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“結婚”未来予測~増え続ける生涯未婚率、今年生まれる子どもの半分は結婚を選択しない?

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“結婚”未来予測~増え続ける生涯未婚率、今年生まれる子どもの半分は結婚を選択しない?の画像1筆者提供
 こんにちは。江端智一です。

 今回も、前回記事に引き続き「結婚を計算してみる」をテーマに書かせていただきます。

 そもそも、独身者が既婚者人口を超えて「マジョリティ(多数派)」になる時期を「面白半分」で計算していたのですが、私のパソコンの机上シミュレーションは、青ざめるような絶望的な未来を描き出してしまいました。

 この結果を受け、先日、我が家において娘たちにこのシミュレーションの結果を開示し、「運命の出会い」などというものは、ほとんど期待できない時代に突入してしまったことを懇々と説明しました。

 今回のコラムでは、娘たちに行ったプレゼンテーションの内容を再現します。

[江端の疑問その3] 未婚者人口が既婚者を超える日が来るのか?

 前回のコラムでは、

 ・70年後に日本の人口は現在の半分になる

 ・高齢化社会は、あと40年間悪化を続け、その後も状態は改善されない

という、未来予測の結果を提示しました。

 どうしてこんな計算結果が出てくるのかといえば、やはり合計特殊出生率がわずか「1.4」ということが最も大きな要因です。この値は「2.0」を割れば、人口は減少していくことになります。

 では、なぜ合計特殊出生率はこんなにも低くなってしまったのか。

 皆さんの多くは、「結婚する人が少なくなったからだ」 と思っていませんか?

 ところが、そんなことはないのです。「生涯未婚率」という統計上の用語があります。これは50歳までに一回も結婚を選択しなかった人の比率をいいます。最新のデータで生涯未婚率は、およそ男性が20%、女性が10%です。これを見て、「大変だ!」という人もいるようですが、私はそのデータを見た時「そんなにたくさんの人が結婚しているのか」と、逆に驚いたくらいです。

 ちなみに、男性のほうが女性より生涯未婚率が高いということは、簡単にいうと男性の再婚率が女性より高いということだと思います。

 それにしても「男性の8割が結婚している? そんなはずはないだろう」と思いつつ、データを何度も見直しているうちに、そのカラクリ(というかグラフの見方)が少しずつわかってきました。

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 図1のグラフは、30歳での未婚率を示したグラフです。着目していただきたいのは1985年、つまり私が20歳の頃に、女性の7割が30歳までに結婚をしているのです(男性は4割程度ですが)。

 私が大学生の頃、若い女性は20代後半になると「イブを過ぎたクリスマスケーキ」とか31歳を越えると「年越しそば」などと言われ、世間の女性への「結婚しろ!」という圧力は理不尽なほどに強かったのです。

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 さて次に、図2に現時点の生涯未婚率の変移を示すグラフを重ねて示します。先ほど申し上げたように男性の8割、女性の9割が結婚を選択していることを示しています。つまり、現在の女性の結婚率9割は、なんのことはない「85年時点で7割にまで持ち上げた(当時の)若い女性」の努力が反映されているだけです。

 女性の結婚が30歳を過ぎると激減する(2割しか増えていない)のは当然です。30歳以下で結婚している女性が多かったから(7割)です。

 さて、問題はここからです。

 まず検討に際して、かなり乱暴なカテゴライズをしました。全体像を把握するためです(図3)。

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 図4は、このカテゴライズに従って、将来の結婚がどのように推移するかを考える上でつくった図です。先ほどのカテゴリに、結婚率の「上昇」「横ばい」「下降」の3つの状態をかけ合わせたマトリックスで、私はこの9つのすべてについて、それぞれ検討してみました。

 当初、私は「30歳までに結婚」と「30~50歳までに結婚」の状態は、20年の時間を平行移動しながら推移するだろう、と思っていたのです。ところが、そうならないことがわかってきたのです。簡単にいうと、「30歳までに結婚」は安定しているのに対して、「30~50歳までに結婚」が減ってきているのです (なお、参考までに私の同僚の「願望」や「所感」が、どの位置にあるのかも示しておきます)。

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 図5は、この検討過程でつくった机上シミュレーション結果の概要です。30歳までの結婚率は、現在、男性30%、女性40%で安定傾向にあるようです(各種の補間関数を使って極値計算した結果)。

 ところが、50歳を越える生涯未婚率は年々増加しています。男性のほうはキレイな線形の増加を示していますが、女性のほうは指数関数的な増加傾向が見られます。しかし、今回の計算では、男性と同じ線形増加と仮定しました。指数関数にすると、女性が一人も結婚を選択しないのに、男性だけが結婚を選択しているという奇妙な状態が発生してしまうからです。

 なぜ、私がこのような生涯未婚率の線形増加を仮説として置いたかというと、1970年頃からこの現象の萌芽が見られ、そして1985年から現在に至るまで(28年間)、「一貫したマクロな傾向」として安定しているからです。そして、この「一貫したマクロな傾向」というのが問題なのです。

 例えば、人口ピラミッドにおいては、突出して人口の多い世代が表れています。団塊世代と団塊ジュニア世代です。団塊世代は、戦後の高度成長期すなわち日本が絶好調の景気状況にあった時代に誕生しました。団塊ジュニアは、(言い方は悪いですが)その二次的創作物です。

 ところが、生涯未婚率に関しては、景気との関連が当てはまらないのです。この28年間には、バブル期とバブル崩壊期という、まったく相反した経済現象が表れたにもかかわらず、「一貫したマクロな傾向」が変わっていないのです。つまり、現時点において、私の生涯未婚率の線形増加の仮説を否定する材料を全然見つけられなかったのです。また、主観的にも、私の周りの独身者の数も似たような傾向にあると感じたことにもよります。

 机上シミュレーションでは、あまり実感が湧かないと思いますので、具体的な数値で示したいと思います。私の娘(および姪)たちの結婚の可能性については、特に興味がありましたので、その年代を取り出してみました。

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 私の娘の世代の35%、 今年(2013年)生まれる子どもたちのほぼ半数が、「結婚を選択しない」という試算結果となりました。

……うーん、本当にこれでいいのか?

 そもそも、生涯未婚率の線形増加にしても、現時点での傾向から読み取ったものにすぎません。今とまったく同じような状況が50年以上も続くという考え方はナンセンスでしょう。ただ、人間の行動心理から考えると、人間は多数派になると勢いがつきます。仲間がいることで安心します。孤立感も薄れてくるでしょう。

 これに対して、常に保守勢力(「結婚しろ」という圧力をかける立場)である保護者は、どんどん弱い立場に追い込まれていきます。そもそも、子どもは結婚に関する保護者からの干渉をとても嫌がります(事実、私がそうでした)。「だって、○○ちゃんも、△△ちゃんも、結婚しないって言っていたよ」とか、「『結婚が最良の選択』って自信を持って言い切れるの?」という言葉に、明確なロジックで反論できなくなります。

 では最後に、前回の人口変動の計算結果と、今回の生涯未婚率の変動予測の2つを組み合わせて、人口変動の再計算を試みます。といっても、合計特殊出生率 「1.4」は結果としての値ですから、その要因を逆方向に推定することは絶望的に難しいです。そこで「およそ合計特殊出生率と生涯未婚率には相関がある」と仮定して、数値を叩き出してみました。

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 この値を使って、シミュレーションプログラムで再計算を試みました。

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 表3を見てください。ここ30年くらいの間は、あまり数値に大差がないことがわかります。しかし、人口減少は、私たちの2世代くらい後に、いきなり爆発する時限爆弾のようにやってきます。

 このような恐ろしい計算は、(ごく一部を除き)あまり知らされていないようです。それは「現在の合計特殊出生率『1.4』が最悪値であってほしいという暗黙的な願望があるからではないか」と、私は考えています。

 しかし、本当に「1.4」が最悪値なのでしょうか?

女性に頼りきっている、この社会の懦弱さ

 結局のところ、私たちの社会の未来をつくっているのは「女性だけ」である、ということです。

 昔から、人命に関わる災害発生時の救助の順番は「女性、子どもが先」が絶対不変のルールですが、これは「弱者優先」が理由ではありません。人間を生み出す能力を持っていない男性を「女性、子ども」より優先して救出する必要はないからです。

 今回、私はパソコンのディスプレイを睨みながら、人口ピラミッドの変化をずっと追ってきました。そして、我が国の未来を決定するのは女性であり、しかも、そのごく一部のみに依存しているという事実に、改めて愕然としています。

 死を運命づけられた我々人間にとって、未来が最後の希望であることは論をまたないでしょう。ならば、「人間は平等」を前提としても、その中でも特別に、重点的に、徹底的に優遇する必要があるのは女性です。しかし、今の日本は、女性を優遇するどころか、結婚の機会を踏みにじり、出産を妨害するように機能しているとしか思えません(次回、詳細に論じます)。

そもそも、それ以前の問題として、「何か変ではないか?」

 今回のシミュレーションの計算を通じて、私が一貫して感じてきた違和感は「なぜ、特定の世代の女性だけが2人以上の出産を、まるで業務命令のように強いられる構造になっているのか」ということです。自分たちの存在を未来につなぎたいのであれば、性差に関係なく、誰もが自力で、子どもをつくり出すべきなのではないか? という、根本的な疑問にまで遡ってしまいました。

 男性が出産することは当面無理だとしても、それ以外の手段があるのではないか?

 原理的に可能な状態に至っている技術があるのではないか? 

 なぜ、それが政府の少子化対策の前面に出てこないのか? 

 そもそも、結婚という手順を踏まなければ出産できないという法律があるわけでもなく、先進国の中にあっても、合計特殊出生率2.0を達成している国だってあるのです。
何か変ではないでしょうか。

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 前回と今回のコラムでは、少子化問題の行き着く果ての姿を数値で示してみました。

 次回は、まず政府の対応の現状をきちんと調べた上で、その有効性を数値やその他の手段を使って検証します。その上で、私の考える、現実的かつ実現可能な、エンジニア視点の「少子化対策」を提案してみたいと考えています。
(文=江端智一)

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(今回はこちら)へお寄せください。

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