8月6日に出揃ったビール大手4社の2014年6月中間連結決算によると、キリンは売上高が前期比3.6%減の1兆563億円、営業利益が同16.8%減の503億円、最終利益が同76.5%減の140億円だった。一方、サントリーは売上高が同18.0%増の1兆1089億円、営業利益が32.2%増の644億円、最終利益が41.8%減の172億円だった。売上高、営業利益、最終利益のいずれもサントリーがキリンを上回ったのだ。14年通期でも、この位置関係は変わらないと見込まれている。
それだけではない。キリンは大手4社で唯一の減収・営業減益の独り負けだった。主力のビール事業不振が原因だ。
キリンの三宅占二社長は、中間決算発表の席上で「ビールの売り上げが落ちたのは大問題。下期は販促策の強化で劣勢を挽回する。それにしても第1四半期は業績が良かったのに」と釈明をした。確かに第1四半期の業績は好調だった。消費税増税前の駆け込み需要を取り込み、ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)販売数量は39万7000キロリットルで、前期比6.2%の増加。だが、この傾向は他社も同じ。キリンの独り負けは戦略ミスから生まれたとみられる。
●販促戦略で誤算
増税後、支出を一層引き締めた消費者に対し、競合他社が次々と新商品投入やさまざまな販促キャンペーンで需要を促して「増税対策」を必死で展開したのに対し、同社だけはそれらしい増税対策をしなかった。サントリー関係者は「我々が額に汗を浮かべてどぶ板を踏んでいる姿を横目に、キリンの営業担当者は悠然と構えていた」と振り返る。その結果、増税後の競争で後れをとり、今年1-6月の上期全体で見ると販売数量が前期比6.6%の減少になってしまった。
キリンが「悠然と構えていた」のには理由があった。それは6-7月に開催されたサッカー 2014 FIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会だった。電通と共にサッカー日本代表の公式スポンサーになっているキリンは、今年の販促の重点をこのブラジル大会に置いていた。大会が間近に迫った5月からは日本代表応援の気運が盛り上がり、キリンはそれに向けてW杯にちなんだテレビCMを集中的に放送。だが、露出期間は長続きしなかった。日本代表チームは6月25日のコロンビア戦で敗戦し、早々に予選リーグ敗退を喫したからだ。
さらに、日本代表チームが出場する試合に限らず、時差の関係で早朝開始の試合が多かったため、サッカーファンは「仲間とビールを飲んで盛り上がりる」機会も少なかった。かくしてキリンの販促シナリオは不発に終わった。