消費増税前の駆け込み需要の影響が出た2月の新車販売台数を見ても、ベスト10の中に軽自動車は実に7台がランクイン。登録車(軽自動車の規格を超える自動車)の3台はいずれもハイブリッド車で、軽自動車とハイブリッド車の人気の高さがうかがえる。
好調な軽自動車の中で現在最も人気が高く、販売台数の約4割を占めているのがスーパーハイトワゴンと呼ばれるカテゴリーだ。規格に制約のある軽自動車で、その規格いっぱいのボディサイズで広々とした室内空間を実現。コンパクトなサイズによる取り回しのよさと、見た目からは想像のできない室内空間の広さで子育てママから絶大な人気を獲得した。
●積極的に選ばれるようになった軽自動車
これまで軽自動車というと、新車価格と税金などの維持費の安さを求めて購入する人が多く、登録車だとお金がかかるから「軽自動車でいいや」という、ややネガティブな選択のイメージがあった。しかしスーパーハイトワゴンの価格レンジは100~180万円と登録車並みで、軽自動車としては高額な価格帯に位置する。つまり登録車ではなく、高額な軽自動車が人気ということは、「軽自動車がいい」と積極的に選ばれていると考えられる。
小さな軽自動車でも、広く使い勝手の優れた室内空間、そして安全性が凝縮されている高い実力を持つからこそ、従来、コンパクトカーからミニバンまで利用していた幅広いユーザーが、ダウンサイズして購入する対象ともなっているのだ。
●先行するタント、売り上げNo.1のN-BOX
このように人気高騰中の軽スーパーハイトワゴンのカテゴリーに、やや乗り遅れた感のあった三菱自動車と日産自動車が、それぞれeKスペースとデイズルークスを発売し、先行する本田技研工業(ホンダ)のN-BOX、ダイハツ工業(ダイハツ)のタント、スズキのスペーシアを追い上げる体制となった。そこで、予算150万円ほどで購入できる軽スーパーハイトワゴン各車の魅力に迫ってみる。
軽スーパーハイトワゴンのパイオニア的存在がダイハツのタントで、すでに第3世代まで進化している。タントのポイントは、助手席側に採用したミラクルオープンドア。助手席ドアとスライドドアの間に柱がなく開口幅は1490mmを誇り、大きな荷物が積みやすく、子供をチャイルドシートに楽々座らせることができる。
ホンダのN-BOXは13年の販売台数が23万4994台で、軽自動車販売台数1位に輝いたヒットモデル。コンパクトカー・フィット譲りのプラットフォームを採用し、従来の軽自動車、今回の比較車両よりも足元が広く、登録車を凌駕する充実した安全装備、誰にでも似合うプレーンなデザインが人気の秘訣だ。
軽スーパーハイトワゴンで最も燃費性能が高いのが、スズキのスペーシア。リチウムイオンバッテリーを搭載し、ブレーキ時などに発生する回生エネルギーで充電し、エアコンやオーディオなどに利用してエンジンによる発電量を抑制し燃費に貢献するエネチャージというシステムを採用している。
●室内の快適性にこだわり、追撃体勢のeKスペース
そして、満を持して投入された三菱のeKスペースと日産のデイズルークス。この両モデルは三菱と日産が共同開発しているため基本性能は同じだが、フロントグリルなどのデザインや装備内容・価格の違いで両社が個性を主張している。
今回は、eKスペースを取り挙げて性能を検証してみると、後発モデルらしくライバル車を実によく研究し、まさに良いところ取りのパッケージングが光る。中でも、「家族に33の思いやり機能」をうたい文句に、特にこだわっているのは、室内空間の快適性だ。
軽スーパーハイトワゴンは室内の広さが魅力の一つだが、このカテゴリーの中でeKスペースは最も広い室内空間を確保している。しかも、ただ広いだけではなく、軽スーパーハイトワゴンユーザーの悩みをヒアリングし、しっかりとケアしたつくりとなっている。例えば、フロントシートとリヤシートに分かれて座った親子が触れ合える空間になるよう左右分割式リヤシートに軽自動車最長の260mmのスライド機構を搭載。リヤシートの子どもがぐずった際も、信号待ち時などに、運転席からすぐに手を差し伸べられる。また、室内空間が広いがゆえに、全体を快適な空間にすることが難しかったという軽スーパーハイトワゴンのマイナス面をカバーするために、空気を循環させるリヤサーキュレーターを装備するなど、家族全員が楽しく快適に過ごせる工夫が随所に見られる。
走行性能で見てみると、エンジン出力数値はN-BOXを筆頭にタント、スペーシア、eKスペース/デイズルークスと続くが、実用域では、どの車もストレスを感じさせない走りで、大きな差異はないだろう。
eKスペースは後発である立場を最大限に生かし、ライバル車分析とユーザーの使用実態調査に時間をかけてつくり上げており、走行性能や安全性能などはもちろん、使い勝手の良さや室内空間の快適性など、「家族に33の思いやり」を込めた各機能がライバル各車との違いを生み出している。
(文=萩原文博/フリーライター)
【ご参考:三菱eKスペース】
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/ek_space/special/new_ek_space/