契約義務をめぐり、何かと話題になりやすい「NHK受信料」。5月15日には東京地方裁判所が、ワンセグ機能付きカーナビにもNHK受信料の契約義務が生じるとの判決を下し、新たな論争の的になっているようだ。
訴えを起こしていたのは、自宅にテレビがないという栃木県の女性。テレビは所持していないものの、自家用車にはワンセグ機能付きのカーナビを備えており、女性はNHKに対して「カーナビには受信料契約を結ぶ義務がない」ことの確認を求めていた。
報道によると、女性の自宅敷地内ではワンセグ電波を受信できず、また道路案内のためのカーナビであり、放送受信が目的ではないと主張。放送法第64条では「受信を目的としない受信設備」の設置者は必ずしも受信料契約の義務があるわけではないとしており、自宅でワンセグ受信ができないカーナビに契約義務はないと訴えたかたちだ。
しかし、東京地裁の森田浩美裁判長は、カーナビも“受信設備”にあたると判断。「受信が目的ではない」という主張は女性の主観であり、移動すればワンセグ受信が可能であることから、受信料契約の義務が生じるとの判決を下した。なお、NHK受信料契約をめぐるカーナビについての司法判断は今回が初めてだという。
判決を受けて、インターネット上では、「ここまでくると契約の“義務”ではなく“強要”ではないか」「司法の判断と民意の乖離が浮き彫りになった判決ですね」「NHKならやると思ったが、まさかカーナビまで受信料の取り立て対象にするとは……」「最近の司法はNHKに対して異常なほど有利な判決を繰り返している印象」との意見が相次いでいる。また、日本経済新聞の大石格上級論説委員兼編集委員はツイッターで「テレビを持っていなくてもNHK受信料を払え、という判決です。もはや税金ですね」と指摘している。
NHK受信料をめぐる裁判といえば、3月には最高裁判所が「ワンセグ放送を受信できる携帯電話にも受信契約の義務がある」と判断したばかり。原告の男性は「ワンセグ付きの携帯電話を所持しているだけでは受信契約を結ぶ義務はない」と主張していたが、最高裁は上告を退けるかたちで契約義務があるとの判決を下した。また、2017年12月には、受信料制度の違憲性をめぐる裁判で最高裁が「合憲」と判断し、波紋を呼んだ。
これまでの判決を経て、NHK受信料についての議論が再び活発化。「このままではイメージが悪くなるばかりで、若者のテレビ離れを加速させてしまうのでは?」「誰でも見られるのが問題。受信料を払った人だけが見られる仕組みにすればいい」「いい加減、NHKにはスクランブル放送(契約者だけが受信できる仕組み)を導入してほしい」といった声が相次いでいる。
ちなみに、NHKの受信料収入は過去最高を記録している。5月14日に発表された18年度決算(速報値)によると、受信料収入は7122億円(前年度比209億円増)で初めて7000億円台に到達、5年連続で過去最高を更新した。事業収入全体は7332億円(同129億円増)で、こちらも過去最高である。また、18年度末の受信料支払率は82%で年度目標(81%)を上回ったというから、NHKとしては“取りっぱぐれ”のない状況といえる。