
飲食業界のトレンドとなっている、「ひとり○○」と呼ばれる業態。なかでも代表的なのが「ひとり焼肉」だ。さまざまな業者が参入し、同時多発的に増えているひとり焼肉業界でも、頭一つ抜ける勢いで店舗数を伸ばしているのが「焼肉ライク」だ。2018年に1店舗目を東京・新橋にオープンすると、フランチャイズ展開も加速。現在は国内24店舗、海外4店舗(2020年1月時点)と、堅調に店舗数を増やしている。
焼肉ライクを運営しているのは、株式会社ダイニングイノベーションから分社化した株式会社焼肉ライク。同社代表取締役社長の有村壮央(ありむら・もりひさ)氏は自身で飲食業を経営していたが、炭火焼肉チェーン「牛角」の創業者である西山知義氏に師事し、自らの事業を譲渡してダイニングイノベーションに入社。西山氏とともに、焼肉ライクの業態開発を始めたという。
「西山さんから、『焼肉のファストフードをやらないか?』とお声がけいただきました。当時は立ち食いフレンチやステーキなどの勢いがすごくて、外食産業における孤食化も話題になっていた。だったら、ステーキよりもマーケットの大きい焼肉を孤食化すれば、はやらない理由がないし、必ず世界でトップを獲れるんじゃないかと、感銘を受けました」(有村氏)
ひとり焼肉という文化は、関西圏を中心にある程度の広がりを見せていた。しかし、それはあくまでも「ひとりでお酒を飲みながら焼肉をつまむ」という飲み文化としてのもので、客単価も3000円を超えてくる。そこで、焼肉ライクでは食事としての利用をメインにしつつ、一番安い「バラカルビセット」100グラムを530円と、牛丼チェーンの定食メニュー並みの価格に設定した。
「普段使いできるような、フラッと気軽に立ち寄れる、定食やファストフード感覚で食べられる焼肉というイメージです。『好きな外食ランキング』という調査では、ほぼ全世代で1位が『寿司』、2位が『焼肉』なんです。寿司には高級店と回転寿司店がある。でも、焼肉にはライトに楽しめる店舗がなかった。そうした事情は、業態開発のきっかけのひとつですね」(同)
意外に多い複数人での利用
焼肉ライクの店内は木を基調としたスタイリッシュなつくりで、女性ひとりでも入りやすい。カウンターテーブルには埋め込み式の無煙ロースターと、コップを押し込むと水が出てくるウォーターサーバーが設置されている。テーブルの下にはお箸やおしぼりが入っている引き出しがあり、注文は席に設置されたタブレットですべて行うことができる。
注文から提供までは3分を目標に掲げており、テーブルの凹みにトレイがハマるようになっているため、メニューの出し下げもスムーズだ。おひとりさま向けにパーソナルスペースを確保しつつ、店員のオペレーションまで考え抜かれた設計で、そのシステムの完成度は驚異的だ。
「ロースターひとつとっても、七輪を置くのか、ガスがいいのか、煙のダクトを上引きにするか下引きにするかなど試行錯誤を重ね、席の配置や会計システムについても、図面に落とし込んで8カ月間検証を重ねました。1号店を出してからも、お客様の動きや実際のオペレーションを見ながら改善や微調整を繰り返し、より最適なシステムを構築しています」(同)