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【コロナ】JALとANA、事実上の休業状態に…航空業界、未曾有の経営危機に直面

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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羽田空港(「Getty Images」より)

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界の航空業界を直撃している。人々の移動が抑制され、旅客数は大幅に減少している。それに伴い、世界の航空業界の業況が急速に悪化している。今後、国内外の旅客需要がどの程度落ち込むか見通しが立たない。航空各社の危機感は日に日に高まっている。航空業界は、これまでに経験したことがないほどの異常な事態を迎えているといえる。

 航空旅客需要は、世界経済全体のGDPの変化に大きく影響される。リーマンショック後、日本の航空業界はかなり厳しい環境に直面した。2010年には日本航空(JAL)が会社更生法の適用を申請し、経営破綻に陥った。その後、世界経済が緩やかに回復し、2012年12月から日本の景気は回復局面に移行した。その中で、日本への外国人観光客などが大幅に増えたことなどが、ANAをはじめ国内航空業界の回復を支える大きな要因となった。

 現在、そうした動きが急速に止まり始めている。5月の連休、夏休みの航空旅客需要がどうなるかは読めない。今後の感染動向によって、ANAの事業環境が想定される以上に不安定化する可能性は排除できない。そうした不確実性に同社がどう対応するかは、国内経済全体の先行きを考える上で重要と考える。

リーマンショック後のANAの業績動向

 ANAをはじめとする航空各社の業績は、世界経済全体の動向から大きく影響される。端的に、世界経済全体で景気が良い場合、業績は上向く。反対に、景気が減速すると、業績には下押し圧力がかかることが多い。まず、この基本的なポイントを確認しよう。

 2008年9月のリーマンショック後、世界経済の成長率は大きく低下した。2009年、世界経済全体のGDP成長率はマイナス0.075%に落ち込んだ。それとともに世界各国で企業収益と人々の収入が減少した。

 世界全体で海外出張や海外旅行に出かける人が大幅に落ち込んだ。それが、航空旅客需要を低迷させた。ANAの業績は悪化し、2010年3月期の営業損益は542億円の赤字に落ち込んだ。その後、中国の4兆元(当時の邦貨換算額で57兆円程度)の景気対策や、米国経済の緩やかな持ち直しに支えられ、世界経済は徐々に回復した。それが、ビジネスや観光目的でのエアライン利用客の増加を支えた。

 世界経済全体が上向く中、ANAは国際線の拡大を進めることによって業績を拡大させた。同社の旅客数合計に占める国際線の割合は、2009年3月期の9%から2019年3月期には16%にまで上昇した。見方を変えれば、ANAは経済のグローバル化への対応を進めることによって業績の拡大を実現した。

 具体的には、わが国が観光を成長戦略の一角に位置付け、中国、韓国、台湾などを中心に外国人観光客が増加したことがある。2017年4月、ANAはインバウンド需要の取り込みなどを目指してLCC(格安航空会社)であるピーチ・アビエーションへの出資比率を引き上げ、連結子会社とした。また、中国の需要など海外の要因に支えられて日本経済が緩やかに回復し、ビジネスや旅行目的でエアラインを利用する個人も増えた。その結果、2019年3月期、ANAの営業利益は1,650億円に達した。この間、経営再建が進められたJALの業績が改善したことも併せて考えると、航空業界の収益は各社の事業戦略に加え、世界経済全体の動向に大きく左右されることがわかる。

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