闇バイトの増加が社会問題化するなか、過去にはスポットワークのサービス「タイミー」上で闇バイトの募集とみられる求人が掲載されていたとの報告もみられ、こうしたサービス経由で闇バイトだとは認識せずに応募してしまうリスクも指摘されている。各サービスはどのような対策を行っているのか。また、もしついうっかり闇バイトに申し込みをしてしまったり、個人情報を提供してしまった場合は、どうすればよいのか。
昨年に広域強盗事件の指示役だった特殊詐欺グループの幹部が逮捕された「ルフィ事件」で広く知られるようになった闇バイト。犯罪グループの指示役、リクルーターがSNSなどで強盗の実行犯や詐欺の受け子などを募集して犯罪に加担させるもので、高額な報酬や即日払い、「ホワイトな高額バイト」などを謳っているのが特徴。応募すると個人情報の提出や匿名性の高いメッセージアプリを使ったやりとりを求められることも多い。個人情報を握られるため、闇バイトだと気が付いて辞退すると、危害を与えると脅迫されることもある。
10月に横浜市の住宅で住人の遺体が見つかり現金が奪われた強盗事件では、逮捕された宝田真月容疑者は「途中で犯罪に加担することに気付いたが、家族に危害が加えられるかもしれないと考え断れなかった」と話しているという。同月に所沢市の住宅で発生した強盗傷害事件では、闇バイトで集められた実行犯たちは当日に現場に到着するまで強盗を行うということを知らされていなかったという。
首都圏で闇バイトを実行犯とする強盗事件が相次いでることを受け、10月、1都3県の警察本部は合同捜査本部を設置するなど犯人の逮捕に力を入れているが、現時点で逮捕されているのは実行犯と彼らを勧誘したリクルーターにとどまっており、上位の指示役の逮捕には至っていない。10月29日放送の報道番組『羽鳥慎一 モーニングショー』(テレビ朝日系)が取材したある闇バイトのリクルーターは東南アジアに住んでおり、ひと月あたりの収入は400万~500万円ほどだという。闇バイトに応募してくるのは、ギャンブルなどで闇金や消費者金融などに借金を抱えている若者が多いという。
タイミー「不審を感じたら、すぐに勤務を終了するようにしてください」
利用者が増加しているスポットワークのサービス上にも、闇バイトの募集と思われるものが掲載される可能性はある。たとえば、過去にはタイミー上に「携帯の契約業務」という名目で、携帯ショップに行って契約をするという内容の募集が掲載されていたという報告もみられる。タイミー上に違法性のある求人の募集が掲載されることはあるのか。また、そうしたアルバイト募集の取り締まり・監視について、どのような対策を行っているのか。Business Journal編集部は2度にわたりタイミーのサイト上の報道関係者様向けのお問合せフォームより問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。
スキマバイトアプリ各社の対策はどうなっているのか。最大手で累計登録者数が約900万人に上るタイミーは、違法な内容の募集を未然に防ぎ、掲載されても速やかに削除するための取り組みを強化していると公表している。また、悪質な募集を見かけた場合にはアプリ内の「募集内容を通報」ボタンから通報する仕組みを設けており、サイト上でユーザに対し以下のように呼び掛けている。
「勤務先で『これは闇バイトでは?』と不審を感じたら、すぐに勤務を終了するようにしてください」
「断ることができず勤務をしてしまったら、終了後速やかにお近くの警察署や関連機関に連絡するようにしましょう」
メルカリを運営する「メルカリ ハロ」は、掲載された求人を監視して疑義があるものは取り下げを行うとしている。
転職支援サービス企業社員はいう。
「具体的な勤務場所が分からないようになっていたり、何かを受け取ったり運んだりという非常に簡単な作業内容にもかかわらず報酬が異常に高額であったり、現金払いであったりと、求人の内容をみて『なんか不自然だな』と感じる場合は応募しないということが重要です。ただ、闇バイトのような高額報酬のバイトに申し込む人は、なんらかの理由でお金に困っているため危険だと知りながも申し込むケースも多いので、撲滅はなかなか難しい面があります。このほか、長期滞在での海外リゾートバイトを装うものもあり、海外で半ば監禁状態で働かされることになるため非常に恐ろしいです」
強盗は5年以上20年以下の懲役が科される重い犯罪で、初犯でも実刑の可能性が高い。
「強盗致死も強盗殺人も、刑法上は『無期懲役や死刑』と量刑が決まっています。事情によっては、まれに強盗致死の場合に有期刑となることもありますが、それでも20年以上は刑務所から出られないと考えたほうがいいでしょう」(元東京地方裁判所判事/10月31日付当サイト記事より)
サービス事業者の法的責任
たとえばタイミーは、事業者は初期費用・掲載費用なしで求人を掲載することができ、アカウント開設から求人掲載まで最短7分で行えることをウリにしているため、不適切な求人が掲載されるケースは起こり得る。もし仮にそのような求人が掲載されて犯罪の発生につながった場合、プラットフォーマーである事業者が法的な責任を問われることはあるのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「さすがにタイミーが法的責任を追及される可能性は低いですね。一見して闇バイトの募集が掲載されているかどうかは不明ですし、たとえこれを知ったとして、あえて(故意に)放置して犯罪を助長したという状況ではない限り、『ほう助(犯罪の首謀者を助けて犯行をしやすくすること)』を問われることはありません。タイミーとしては、闇バイト募集の広告を申し込む者(闇バイトを集める者)をすぐに特定できるように、募集者の素性、身分証などをしっかりと把握すべきでしょう」
警察庁は、闇バイトに応募したことがきっかけで本人や家族に危害を加えるなどとと脅迫された際には保護する方針を示しており、応募後であっても警察に相談するよう呼び掛けている。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)