米国の成長に支えられ、なんとか体裁を保ってきた日本の景気に逆風が吹き始めた。米中貿易戦争によって中国向け輸出が激減し、米国での自動車販売も伸び悩んでいる。
経済に占める輸出の割合は低下しているが、輸出依存型経済からの脱却は進んでおらず、いまだに日本は外需の影響を強く受ける。本来であれば、米国の好景気が続いているうちに構造転換を進めておくべきだったが、現状に対する過度な肯定感が支配する日本の社会風土ではそれは望むべくもなかった。米中交渉が破談した場合、日本は極めて大きな影響を受けるだろう。
最終判断は据え置いたが……
内閣府は、3月の景気動向指数からみた景気の基調判断を、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化を示している」に引き下げた。12月の基調判断は「足踏みを示している」だったが、1月には「下方への局面変化を示している」となり、今回、さらに引き下げが行われた。「悪化」の表現が使われたのは、2013年1月以来、6年2カ月ぶりのことである。
もっとも、景気動向指数による基調判断は機械的に決定される仕組みとなっており、総合的な判断ではない。
景気動向指数はさまざまな経済指標のデータを組み合わせて算出されるが、景気に先行する指数と、ほぼ一致して動く指数、景気に遅れて動く指数の3種類がある。一般的な景気判断は、これらのうち景気に一致する指数(一致指数)が用いられており、一時的な要因に左右されないよう3カ月移動平均や7カ月移動平均をもとに基調判断が行われる。
基調判断には定量的な基準が定められており、例えば「7カ月後方移動平均がマイナスになる」といったいくつかの条件を満たすと「足踏みを示している」から「下方への局面変化を示している」といったかたちに記述が変更される。3カ月以上連続して後方移動平均がマイナスになると、今回のように「悪化」という表現になる。
政府による公式な景気判断は、「月例経済報告」で示されるが、5月24日に公表された最新の報告では「景気は穏やかに回復している」との認識を据え置いたものの、いくつかの文言が下方修正された。