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沖縄、マンション高騰で東京並み…軍用地、「高利回りの投資商品」化で県外所有者増

文=山田 稔/ジャーナリスト
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軍用地売買の広告

 沖縄経済の絶好調が続いている。日本銀行那覇支店が発表した「県内金融経済概況」(2019年6月)によると、県内景気は全体として拡大。この判断は69カ月連続というからすごい。

 最大要因は観光だ。2019年1~3月の入域観光客数は前年同期比7.0%増。国内客が同3.6%増だったのに対して、外国人客は同16.2%増だった。4月は外国人客こそ前年同月比9.6%減となったが、国内客は同8%増。4月の全体の入域観光客数は同2.2%増となった。

 個人消費も堅調だ。4月の百貨店・スーパーの販売額は前年同月比2.1%増(既存店=速報値)、コンビニは同6.2%増(全店舗=確定値)、ドラッグストアは同8.3%増(全店舗=速報値)と、軒並み前年を上回っている。4月の自動車販売台数は同5.3%増(新車は同3.8%増)だ。

 沖縄経済の先行きについて日銀那覇支店は「引き続き拡大する可能性が強い」としたうえで、リスク要因として「本土および海外経済の動向、原材料価格の上昇や労働需給の引き締まり等」を挙げている。

 沖縄でも人手不足、賃金上昇が顕著になってきている。求人情報誌「アグレ」を発行する求人おきなわは、アグレ掲載の求人広告を対象に募集時の賃金を集計した。その結果によると、全職種の平均は月給ベースで18年度比3.1%増の17万9325円、時給ベースでは同3%増の899円へと上昇した。

 6月27日、那覇市に隣接する浦添市に地元スーパー大手のサンエーとパルコが協業して開発した大型商業施設「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」がオープンした。また、セブン‐イレブンが初めて沖縄に進出し、7月に14店舗を同時開業する。こうしたこともあり、人手不足、賃金上昇に拍車がかかっている。

「サンエー浦添西海岸パルコシティにはローソンの店舗も出店しました。その求人チラシには通常の時給は900円(22時から23時は1125円)と記載されていますが、オープン3カ月限定で時給1000円に引き上げられています。一方、7月11日に開業するセブン‐イレブンの国際通り松尾1号店の求人情報は時給800円からで、深夜は1000円です。沖縄ではコールセンターの時給が1200円程度。それにつられて小売りや飲食店も上昇気味です」(地元関係者)

 経済の好調ぶりはいつまで続くのか。一般財団法人・南西地域産業活性化センターが6月10日に発表した県経済の長期予想では、19年度から28年度の実質経済成長率は年平均で1.4%程度。日本経済の年平均成長率は1%程度と想定しており、これを上回るとしている。消費増税の影響が懸念されるが、沖縄経済は全体として、まだまだ成長していきそうだ。

沖縄県外の軍用地主が増えているという衝撃的な事実

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マンション価格は高騰

 地価の高騰も続いている。那覇市の街中を歩いていると「新築未入居 2LDK 5200万円」(宜野湾市、72.24平米)、「3LDK 4980万円」(那覇市、78.47平米、築4年)といった販売チラシが目に止まった。東京と変わりない価格帯に驚いた。

「地価の高騰でマンション価格も上がっています。特に那覇市の新都心エリア(おもろまち)などで顕著ですね。2018年の中古マンションの平均価格は約2850万円。2011年の1600万円台から高騰しています。この数年、セカンドハウスや投資目的で購入する県外の客も増えているようです」(地元の不動産関係者)

 6月9日付琉球新報が1面トップで『県外軍用地主6年で1.4倍』と報じた。県内の米軍基地用地(軍用地)で、国と賃貸借契約を結ぶ所有者は18年度で4万4523人。このうち国外を含む県外在住者は4027人で、その比率は9.0%。沖縄防衛局が県内外所有者の区分を始めた12年度は4万4233人中、県外者は2786人で6.3%だったから、6年で県外地主の数は1.45倍、比率で2.7ポイント増えた。

 同紙は増加の要因として、地主の高齢化で県外や国外に住む親族への相続・贈与が進むことに加え、「安定資産」として投資目的での需要が広がっていると指摘している。

 国と賃貸借契約を結んだ軍用地主には、日本政府から年間借地料が支払われる。その総額は858億円(16年度)。この借地料に目をつけた投資家が軍用地を購入しているというのだ。

 ネットで調べてみると、ある軍用地は約2422万円で契約済みとなっていた。年間借地料は約49万4315円。単純計算で利回りは2.04%。借地料は毎年値上がりしており、銀行の定期預金よりもはるかに高利回りということが、ネット上で強調されていた。

 防衛省沖縄防衛局の職員(当時)が軍用地投資の入門書を出版し、自らも軍用地を所有していたとして、昨年の国会で国民民主党の議員が質問主意書を提出した。

 政府は「防衛省の職員として公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くような内容であったため、御指摘の職員が当該著書を出版した行為は極めて不適切であったと考えている。なお、当該職員に対しては、平成30年6月8日付で停職20日の懲戒処分を行ったところである」との答弁書を議長あてに提出した。

 投資目的の軍用地購入は、沖縄の、「もうひとつの基地問題」といっていいだろう。騒音や事故・事件といった基地負担をせず、利益だけを手にする県外の投資目的の地主の存在がクローズアップされてきた。

 琉球新報は『負担伴わず不公平感』との見出しを掲げていた。投資目的で軍用地を購入するという行為が野放しにされていること自体、釈然としない。見過ごしてはならない「もうひとつの基地問題」だと思う。
(文=山田 稔/ジャーナリスト)

山田稔/ジャーナリスト

山田稔/ジャーナリスト

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。

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