しかし、料理研究家や料理専門メディア、プロの料理人などいわゆる料理業界関係者の間では、「プロやメディアが公開したレシピを、一般人が盗作してあたかも自分で開発したかのように掲載している例があまりに多い」という声も大きい。過去には、クックパッドに掲載されたお菓子レシピをまとめた書籍に、有名菓子メーカーのHPに掲載されたレシピがそのまま載っていたと話題になったこともある。こういった点から「クックパッドは著作権侵害だらけ。それによって収益をあげている運営会社にも問題がある」(料理研究家)という見方すら上がっているのだ。
実際にクックパッド上で『キユーピー3分クッキング』『男子ごはん』などのテレビの料理番組名や、「平野レミ」「コウケンテツ」など人気料理研究家の名前で検索をしてみると、「少しアレンジしてみました」とするものから、「覚え書き」ということでまったく同じレシピを掲載している、明らかに「パクリ」と受け止められるものまで存在する。
クックパッドでは利用規約を定めており、その「第15条 禁止事項」の第1項には「(1) 当社、他の利用者もしくはその他の第三者の著作権、商標権等の知的財産権を侵害する行為、または侵害するおそれのある行為」と書かれている。また、「MYキッチンご利用ガイドライン」というレシピ投稿者向けのガイドラインにおいても「『そのまま紹介したい』場合は、ご本人の許可を得る」と書かれている。
レシピと著作権
こうした状態は、法的に問題があるのであろうか。弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役で弁護士の山岸純氏と、同法人弁護士の榎本啓祐氏は、次のように解説する。
「著作権法で保護される著作物とは、『思想や感情』の創作的な表現とされています。アイデアや新しい発想といったものは、個人の頭の中にある考えである限り表現されたものではないため、保護の対象ではありません。したがって、料理の材料や調理の方法といったレシピ自体も、それが頭の中にある限り、表現には当たりません。『調理の方法自体はアイデアであったとしても、それがレシピとして文字で外部に表されれば表現ではないか』と思われるかもしれません。しかし、仮にレシピが表現されたとしても、レシピの内容はせいぜい『肉○グラム、塩○グラムを混ぜ合わせると』といったレベルであり、誰が書いても似たような内容となるため、『思想や感情』を表現したことになりません。