身者が複数いる。いずれも厳しい時代にマネージャークラスとして生き抜いてきた人たちであり、当時の経験を生かして現社でも経営者や管理職として活躍している。当時を振り返り、皆「厳しかった」とは言うものの、なんら不満らしきことは漏らしていない。

社員からの意外な高評価

 では、現在20代の若手社員は、同社の労働環境をどのように感じているのだろうか。さすがにこれだけブラックと騒がれているだけあり、厳しさについては覚悟をもって入社している人が多い印象であった。具体的には次の通りだ。

「やればやった分、給料に反映される。サブマネージャーになれば月収100万も可能。一方で達成できなければずっと一般社員のままで、年収も300万円程度。この会社は良くも悪くも自分次第であり、自分の価値がよくわかる」

「完全実力主義のため、成果を上げれば新入社員でも3カ月で昇格できる。場合によっては20代で事業部長になることも可能。女性管理職も多い。サブマネージャーにはノルマを達成すれば昇格できるが、マネージャーへの昇格には資質も判断される」

「数字がすべての会社。数字を達成し続けるだけで、尊敬され部下も与えられる。法人間や役職を飛び越えた交流も盛んなため、至る所に出世のチャンスがある。非常に勉強になる組織だと思う」

「成績が上がれば上がるほど、できる仕事の幅が増える。その分責任も大きく、成功すれば評価は高まるし、さらにできる仕事の範囲は増える。逆に失敗すれば評価が下がる。本当の実力主義」

「部署異動が比較的自由で、子会社もたくさんあるので、社内でのキャリアパスは豊富。主体性があり、20代のうちからさまざまな経験を積みたいと考えている人にとっては良い環境であると思う」

 皆「ウチの会社はこんなもの」と、意外と冷静に見ているようだ。まさに文字通り、数字がすべての実力主義の会社である。承知の上で入った、腕に自信のある人にとってはフェアな評価で居心地がよいということだろう。

 一方で、腹がくくれていない人や、腕に自信のない人にとっては厳しい環境であることも事実だ。

「体育会系の部活みたいな雰囲気。仕事のつらさは、かなりキツイ部類に入る。営業では必ず即受注をしなければいけない、受注できなければ帰れない、電話越しに激詰めされるなど、だんだんと営業にいくのが怖くなることもあった」

 もちろんこうした批判的な意見も多数あるが、それを紹介するのは別の機会に譲ろう。

実は、働きやすい会社?

 割合多かったのが、年功によらない、完全実力主義であるがゆえの「フラットな組織」への評価であった。

「結果のみで判断されるため、非常にフラットで気楽。人情にも厚く、不調の際も必ず誰かがフォローしてくれる」

「出産や育児を経ても、働ける組織。2歳まで育児休業を延長できるし、短時間勤務制度もある。ただ、営業は勤務時間と成果が少なからず比例する部分もあると思うので、短時間勤務だと“成果”という部分で、『今までと同じように』というのは難しいかもしれない。産前産後休暇、育児・介護休業を取得したからといって、左遷されるとか、昇進が断たれるということはない」

「女性の責任者は他の会社に比べると多いほうだと思うし、女性だからとか男性だからとか、性別で何か評価が分かれるということは一切なかった。性別関係なく成果で評価される。『雑用は女性の仕事』的な風潮もまったくなく、自分のことは自分でやるという感じ」

 同社での経験が糧であったと実感できるのは、他社に転職する際であろう。恐らく、同社在籍時よりもプレッシャーを感じる職場というのは、そうそうないはずだ。また、「営業として成果を上げる」という基本的なマインドが叩き込まれているので、営業職としての評価は高い。実際、別の会社に営業職として移っていった人は、このように述べていた。

光通信にいたことを評価してもらえたとき、あの会社でよかったと思えました。自分では立てないような高い目標を、半ば強制的に負わされる経験を経て、自らより高い目標を目指して実績をつくっていくという主体性が芽生えました。(筆者補足:同社に勤務したとしても)最初の壁で挫折してしまう人がほとんどだと思いますが、その経験も外部からしたらかなり貴重なものなので、短期で離職した方も、その経験を前向きに捉えられるといいですね」
(文=新田 龍/ブラック企業アナリスト、ヴィベアータ代表取締役)

【今号のフォロー企業】 光通信
ハードワーク度 ★★★★★  成果を適正に評価される度 ☆☆☆☆☆
(☆=優良度 ★=ブラック度 5段階評価中)

※本稿は、新田龍氏のメルマガ「ブログには書けない、大企業のブラックな実態」から抜粋したコンテンツです。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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