マツダは、10月24日から11月4日まで開催されていた東京モーターショーで、同社初となる量産型の電気自動車(EV)「MX‐30」を世界初公開した。「MX‐30」は2020年に欧州で発売し、欧州以外の地域には適切なタイミングで投入する計画だ。
内燃機関にこだわるマツダが、なぜ、ここにきてEV投入に踏み切ったのだろうか。“EVブーム”にあらがえなかったのだろうか。
「環境規制がもっとも厳しく、苦しんでいる欧州から出す」
と、マツダ社長の丸本明氏は、10月23日に開かれた東京モーターショーのプレスブリーフィングの席上、述べた。内燃機関の性能に徹底的にこだわるマツダがEVを出すのはズバリ、環境規制に対応するためだ。欧州では、21年に域内で発売される新車の二酸化炭素(CO2)排出量を1キロメートルあたり平均95グラム以下とすることが義務づけられる。達成できなければ、新車1台につき超過1グラムあたり95ユーロ(1万1446円)の罰金が科される。
マツダのグローバル販売台数161万台のうち、欧州の販売台数は27万台だ。マツダにとって、米国に次ぐ重要市場である欧州の規制をクリアすることは、避けては通れない至上命題である。
もっとも、これを機にマツダが一気にEVにシフトするかというと、答えはノーだ。実際、全世界でのEVの販売台数はいまだ200万台に満たない。EVの先頭を走る日産「リーフ」にしても、初代発売の2010年12月から19年3月までの9年間の販売台数は、累計40万台にすぎない。
「私が生きている間は、EVが街を走り回ることはないと思います」
と、トヨタ社長の豊田章男氏は述べた。なぜ、EVは思ったほどには普及が進まないのか。買う側にしてみれば、購入に二の足を踏むもっとも大きな理由は車体価格の高さだろう。
日産「リーフ」の車両価格は399万9240円、上級モデルの車両販売価格は、最低でも税込416万2320円だ。上級モデルは、一回の充電で458キロメートル走れるとはいっても、燃費のいいハイブリッド車の中には一回の給油で1000キロ以上走るクルマがある。約40万円の補助金があっても、EVの価格は高いといわざるを得ない。EVのコストの大部分を占めるのが、バッテリーだ。したがって、バッテリーの製造コストが下がらない限り、EVはエンジン車と競争できる価格にはならない。
加えて、航続距離を含む信頼性や充電インフラにも課題がある。EVの購入をためらう理由に、充電スポットが少ないから不安だという理由をあげる人は少なくない。消費者の不安を払拭できないまま、価格の高いクルマを売るのはムリがある。