例えば「ドトールコーヒーショップ」や「洋麺屋五右衛門」を展開しているドトール・日レスホールディングス。同社が展開している「星乃珈琲店」が順調に拡大している。「ドトール」は持ち帰りや短時間喫茶が主な対象顧客だが、「星乃珈琲店」はゆったりしたスペースで落ち着いた空間に特色がある。一杯ずつ淹れるハンドドリップコーヒーはスペシャリストが選んだ豆を使用するなどしてこだわり、単価はドトールの約2倍の400円程度。また、ふわふわのスフレパンケーキや、焼きカレー、ドリアなど軽食も提供している。
「星乃珈琲店は2012年2月期に7店舗の出店でスタートし、翌期には41店舗に拡大、今上期には56店舗体制となっている。今期は30店の新規出店、来期も30~50店の新規出店となる見通し。セブン-イレブンなどコンビニエンスストアのコーヒーの躍進で持ち帰りや短時間滞在狙いは逆風が吹いている半面、シニア層を中心に価格が高くてもゆっくり時間を過ごせる星乃珈琲店タイプへのニーズが高まっている。
同じようなタイプの喫茶店チェーンとしては、愛知県名古屋市が地盤のコメダが展開する「コメダ珈琲店」も、近年では関東地方にも出店するなどして、広い地域で顧客を増やしている。モーニングサービスなどに特徴があり、駐車場を設置する大規模店舗が多い。こちらも、ゆったりとした座席空間に、従業員が料理などを提供するフルサービスがウリだ。
●厳しい経営環境から攻めに一転
一方、ファミレスでは「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングス(HD)が13年に、6年ぶりに新規出店を再開。14年は4店舗前後を出店すると見られる。「ガスト」を展開するすかいらーくは、「ガスト」など14年に前年比2倍の30店を出店すると伝えられている。
ファミレスは長引くデフレによる顧客離れや、ハンバーガーチェーンやコンビニなどとの競争激化で収益環境が厳しい時期が続いていた。この間、店舗閉鎖や人員削減などリストラを徹底した結果、損益分岐点が下がり、ようやく底入れ感が出てきたところに、アベノミクス効果で13年は消費者の財布の紐が緩むという追い風を受けた。
すかいらーくは収益が着実に回復してきたことを受け、東京証券取引所に上場を申請し、今年9月にも上場となる見込み。同社はかつて上場企業だったが、06年、MBO(経営陣が参加する買収)で上場を廃止し経営改革を進めてきた。上場が実現すれば約8年ぶりの再上場となる。
「コメダ珈琲店」の一号店が開店したのは1968年、すかいらーくがファミレス1号店を開店したのは70年だ。ちょうど団塊世代が企業の若手社員だった頃だ。ほかのファミレスもほぼ同時期に出店を開始しており、この層にはなじみが深いことがわかる。ロイヤルHDは2011年12月期にリストラなどで31億円の赤字(最終損益)を計上したが、翌年に黒字転換。13年12月期は16億円程度を稼いだと見られている。
ただ、高齢化の一段の進展や人口減で業界を取り巻く環境が厳しいことに変わりはない。魅力的な商品の開発や、付加価値の高いサービスの提供など、継続的な努力をできるかどうかが今後の展開を分けることになりそうだ。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)