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木下隆之「クルマ激辛定食」

中国自動車メーカーがダイムラーやボルボを買い漁り“世界水準の技術”になった現実

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吉利汽車の自動車

 今さら報告するまでもなく、中国の経済的発展速度には驚くばかりた。マクロ経済的には、米中貿易戦争は大きな損害になっている。だが、それだけですぐさま実体経済が停滞するとは思えない。少なくとも上海や北京を取材に訪れる限り、まだまだ中国経済の力強さは弱っていないように見える。

 特に、吉利汽車(ジーリー)の勢いにも目を見張るものがある。あくまで肌感覚とはいえ、無数に存在する中国自動車メーカー(もちろん、その大半が海外資本との合弁)になかでも、吉利汽車の躍進が目につくのだ。

 吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)が、独ダイムラーの株式の9.69%を取得して筆頭株主になったのは昨年のことだ。世界を代表する高級ブランドを、いまだに自動車後進国の面影が消えない中国自動車メーカーが買い取った衝撃は、世界を駆け巡った。

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 浙江吉利控股集団は、2010年にボルボを買収している。ロンドンタクシーの経営権も取得。2017年にはマレーシアのプロトン株の49.9%を手にし、ロータースカーズの51%の株式を取得している。スウェーデン、イギリス、マレーシア、ドイツと、世界各地のナショナルメーカーに次々と資本投下しているのである。

 そもそも中国の政治体制は社会主義であり、共産党の一党支配である。国家に権力を集中させつつ、外資を受け入れることで自由な経済権を装っている。いわば「社会資本主義」ともいえる独自のスタイルを展開している。国策と名がつけば、膨大な国家予算が投入される。浙江吉利控股集団もそのひとつだ。傘下の吉利汽車の躍進は道理なのである。

 中国資本企業が、金の力で外国メーカーの技術を握り始めて日が浅い。

「優秀なエンジニアを手当たり次第にヘッドハンティングしています。これからはもっとも伸びますよ」

 吉利汽車とも交流のある関係者は、そういって驚きを隠さない。それが証拠に、吉利汽車は2018年の北京モーターショーで発表したフラッグシップEV(電気自動車)「博瑞GE」で、世界をリードすると宣言した。名目的には、上海や北京の環境改善の一助を期待しているのだ。

 Lynk&Co(リンク・アンド・コー)といった耳慣れない新興メーカーが、スポーツセダン「03」を開発したことも世界を驚かせた。完成度が低くはなかったのだ。これこそ吉利汽車とボルボの共同開発の産物だ。世界制覇に向けて確実に歩みを進めているのである。

急速に世界進出する吉利汽車

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 一方で、浙江吉利控股集団はモータースポーツにも積極的な姿勢を示している。世界ラリー選手権で活躍しただけでなく、世界ツーリングカーカップへの参戦も表明。モータースポーツの世界でも頂点を目指す。

 そればかりか、底辺カテゴリーにもぬかりはない。中国各地で吉利汽車のミドルセダン「帝豪GL」をベースとしてレース仕様に改造したマシンを走らせている。ドライバーは例外なく中国人である。まだまだモータースポーツ技術的にはお粗末なレベルだし、ドライバースキルも素人レベルを脱していない。だが、国策のテコ入れは力強い。徹底した英才教育により、近い将来には世界に羽ばたせることをもくろんでいるは明らかだ。

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 上海や北京はもう、かつての中国にイメージするような自転車天国ではない。富裕層はドイツのBMWやメルセデスといった高級自動車を乗り回し、庶民はEVバイクで通勤する。交通インフラも整っている。公道のそこかしこに設置したカメラで市民の動きを監視しているから、速度超過も信号無視もほとんどない。日本の街中よりもはるかに大人しく整然としている。そんな大都会が吉利汽車に埋め尽くされる日も近いと思わせられるし、それが世界に伝播する日もそう遠くはないのかもしれない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員
「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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