自身が運営するサイトに広告を載せ、それを閲覧者がクリックし、商品購入などの成果を達成することで、サイトオーナーに収益が入る仕組みの成果報酬型広告「アフィリエイト」。「アフィリエイトで月100万円儲かる」など景気のいいことを言うサイトはいくらでも見つけられるが、怪しい。
では、アフィリエイトの現状はどうなっているのか。広告主とアフィリエイターの間に立つASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)として2010年より事業を行う、株式会社もしものアフィリエイト事業部長・佐藤俊幸氏にアフィリエイトの市場規模や歴史についてうかがった。
ブログ文化の広まりが転機に
――日本において、アフィリエイトはいつ頃から始まったのでしょうか。
佐藤俊幸氏(以下、佐藤) アフィリエイト市場は00年頃に始まりました。日本で最初のASPはバリューコマースさんです。現在、ASPは国内に100社以上あり、大手は20社くらいですね。
――当時から「広告を個人のサイトに貼り付ける」というスタイルですか?
佐藤 はい。アフィリエイトの仕組みは昔からずっと変わっていないんです。
――ただ、アフィリエイトを取り巻く雰囲気は随分肯定的になりましたよね。00年前後の「テキストサイト全盛期」と呼ばれていた頃、当時人気だったあるテキストサイトが、自分のサイトに広告を貼ることを「金に困り広告デビューしちゃいました!」とネタにしていたのを覚えています。
あの頃は「ホームページは表現の場であり、それで金儲けをしようとするなんてダサい」という雰囲気が確かにありました。いつ頃から、そういった雰囲気は変わってきたのでしょうか。
佐藤 まず「ブログ文化」があると思います。テキストサイト全盛期の後半くらいから、ブログ文化が始まりましたよね。それまで個人がHTMLのタグを打ったりホームページビルダーなどのソフトを使ったりして、手間暇かけてつくっていた「ホームページ」が「ブログ」になり、誰でも簡単にきれいなデザインのブログを始められるようになりました。
そして、もうひとつは「広告主側の事情」です。ブログ文化が始まる前までは広告の出稿数自体が少なく、広告の種類もほとんどありませんでした。たとえば、テキストサイト全盛期の頃にはやっていた「フラッシュおもしろ動画サイト」があったとしても、そういったサイトに載っていて違和感のない広告がそもそもなかったんです。今は広告の種類が増えたため、アフィリエイターは自分のサイトに合う広告を見つけやすくなりました。
――ネット広告では、グーグルも「グーグルアドセンス」というサービスを提供しています。こちらでは、広告をクリックしただけで収益が入る「クリック広告」や、広告が表示されただけで収益が入る「インプレッション広告」なども提供しています。これらとアフィリエイトの違いはなんでしょうか?
佐藤 アフィリエイト広告は成果報酬型広告という意味であり、広告主が希望する行動を閲覧者が行ったら、つまり成果を達成したらサイトオーナーに報酬が入る仕組みです。
――成果の例として「その商品を購入する」がわかりやすいですが、もしものアフィリエイトを見ると、「無料体験に申し込む」などが成果として設定されているケースもあるんですね。
佐藤 はい。なお、当社ではクリック広告も一部で提供していますが、ほとんどがアフィリエイト広告ですね。一般的に「アフィリエイト」というときは、成果報酬型広告のことを指します。「見るだけ」や「クリックするだけ」の広告より、アフィリエイトのほうが達成のハードルが高くなる分、報酬の金額は高くなる傾向にあります。
3000億円規模に成長したアフィリエイト市場
――アフィリエイトの市場規模はどうなっているのでしょうか。
佐藤 矢野経済研究所の発表【※1】では、アフィリエイトは約3000億円の市場規模といわれており、ここ数年は毎年10~15%の成長率をキープしています。
――ネットでは「アフィリエイトで稼げる時代は終わった」というような個人ブログもよく見ますが、順調なんですね。
佐藤 アフィリエイトにかかわるプレイヤーの数が増え続けているんです。まず、アフィリエイトに広告を出す「広告主」も増えていますし、自分のサイトを持ちアフィリエイトを始めようとする「アフィリエイター」も増えています。広告主とアフィリエイターをつなぐ当社のような「ASP」も増えていますし、そもそも「ネットを見る人」も減ることはないですよね。そのため、拡大傾向はまだまだ続いていくでしょう。
――これはテレビ広告からネット広告へ、の流れなのでしょうか。
佐藤 テレビだけでなく、ラジオ、雑誌、新聞も含めた「マス広告」が「ネット広告」へ移っているというのが実態ですね。テレビ単体で見ると、広告収入の成長率はここ数年ずっと横ばいで、最近では1%程度と若干マイナスにもなっています。ただ、テレビよりも落ち込みが激しいのは雑誌とラジオです。
なお、アフィリエイトはネット広告のひとつという位置付けですが、ネット広告の成長を牽引している分野になります。
テレビCMは「認知」、ネット広告は「獲得」
――広告がマスからネットへ流れているのは、ネット広告のほうが効果的だからなのでしょうか。
佐藤 効果的かどうかはやり方次第ですが「効果測定」はネットのほうがしやすいですね。テレビにも視聴率はありますが、視聴者が本当にCMを見て商品やサービスを購入したのかは推測でしか出せません。ネットなら、誰がクリックして誰が申し込んだかまで追いかけることができます。効果測定を出しやすいので、企業としても予算の配分がしやすいんです。
――効いているかどうかがはっきりしないよりも、結果が明確に数値でわかるほうが、出稿する側としてもわかりやすいですよね。
佐藤 実質的な効果でいうと、マス広告とネット広告ではアプローチする層が違います。テレビは「認知」に効く媒体です。ネットは認知にも効くのですが、どちらかというと最後の刈り取り、つまり「獲得」に効きます。そのため、マス広告からネット広告にきれいに流れているだけかというと、そう単純ではない部分もあります。
* * *
次回は、気になる「アフィリエイトで月100万!」などと喧伝するサイトは本当なのか? などについて、引き続き佐藤氏にうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
「2018年度の国内アフィリエイト市場は前年度比112.2%の2,933億円の見込、2022年度には5,368億円に達すると予測」(矢野経済研究所)
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
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