グーグル検索でしょうもないサイトばかりが表示され、イラッとしたことのある人は少なくないだろう。そんな人に向け、通常のグーグル検索から約5000個の「ノイズ」サイト群を除外して表示する検索エンジンが「ノイズレスサーチ」だ。
前回に引き続き、開発者のパソ活氏に、ノイズレスサーチが得意とする「医療系ワード検索」や効率的な検索方法についてうかがう。
医療系ワードで有効な「ドメイン絞り込み」
――ノイズレスサーチでは「これを除外してほしい」というユーザーからのリクエストフォームも用意していますが、どんな声が寄せられていますか?
パソ活氏(以下、パソ活) 医療系ワードの除外リクエストが多いですね。
――DeNAが運営していた「WELQ」は「医療系情報サイト」と銘打ちつつ、信憑性に欠ける内容の記事が多数掲載されていて、大問題になり閉鎖されました。ただ、今でも健康上の悩みや問題を抱えた切実な読者に対し、トンデモ情報を提供している医療、健康サイトは多くありますよね。
パソ活 医療系情報はサイトが乱立して対処のしようがない部分もあるので、それらを調べたいときは、ノイズレスサーチ内の「ドメイン絞り込みボタン」の使用を推奨しています。
ノイズレスサーチでは、ドメインを特定しない通常の検索以外に、特定のドメインに絞り込んだ検索もできるようにしています。画像1が、それぞれを選択した場合の対象ドメインになります。
――画像2が、ノイズレスサーチで「病院」のドメインを指定したときの「夜中喉が渇く」の検索結果です。上位はすべて医療機関による情報ですね。
パソ活 中身がスカスカのキュレーションサイトは上記以外の「.jp」「.com」「.info」「.net」 などのドメインなので、「co.jp(株式会社等)」「ac.jp(学校系)」「go.jp(政府機関系)」などの、取得に資格が必要なドメインの存在を知っておくだけでも信頼性の高い情報を探しやすくなります。
なお、上記図内の「MSD」は1899年に米国で医師向けに発行された医学事典をルーツとした医学情報サイトであり、医療従事者、一般利用者向けにそれぞれ情報を公開しています。
「ネット資産の消失」という危機
――グーグル検索の問題点はどこにあると思いますか?
パソ活 「グーグル検索がダメになった」と言われることが非常に多いですが、そうではなく、そもそも「検索キーワード」に対してまともで関連性の高いサイトが少ないのです。特に人物名に関する情報は「まともで関連性の高い」情報が少ないのではないでしょうか。
――芸能人の名前を検索すると出てくる「○○の年収は? 結婚は?」の「いかがでしたかサイト」なんて、まさに典型ですよね。ノイズレスサーチをリリースした2016年から、グーグル検索に変化は見られましたか?
パソ活 ごく個人的な体感から言うと、16年から現在の間では変化を感じていません。ただ、ネット全体の質が悪くなるのではないかという不安を感じています。
――「質が悪くなる」とは、どういったことが起きているのでしょうか。
パソ活 昔のネット資産が消えているんですよね。ヤフージオシティーズなどの無料ホームページや各種無料ブログのサービス終了によって、本当に詳しい人が書いた過去の資産が今、次々とネットから消えています。オリジナリティの高いページが新たにつくられにくくなるかもしれない、ということも危惧しています。
――ヤフージオシティーズは、日本の個人のネット文化黎明期のプラットフォームでしたね。今のように誰もが気軽に情報を発信できる環境でなかった分、発信する側にある種の自負や気概があったと思います。ネットサービスの普及や大衆化にともない、そういう自負や気概は薄れ、なくなっていってしまいましたね。
パソ活 さらに、内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」【※1】によると、スマホ世代はパソコンの利用率が急激に低くなっていて、パソコンに不慣れな人たちが現在進行形でどんどん増えています。
ここからは個人的な予想も含みますが、スマホは画面サイズ、ゲームやアプリの通知、姿勢などの点で、サイトをつくったり記事を執筆したりする端末としては向いておらず、これからは個人が書くブログは減っていくのではないでしょうか。
――SNSなど、より短文での発信になっていくのかもしれないですね。
ツイッター検索が“使える”理由
――「ヤフー知恵袋」「NAVERまとめ」「いかがでしたかサイト」がはびこるなかで、どうすればいい検索ができるでしょうか。
パソ活 自分が調べ物をするとき、グーグル検索で誰が書いたのかわからないような記事をいくつも読むより、ツイッターで検索して、どのくらいの人数がどう感じているかを眺めたり、ユーチューブで検索したほうがよっぽど参考になることもあります。
――時事問題などで「あの人はどう考えているんだろう」と「誰」で調べるときなども、ツイッターは使えますよね。
パソ活 グーグル検索に不満を感じている人は、その不満を原動力に「どうすれば欲しい情報を手に入れられるか」という大局観を持って、検索に多様性を持たせたほうが幸せになれると思います。
人生の質を上げるネット検索を
パソ活氏と話してあらためて思ったのが、情報に対する価値観だ。私は趣味で同人誌をつくるが、最近、そこで難解な言葉の意味を引用する際に「ウィキペディアより」と書いているのを数例見た。おそらく若い人の同人誌だ。
ウィキペディア自体は私も見るし、手っ取り早く概要を押さえたいというときにとても使える媒体だと思う。しかし、ウィキペディアである以上、誰が書いたかもわからない情報だ。自分のウィキペディア情報を自分で作成し、「氏はこの分野の第一人者だ」的なことを書いていた、という恥ずかしい疑惑のある文化人もいる。
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
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