–現在の御社の業績について教えてください。
大関綾氏(以下、大関) 最初はかなり赤字でした。やはり、ものづくりというのは開発に莫大な費用がかかります。弊社でも商品を開発するために累積で数千万円かかっています。本格的に営業活動や販売を始めたのは、2013年に入ってからなので、今までにかかった費用を取り返していく段階にあり、安定した状況ではありません。紳士服のAOKIさんをはじめ、各百貨店などにも置かせてもらえるようになり、ネットでも販売しています。
–起業するに当たって、ネクタイ業界を選んだのはなぜですか?
大関 2005年にクールビズが始まった当初、中学生だった私が感じたことがきっかけになっています。ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外すようになり、ネクタイ業界は打撃を受け、半数近くがつぶれました。残っている企業も、大半は今も苦労しています。しかし、クールビズでネクタイを外したからこそ、そこに代わる物を着けることができるのではないか、という印象をその当時から持っていました。
「夏は暑くて、首元を開放したい、ネクタイは苦しい」。高校時代、私もネクタイを締めていたので、そんな思いはよく理解できますが、ネクタイは現在、年間3000万本流通しています。うまくクールビズ向けのネックウェアを定着させることができれば、同規模の市場を生み出せるのではないかと考えて、この業界で起業しました。
●手軽な起業ではなく、あえて困難なものづくりを選んだ理由
–なぜ「ものづくり」を選んだのですか?
大関 中学生の頃から、起業しようと考えていたのですが、最初はITをやろうとしていました。しかし、ITの分野はかなり競争が激しいので、生き残るのは難しいと感じました。また、もともと私がものづくりが好きだったことや、失われゆく伝統技術、メイドインジャパンというブランドを守っていくのは、若い世代の使命なのではないかと考えて、ものづくりで起業することにしました。その上で、何をつくるかを検討した結果、先ほど述べたように、まずネックウェアに可能性を感じたので、商品開発に取り組みました。
–夏場は誰しも首元を開けて熱を放出したいと思うものなので、多くの人々はネックウェアを着けたくないのではないでしょうか?
大関 暑さ対策は十分に考慮しています。シャツの第一ボタンを開けて着けられるように商品を開発しました。首回り部分はゴムやチェーンにして、前に来る部分はY字に切っているので、のど元に布がこないようにしています。普通のネクタイは緩めるとだらしなくなりがちですが、そうならないように改良しました。
ちなみに、三角の部分は革でできていて、職人によるハンドメイドです。薄利多売にせず、ブランドイメージを大切にするため、品質に重きを置いて手作業でよい材質のものを使い、製作しています。