横畠裕介内閣法制局長官が参院予算委員会で吐いた「暴言」は、野党の辞任要求に発展、予算委員長が厳重注意する事態となったが、安倍政権下における霞が関劣化の象徴といえる。
問題となったのは、3月6日の予算委員会での答弁。立憲民主党会派に所属する無所属の小西洋之参院議員が、安倍晋三首相に対し「質問に答えず時間稼ぎをするような総理は戦後ひとりもいなかった。国民と国会に対する冒とくですよ。聞かれたことだけ堂々と答えなさい」と厳しく声を張り上げた。
この発言を与党が問題視すると、小西氏は横畠長官にこう質問。
「国会議員の質問は、国会の内閣に対する監督機能の表れだとする内閣の答弁書があることを確認してほしい」
小西氏は、内閣の法解釈をつかさどる法制局長官に、「自らの発言は内閣に対する監督機能であり、与党が問題視するのはおかしい」という“お墨付き”をもらおうとしたのだが、あろうことか横畠長官は、次のように法制局長官の立場を逸脱するような答弁を繰り出したのだった。
「国権の最高機関、立法機関としての作用というのはもちろんでございます。ただ、このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えておりません」
「声を荒らげて発言」とは、法解釈でもなんでもない個人的な見解である。そのうえ、横畠氏は、薄ら笑いを浮かべながらこの答弁を行ったため、野党はすぐさま「法制局長官が政治的な発言をするとは何事か」と反発。横畠氏は陳謝に追い込まれ、発言を撤回したが、さすがに自民党内からも「大問題だ。少し思い上がっているのではないか」(伊吹文明元衆院議長)と批判の声があがった。
森友学園問題での財務省の公文書改ざんに代表されるように、安倍政権下では首相に対する官僚の「忖度」の度合いがどんどん強まっている。それは、財務省に限らず霞が関全体に蔓延しつつあり、加計学園問題での文部科学省、統計不正問題での厚生労働省など枚挙に暇がない。だが、内閣法制局長官が「忖度」するのは、他の官僚とはわけが違うと、官僚OBはこう言う。
「内閣法制局長官というのは、官僚のなかでも別格です。誰よりも一番、公正中立を求められる役職で、官僚にとっては大臣に準じるような重要な存在であり、官僚の頂点に位置するまさに官僚のなかの官僚。あの暴言は、そんな立場の人が公正中立を逸脱してしまうほど、官僚機構が病んでしまったということを意味している」