嵐ドキュメンタリー効果でネトフリ加入者が急増…PayPayフリマがメルカリを猛追か
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2019年第4四半期(10~12月)を中心にアプリの動向を聞いた。
“嵐効果”でネットフリックスが急伸
――19年第4四半期、アプリにどんな動きがあったのでしょうか。
日影耕造氏(以下、日影) 年末に動画視聴系のアプリに動きがありました。まず「ネットフリックス」です。大みそかの視聴ユーザー数が前月同日と比べて1.7倍に伸びました。また、図1の通り、アプリのインストール数も年末に向けて一気に跳ね上がっています。
――「ネットフリックス」は定番ともいえるアプリですが、この時期にそこまで伸ばした理由はなんでしょうか?
日影 大みそかに、「嵐」の活動休止までの日々を追うオリジナルドキュメンタリー番組『ARASHI’s Diary-Voyage-』が始まったからです。
――ジャニオタの購買力はもともと強いですが、そのなかでもやはり嵐はケタ違いですね。
日影 しかも、『ARASHI’s Diary-Voyage-』はこの後も不定期で放送されていくため、ファンにしてみれば解約できないんですよね。なお「ネットフリックス」のコンテンツは190カ国配信で、『ARASHI’s Diary-Voyage-』も世界中に配信されています。
――『ARASHI’s Diary-Voyage-』を見ると、アジアのさまざまな国で熱烈歓迎されているメンバーの様子が映されていました。日本に限らず、他国でもネットフリックスの加入者数増加に貢献したかもしれないですね。
日影 『ARASHI’s Diary-Voyage-』は嵐そのものの人気ももちろんありますが、活動休止前のアイドルの素顔を1年間にわたって追いかけるという番組のコンセプトもユニークですよね。
また、ユーザー数が伸びた動画配信アプリは「ネットフリックス」だけではありません。Zホールディングス系の動画配信サービス「GYAO!」も、図2の通り、12月22日にインストール数が跳ね上がっています。
これは、同日にテレビ朝日系列で放送された『M-1』の直後に『M-1グランプリ2019世界最速大反省会~忖度なし!漫才達人が全組語り尽くすSP~』を生配信したためです。
――昨今、出演した漫才師による審査員批判など、場外乱闘のほうが話題になりがちな『M-1』ですから、興味を引いたでしょうね。「嵐」「M-1」という、もともと強いコンテンツに「活動休止前のドキュメント」「最速反省会」をかけ合わせるなど、見せ方にも工夫を凝らしていますね。
フリマアプリは2強から3強の時代に
日影 年末の話をしてきましたが、10~12月全体で見れば「App Ape」で10~11月にもっともユーザー数を増やしたアプリは「PayPayフリマ」です。これは決済サービス「PayPay」が始めたフリマアプリで、10月にリリースされました。フリマアプリはそれまで「メルカリ」と「ラクマ」の2強でしたが、そこにZホールディングス傘下の「PayPayフリマ」が入る三つ巴の状態になりました。
――現状、「メルカリ」「ラクマ」「PayPayフリマ」のユーザー数はどのくらいになるのでしょうか。
日影 実数は出せないのですが、図3の通りで、比率を見ると現状では「メルカリ」が強いですね。ただ、今後「PayPayフリマ」も伸ばしてくるのではないでしょうか。「PayPayフリマ」はQR、バーコード型のモバイル決済を牽引してきた「PayPay」がすでにありますから。
――単純に「フリマアプリとしての使いやすさ」という競争以外にも、決済手段がどこまでほかでも流用できるかという「サービスの大きさ」も問われているんですね。こういったアプリをあまり増やしたくない人にとっては、「いつも使ってる楽天にまとめたい」というニーズはあるでしょうね。
日影 ちょっと極端な意見ではありますが、アプリ業界では昨今「人が集まっているところは何をやってもうまくいく」とも言われています。ユーザーが集まらなければ、どんなにいいサービスでも何も始まらないと。
「スマートニュース」のアプリも、人が集まったからこそ、クーポンなどほかのサービスを展開する余地が生まれたんですよね。「メルカリ」も、あれだけ人がいたからこそ「メルペイ」という決済手段を展開することが可能になりました。「どのくらいのユーザーに使われているのか」ももちろん重要ですが、それ以前に「そもそもユーザーがどのくらいいるのか」がより重要になってきたなと思います。
――「質より量(ユーザー数)」がなくちゃ始まらないと。
日影 その最たる例が「PayPayフリマ」のZホールディングスとLINEの統合ですよね。数を取らないとダメだという強い危機感があるのでしょう。数があるからこそ、施策を打つ余地がある。数があるからこそ、サービスの価値を高める余地も生まれてくるんですよね。
「フリマアプリでは質より量」という話をしてきましたが、一方で、冒頭に挙げた動画配信アプリでは「いいコンテンツを出せばヒットする」という機運も同時に高まっていることがわかります。アプリの見方には、本当にさまざまな尺度があります。
――「大勢がいる場所でサービスを提供する」も「いいものをつくる」も、どちらかだけが正解ではないですよね。利用者としては、事業者が競い合い切磋琢磨してくれるいい環境ともいえますが、事業者側にしてみたら、これはなかなかシビアですね。
後編も引き続き、日影氏にゲームアプリ「ドラゴンクエストウォーク」人気の背景などについて、話をうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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