しかし、2018年後半以降、スマートフォンの販売鈍化や米中貿易戦争の激化懸念を受けて、設備投資を先送りする中国企業が増えた。それに伴い、米ウエスタンデジタルは東芝メモリと共同運営する四日市工場への半導体製造装置の導入を一部延期すると発表した。サムスンが設備投資計画の実行を延期する可能性も高まっている。これは、東京エレクトロンが手がける半導体製造装置の需要が低下し始めたことにほかならない。

IoTへの懸念を映す東京エレクトロン株価

 このように考えると、ファーウェイの副会長逮捕を受けてスマートフォン販売の減少を警戒し、設備投資を先送りする企業が増えることは想像に難くない。この展開が鮮明化するにつれ、中国などでのIoT(モノのインターネット化)投資にもブレーキがかかる恐れがある。東京エレクトロンの株価動向は、そうした市場参加者の考えを見定める重要なメルクマールと考えられる。

 スマートフォンには、IoTのインターフェイスとしての機能がある。リコモンでテレビを操作するように、スマートフォンは工場の自動化を制御したり、必要なデータの分析を行うデバイスとして使われていくだろう。そう考えると、さらに高機能の半導体を搭載したスマートフォンが必要とされてもよいはずだ。

 情報セキュリティーへの懸念はあるものの、ファーウェイやシャオミなどがスマートフォン市場でのシェアを獲得してきたことには、はっきりとした理由がある。価格帯の高いiPhoneなどのモデルを使わずとも、価格帯の低いファーウェイなどのデバイスを用いることで十分な性能を享受することができるからだ。中国スマートフォン企業の経営先行きへの不安が高まることは、中国をはじめ世界各国におけるIoTへの取り組みの先行き見通しを悪化させると考えてよい。

 米国がIT分野での中国の台頭を食い止めるには、競争原理を発揮して企業がより良い製品を生み出すことを目指す環境を整備すべきだ。そうした動きがあれば、東京エレクトロンの経営を考える上でも新しい展開が見込めるだろう。

 しかし、米国は、経済の安定や成長ではなく、安全保障を理由に中国の覇権封じ込めに力を入れ始めた。ファーウェイ副会長の逮捕にもその考えが影響した可能性がある。この展開を受けて、多くの市場参加者が先行きを見通しづらくなり、混乱に陥っていると考えられる。秋口以降、東京エレクトロンの株価には、安値圏での物色の気配もうかがわれた。しかし、12月以降、同社株は大きく下落している。スマートフォン販売などに関する先行き懸念は上昇していると考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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