自身が運営するサイトに広告を載せ、それを閲覧者がクリックし、商品購入などの成果を達成することで、サイトオーナーに収益が入る仕組みの成果報酬型広告「アフィリエイト」。「アフィリエイトで月100万円儲かる」など景気のいいことを言うサイトはいくらでも見つけられるが、怪しい。
では、アフィリエイトの現状はどうなっているのか。前回に引き続き、広告主とアフィリエイターの間に立つASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)として2010年より事業を行う、株式会社もしものアフィリエイト事業部長・佐藤俊幸氏にうかがう。第2回は、「アフィリエイトで月100万達成!」は本当か? などについて。
アフィリエイト初心者の9割が脱落
――「アフィリエイト」と検索すると「売り上げ月100万達成!」など、景気のいい言葉が飛び交うサイトがたくさんひっかかります。そのようなサイトは自分のノウハウを情報商材として売るのが目的だとは思うのですが、実際アフィリエイトはどのくらい儲かるものなんでしょうか?
佐藤俊幸氏(以下、佐藤) これは感覚的な話になりますが、アフィリエイトを始めた初心者のうち、1円でも収益を出せる人は全体の10%ぐらいしかいません。90%は成果が出ないまま、3記事くらいつくったあと、そのまま更新自体が止まってしまいますね。
――9割が脱落とは、相当ですね。
佐藤 アフィリエイトを始めるハードルはとても低いんです。インターネットを使える環境があれば、すぐ始められてしまいます。
――カスタマイズ性やデザイン性を求め、自分でサーバーを借りたり独自ドメインを取得したりなどで費用をかけている人もいますが、無料のブログサービスを利用すれば、通信費以外は一切無料でアフィリエイトを始めること自体はできますよね。御社のASPサービスも無料で利用できますし。
佐藤 ただ、軽い気持ちで始めて続かないケースが9割近いですね。当社のASPサービスに1回しかログインしないままフェードアウトしてしまう人も、とても多いです。
――景気のいいことを言うブログを見て、軽い気持ちで始めてみたものの、想像以上に難しい現実に気づいて、脱落していくと。
佐藤 また、うまくいっている人も「瞬間的にうまくいったけれど、それが続かない人」と「継続してうまくいっている人」に分けられます。
――何が違うのでしょうか。
佐藤 1回だけうまくいく「瞬間最高風速」はSEO対策などテクニカル面を工夫すれば実現できることも、以前はあったんです。一時的に検索上位に表示されるのを利用して、ある月だけ数十万円の収益を出す。ただ、これも最近は通用しなくなってきました。グーグル検索は精度が上がってきていて、ユーザーに価値のない情報は上位に表示されにくくなってきています。10年頃までは、テクニカル面を工夫すれば検索上位に出るのは案外簡単で、安定した収益を出せる人もいましたが、今はどんどん厳しくなってきていますね。
「毎月100万円稼げる…」は疑うべき
――そうなると、「アフィリエイト」で検索したときに山ほど引っかかる「月100万達成!」といったサイトは……。
佐藤 本物もいるとは思います。ですが、「瞬間最高風速」をさも毎月の売り上げのように言ったり、そもそもまったく嘘の売り上げを言ったりしている人のほうが多いのではないかと思います。
――証拠としてASP売り上げの表示画面などのスクリーンショットを載せているケースもありますが、ソースや画像の加工でどうとでもなりますしね。
佐藤 結局、そのノウハウを情報商材として売るのが目的なのでしょう。「毎月100万円稼げるノウハウを10万円で売ります」といったものは、疑ったほうがいいです。実際にアフィリエイトで成功している方を見ると、あまりノウハウを語らない人が多いですよ。
――おしゃべりな成功者もたまにいますけど、そういう人も“本丸”は言わないですよね。「好きなことで会社に縛られず自由に生きる」みたいな口当たりのいい言葉で情報商材がトッピングされているケースもあるので、気をつけたいところですね。では、継続的にうまくいっているアフィリエイターの共通点はなんでしょうか。
佐藤 「そのサイトを訪問してくれる人が喜ぶ情報をちゃんと書いている」ことですね。きれいごとのようですが、本当にそうなんです。たとえば、アフィリエイトでよく成果の上がるジャンルにウォーターサーバー(の紹介や比較を行うサイト)があるのですが、「ウォーターサーバー」と検索すると、小学館が運営するサイトが上位に表示されます(※取材時点)。力量のある編集者やライターを揃え、読者のニーズに合わせた充実したコンテンツをつくる力があるからこその結果でしょう。
――「正攻法」になりつつあると。
佐藤 はい。ようやくなりつつあります。今は小手先のテクニカルなことだけではうまくいかなくて、サイトを訪問する人の目的に沿った有益な情報を提示できるサイトだけが、継続して収益を出すことができるのです。そこでは、的確なライティング能力が問われています。
トップクラスは月1000万円の稼ぎに
――「うまくいっている例」として、どういったサイトが参考になるでしょうか。
佐藤 当社もそうですが、ASP各社は優秀な登録サイトを表彰するコンテストを行っています。そういったコンテストの受賞者サイトを見てみるのがいいでしょう。
――コンテストでは、一定期間でもっとも売り上げを出したサイトが選ばれるのでしょうか?
佐藤 売り上げもありますし、ASPから見て期待できるサイトが選ばれるケースもありますね。そういった優秀なサイトは、サイト内の広告数はそこまで多くないんです。
――意外ですね。
佐藤 なぜかというと、やはりサイト訪問者のことを考えて記事を書いていくと、広告を載せない記事が多くなっていくんです。優秀なサイトは記事を選んで広告を載せているケースが多いですね。
――確かに、広告が鬱陶しかったり不自然だったり、しつこいサイトは内容以前にそれだけで嫌になってしまいますね。見ている内容とまったく関係ないアダルト広告にうんざりした経験のある人も多いと思います。次に、「更新頻度」は多いほどいいのでしょうか。これはグーグルの風向き次第で変わるところだとも思うのですが。
佐藤 サイトのジャンルにもよりますね。運営しているのがニュースサイトなら、ある程度頻繁な更新が求められるでしょう。ただ、「おいしい水を紹介する」サイトなら、コンテンツがある程度できてしまえば毎日更新する必要はないですよね。以前は更新頻度が高いほうがよかったのですが、今は内容勝負になりつつあります。
――ちなみに、トップクラスのアフィリエイターはどのくらい稼いでいるのでしょうか。
佐藤 法人を除外して考えると、トップクラスで月1000万円ぐらいですね。1円でも稼げているのは全体の10%程度で、そのなかのさらに10%、つまり全体の1%くらいが月10万円以上稼げているというイメージですね。月1000万円は、本当にごく一握りのトッププレイヤーということになります。
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アフィリエイト目的のサイトは今や乱立しており、なかには「洗濯物が生乾きになったらどうする?→もう一回洗いましょう」といったしょうもない情報しか載っていないケースも少なくない。そういったサイトは、よく文末に「いかがでしたか?」という文言を定型句のように使うので「いかがでしたかサイト」とも揶揄されている。著名人の名前で検索すると「○○は結婚している? 年収は? 本名は?」などと出てくるサイトもおなじみだ。
残念ながら、いまだに「いかがでしたかサイト」や「結婚してる? 年収は? サイト」が検索上位に出ることもあるが、これからどんどん滅びていくのかと思うと心強い。一方で、グーグル一強の状態はなかなか怖くもある。次回も引き続き、佐藤氏に「アフィリエイトの不正」についてうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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