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杉江弘「機長の目」

ボーイング最新航空機で墜落多発、ANAが導入決定…パイロットの操作性を無視した設計

文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長
ボーイング最新航空機で墜落多発、ANAが導入決定…パイロットの操作性を無視した設計の画像1ボーイング737MAX(「Wikipedia」より/Helmy oved)

 トランプ米大統領がエチオピア航空機の事故を受けて「(最近の)航空機は複雑すぎる、もっとシンプルでよい」「常に不必要な対策や改善を進めている」と会見で言った。この発言は彼ひとりで考えたものか、あるいは航空当局者の意見を参考にして出されたものかは不明であるが、大統領自身がボーイング737MAXの一連の事故原因を知って発言したことは間違いない。

 そして航空機製造大国の大統領の発言には重みがあり、その裏には実は航空機を製造している当事者たちのなかにも、現在のハイテク機の設計があまりに複雑化して、人間(パイロット)が制御できなくなることも起こり得ると思っている者もいるのではないだろうか。

失速防止機能は、これまではどうだったのか

 昨年秋に起きたインドネシアのライオン航空機墜落事故と、今年2月のエチオピア航空機の墜落事故原因は、離陸直後に失速を計測するAOAセンサーのトラブルによって、手動操縦中にもかかわらず自動的に尾翼の水平安定板(スタビライザー)が急激な機首下げ方向に動き、それがもとで急降下したことだとみられている。

 これは私がライオン航空機の事故直後から述べてきた内容と同じであるが、最近の米国での動きを見ると、まず間違いないだろう。それはボーイングがAOAセンサーの改良とそのトラブルを知らせる警報装置の設置を進めると表明していることをみても明らかである。つまり失速からの回復を自動化したことが裏目に出たといってもいいだろう。

 では、これまで航空機が失速に入るとパイロットはどうやって回復を行っていたのか、順を追って説明してみたい。

 従来の航空機では失速に入りそうになると、操縦桿についているスティックシェーカーという装置が作動して操縦桿に「カタカタ」という振動を伝える。これは一種の失速警報装置である。パイロットはそれを確実に認知できるので、この装置が作動すれば機首を下げエンジンの出力を上げることによって速度を回復し失速に入ることを回避できるというわけである。

 この仕組みは小型機からジャンボジェットまで共通してどのメーカーでも採用されてきた伝統的な方法であり、スティックシェーカーは失速速度の約107%で作動する。そして仮にパイロットが速やかな対応を失念しても、次にいよいよ失速状態に入り翼の周りの空気が乱れ(剥離とよぶ)翼全体が「ガタガタ」と激しい振動を起こす。

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

1946年、愛知県生まれ。1969年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本航空に入社。DC-8、B747、エンブラエルE170などに乗務する。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。B747の飛行時間では世界一の1万4051(機長として1万2007)時間を記録し、2011年10月の退役までの総飛行時間(全ての機種)は2万1000時間を超える。安全推進部調査役時代には同社の重要な安全運航のポリシーの立案、推進に従事した。現在は航空問題(最近ではLCCの安全性)について解説、啓発活動を行っている。また海外での生活体験を基に日本と外国の文化の違いを解説し、日本と日本人の将来のあるべき姿などにも一石を投じている。日本エッセイスト・クラブ会員。著書多数。近著に『航空運賃の歴史と現況』(戎光祥出版)がある。
Hiroshi Sugie Official Site

Twitter:@CaptainSugie

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