ルノー「メガーヌR.S.トロフィ」の日本導入が始まった。「7分40秒1」という、ニュルブルクリンクでのFF最速記録を樹立したばかりのスーパーマシンが、日本市場に本格投入されることになったのである。
とはいうものの、「メガーヌR.S.トロフィ」の存在をそれほど意識していなかった人も多かろうと思う。そもそも、「R.S.」がルノー・スポール(ルノーのモータースポーツ部門)製作であることの認知度も低い。さかのぼって、ルノーにスポーツイメージを抱いている人も少ない。フランス車を好むユーザーの間ではもちろん、その名は高く知られ、憧れの対象として認知されている「メガーヌR.S.」だが、世間的には浸透していなかったのだから、ましてや「メガーヌR.S.トロフィ」が「メガーヌR.S.」の戦闘力を高めたマシンであることも、多くの人は理解しづらいに違いない。
だが、そんな一般的には無名のマシンが、限定発売ではなく、れっきとしたカタログモデルとして正規導入されるというのだから、正規輸入元のルノー・ジャポンの戦略に疑問が芽生えるのも道理だ。はたして売れるのだろうか――。
だが、ルノー・ジャポンには勝算があるという。
「実は、ルノー・スポールの名は浸透し始めています」
マーケティング担当者は、そう自信をのぞかせた。というのは、長年のF1参戦により、ルノーのスポーツイメージが高まっているという。さらに、最近の活躍も後押ししていると感じているというのだ。
実際に、ルノー・スポールの認知度が、本国フランスがトップなのは当然としても、日本でも走りの国・ドイツに次いで高いという。フランス隣国のスイスよりも認知されているというのだから驚きである。
スイスには、マッターホルンをはじめとする高峰が少なくない。走り好きを刺激するワインディングが溢れているのだ。そんな「メガーヌ」がいきいきとするステージを抱えるスイスよりも、日本の知名度が高い。そこに勝算があるのだ。「メガーヌR.S.トロフィ」をカタログモデルとして本格導入するのは暴挙でもギャンブルでもなく、確かなデータに裏づけられた戦略なのである。