
東京株式市場で人気が高い銘柄のひとつが任天堂だ。
2017年度の「株式時価総額の増加額ランキング」で、任天堂が首位に立った。1年間に時価総額を2兆9785億円増やし、期末の時点で6兆6386億円である。
17年3月3日に発売した新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」は、ようやく最近になって品薄状態が解消されるほどの大ヒットとなった。
16年6月28日に1万3360円の年間安値を付けた任天堂の株価は、スイッチの販売好調を受けて上昇し、18年1月24日に4万9980円と5万円の大台目前に迫った。だが、米国株の乱高下もあって、ここ2カ月は4万6000円前後でもみ合っている。
株価は07年10月に7万円を突破し、7万3200円と上場来高値を記録した。この時点で時価総額は10兆円を超えた。そして好調の今、07年のピークにどこまで迫るかに期待が集まっている。
業績はV字回復した。18年3月期連結決算で売上高は前期比2.2倍の1兆556億円。9年ぶりの増収で7年ぶりに1兆円を超えた。営業利益は同6倍の1775億円、純利益は同36.1%増の1395億円だった。
スイッチのヒットが、低迷していた業績を一気に回復させた。スイッチは1年間で1505万台売れた。
新型ゲーム機の販売でもっとも重要なのは、立ち上げ時期だ。魅力的なソフトがあれば、ゲーム機本体がさらに売れるという好循環をもたらす。
スイッチは絶好のスタートを切った。「スーパーマリオ オデッセイ」が1041万本、「マリオカート8 デラックス」が922万本、「Splatoon 2」が602万本など、ソフトの販売本数は6351万本に達した。全世界で1億台以上売った06年発売の「Wii(ウィー)」に匹敵するペースで売れている。
ゲーム機の売れ行きはソフトに左右される。12年発売の「Wii U(ウィーユー)」の販売はソフト不足で業績回復の起爆剤にならず、17年3月期まで8年連続で売り上げが減った。
スイッチは15年に急逝した前社長、岩田聡氏が開発を指示した“遺産”である。急遽、リリーフ役として社長に就いた君島達己氏は、ソフト不足に苦しんだWii Uの反省から、有力なソフトを定期的に投入する計画を立てた。2~3年と想定していたソフトの開発期間を5年に延長。スイッチの発売時期と、大型ソフト投入のタイミングを合わせた。
ほかのソフトメーカーにもゲーム機の詳細な機能を公開し、ソフトの開発を促した。魅力的なソフトが続くよう、綿密な計画を錬ったことがスイッチの成功をもたらした。