少子高齢化の加速を受け、人口減少と地価下落をテーマにした新書が次々と話題になっている。
「日本は2008年をピークに人口減少に転じ、これから本格的な人口減少社会に突入する。このまま何も手を打たなければ、2010年に1億2806万人であった日本の総人口は、2050年には9708万人となり、今世紀末の2100年には4959万人と、わずか100年足らずで現在の約40%、明治時代の水準まで急減すると推計されている」(『地方消滅』<増田寛也/中公新書>より)
同書では、「20~39歳の女性人口」に注目している。896の自治体(全体の49.8%)では、40年までの間に同人口が大都市に流出し、10年時点の5割以下に減少するとして警鐘を鳴らす。そのような都市を「消滅可能性都市」と呼んでいるが、東京でも子育て環境が悪いために人口減少が止まらない自治体があり、23区では唯一豊島区が「消滅可能性都市」のリストに入ったことから、大きな話題となった。
また、『日本の地価が3分の1になる! 2020年東京オリンピック後の危機』(三浦展・麗澤大学清水千弘研究室/光文社新書)では、「少子化が解決せず生産年齢人口が減り続けたら、どうなるか。おそらく現役世代の社会保障負担が増えすぎ、経済活動が停滞し、GDPは下がり、土地への需要が減り、地価も下落するだろう」として、「現役世代負担率」(生産年齢人口1人に対する老年人口の割合)に注目する。
同書によると「現役世代負担率が上がるほど地価を押し下げる。(略)このまま現役世代負担率が上がり続けた場合、日本全体の地価を2010年から2040年にかけて毎年平均3.18%、30年で62%押し下げる効果をもつ。(略)つまり、100万円の土地が38万円になる。ほぼ3分の1になる」という。東京都内で見ると、地価が高く若者が定着しにくい杉並区、練馬区などの現役世代負担率が高くなるために、地価が下がると予測されている。
ただ、この分析には、外国人投資家の投資需要が検討されていない。また、地価が一定程度安くなれば、杉並区にも若者は定着するのではないかという疑問が出てくる。従って、盲信するべきではないが、人口減少により地価が下落していくのは避けられないだろう。
●不動産業界の「2020年問題」
こうした人口減少は、特に不動産業界にとっては切実な問題だ。実は不動産業界では「20年問題」が深刻にささやかれている。
20年は日本にとって象徴的な年なのだ。まず、東京都の人口は20年1335万人のピークに達し、その後はゆるやかに減少していき、50年には1175万人になると予測されている。日本全体でも、今も高齢単身世帯の増加に伴って増えている総世帯数が20年に5305万世帯でピークに達する(厚生労働省・国立社会保障・人口問題研究所)。