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韓国の芸能・性・権力の象徴――性接待ビジネス【中編】

ビッグバン・スンリ“女性斡旋ビジネス”キーマンが受け取った2億ウォンと欧州旅行

取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基
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2017年10月、YGエンターテインメント主催のオーディション企画について会見する同プロダクション代表(当時)のヤン・ヒョンソク(写真左)と、ビッグバン(当時)のスンリ。(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

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【前編】でも述べたが、ビッグバンの元メンバー・スンリによる事件、彼が所属するYGエンターテインメントの社長であったヤン・ヒョンソクによる事件、そして大物歌手チョン・ジュニョンらも関与した「スンリ・カカオトークグループ事件」のすべてに登場するのが、“チョンマダム”なる人物である。ここ最近、韓国社会では、素性が知られていないこのチョンマダムの正体に関する噂でもちきりだ。

 チョンマダムという通り名自体は、江南のバーでならどこでも見かけそうな名前ではある。しかしさまざまな情報を総合するとこのチョンマダムは、韓国で“二番目に力が大きい”人物なのだという。ここでいう“力”とは、「女性たちをどのくらい素早く動員できるか」を指す。特に上流階級の希望するような女性ホステスを大量に抱えることはかなり難しいこととされ、そういう意味でチョンマダムは、“夜のナンバー・ツーの実力者”とされているのだ。

 韓国・江南の酒代は、世界各地の高級街におけるそれと比べても、決して安くはない。ただ座って酒を飲んでも、ひとり当たり20万円程度はかかるだろう。江南の“夜の事情”をよく知るビジネスマンのひとりは、次のように話す。

「ヤン・ヒョンソクが行くようなバーの敷居をまたぐことは、一般人には到底不可能だ。(さらに性接待で)バーを丸ごと貸し切ったり、女性を欧州に同伴させたりするとなれば、100~200百万円ではきかないだろう。相当、大きな金額が動いているはずだ」

「性接待斡旋の対価として2億ウォンを受け取った」

 一連の事件を取材してきた韓国の大手放送局MBCのコ・ウンサン記者は、「マダムは、いわゆる“10%”(韓国の風俗業態のひとつ)の店を運営しながら女性を管理し、(性接待に)投入する」とし「業界内ではかなり力が強く、政治財界にも繋がりがあると評判。またチョンマダムはヤン・ヒョンソク、スンリなどのYG関係者とも人脈が深かった」と説明している。

 噂が噂を呼ぶ中、当の本人であるチョンマダム自身が口を開いた。ヤン・ヒョンソクが「自分は風俗店や海外で性接待をしたことがない」と否定を繰り返す姿に激怒してのことだった。チョンマダムは、「そもそも自分は、海外資産家や国内の権力者を動かすほどの人物でない」とし、すべてはヤン・ヒョンソクの依頼で行ったことだと打ち明けた。また、ジョー・ロー(マレーシア出身の実業家。【前編】に登場)と自分には面識はなく、「ヤン・ヒョンソクから連絡を受け、接待の用意をしただけだ」と語った。

 チョンマダムの証言はさらに続いた。斡旋した女性たちとヨーロッパ旅行に行ったのは事実であり、その費用として約2億ウォン(2000万円)を受け取ったことも認めた。ただし、これもヤン・ヒョンソク側から依頼があっれのことだと強調。電話が来て、遠征接待を指示されたというのだ。

 チョンマダムは遠征接待出発の一週間前、ヤン・ヒョンソクの友人であり、アート業界の権力者のひとりでもあるA氏から約2億円分のユーロを現金の束で受取り、自分の分け前としてその半分を受け取ったとしている。

「金はジョー・ロー側から出ていると説明された。ヤン・ヒョンソクは、私に1億ウォン、斡旋された女性に1億ウォンをそれぞれ配るように指示した。私が1億ウォンを受け取った理由は、ヤン・ヒョンソクがよく知っている」(チョンマダム)

「YG社長の指示のもとに行われた」

 これは、ヨーロッパ訪問中に自分の店を営業できないがために生じる「損失金を受けとったまで」という説明であった。なお、それまで隠れていたチョンマダムが、メディアからのインタビュー取材に答えた理由は明らかだ。自分を積極的に弁護するためである。「すべてはヤン・ヒョンソクの指示のもとに行われたことなのであり、自分は金をもらって女性たちを斡旋したに過ぎない」と。しかも彼女は、一緒に遠征に同行した女性に対しても、売春を指示したことはないと語ってみせた。

 チョンマダムが明らかにした“欧州遠征”の内容は、非常に豪勢だ。女性たちは対価として、ひとりにつき50万~100万円を受け取ったという。チョンマダムたちはヘリコプターに乗ってジョー・ローが手配したヨットに乗り込み、そこで6泊7日を過ごした。夜には酒を飲んでパーティーを楽しみ、船にはプールやサウナなどのあった。途中、ブランド物のバッグも買ってくれたのだという。

【後編】に続く)

(取材・執筆=Dan Ryu【韓国紙記者】、翻訳・構成=河鐘基)

河鐘基

河鐘基

1983年北海道生まれ。株式会社ロボティア代表取締役。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」を運営。著書に 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」(扶桑社新書)、「ドローンの衝撃」(扶桑社新書)、「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」(光文社)。訳書に「ロッテ 際限なき成長の秘密」(実業之日本社)、「韓国人の癇癪 日本人の微笑み」(小学館)など。

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