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ゼロックス、富士ゼロックスからの複合機調達終了へ…キヤノンら日本勢に供給を打診か

文=編集部
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富士ゼロックス株式会社 HP」より

 事務機器業界で“将棋倒し”さながらに陣営づくり見直しの動きが出てきた。

 富士フイルムホールディングス(HD)と米ゼロックスの合併が、著名な投資家カール・アイカーン氏ら米ゼロックスの大株主の反対で失敗したことが引き金となった。富士フイルムHDは2019年11月5日、米ゼロックスが持つ富士ゼロックス株式25%を2500億円で買い取り完全子会社とした。これで、米ゼロックスとの57年間に及ぶ合弁事業は解消した。米ゼロックスに対するOEM(相手先ブランドでの生産)供給は当面維持するが、近い将来、米国で富士フイルムHDの権益がなくなることになりそうなのだ。

 21年に期限を迎える事務機の販売地域や商標の使用について定めた契約を米ゼロックスが更新しなかった場合、ゼロックスブランドを富士フイルムHDは使えなくなる。アジアでも両社は競合関係となる。米ゼロックスは富士ゼロックス以外から製品を調達してゼロックスのマークをつけて販売することになる。長年にわたり築いてきたブランドを失うことは致命的だ。富士フイルムHDが合弁解消で被った打撃は、予想以上に大きかった。

ゼロックス、HPへの敵対的TOBを断念

 米ゼロックスは富士フイルムHDとの合弁解消を発表した翌日の19年11月6日、米パソコン・プリンター大手ヒューレット・パッカード(HP)に買収を提案した。富士ゼロックス株の売却で得た2500億円を、これに充てる。買収額は約335億ドル(約3兆6000億円)と巨額だ。HPの取締役会は「評価が低すぎる」として買収案を拒否したものの、統合には含みを持たせた。

 この買収は、米ゼロックスと米HP、両社の株を持つカール・アイカーン氏が画策したとされる。ペーパーレス化が進み、オフィスなどの印刷需要が減るなか、企業向けの大型機器を主力とするゼロックスとプリンターなど個人向け小型モデルに強みを持つHPの統合は、相互補完でき、メリットがあるとされている。

 だが、時価総額がゼロックスの4倍以上のHPの買収は難航。買収の金額をめぐり折り合いが付かなかった。HPは20年2月下旬に3年で総額160億ドル(約1兆7000億円)の株主還元を発表して、ゼロックスの動きを封じる手を打った。これに対してゼロックスは3月2日、買収額を約350億ドル(3兆8000億円)に引き上げ、TOB(株式公開買い付け)で過半数の取得を目指すとした。HPの株主総会で現経営陣の入れ替えを提案する構えだ。TOBの期間は4月21日まで。HPの取締役会は買収提案に反対しており、敵対的TOBとなった。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けてNYダウは暴落。米国株は全面安となりHPの株価はゼロックスの買い付け価格を下回る。ゼロックスがHPの株主から持ち株を買い付ける絶好のチャンスと考えたとしても不思議はない。HPはゼロックス側が株式を20%まで買い占めた時点で、既存株主に新株を割り当てる買収防衛策「ポイズンビル(毒薬条項)」の発動を決めた。TOBが成立するかどうかは不透明で、HPが4月をめどに開く株主総会までもつれる可能性が強まった。

 ところが急転直下、ゼロックスはHPの買収を断念した。ゼロックスは3月31日、HPへの敵対的TOBを撤回した。1株24ドル(約2600円)で買い付けていたが、足元のHPの株価は17ドル台まで下落。買収に踏み切れば、時価より高い株価でHPを取得することとなり、1兆円ほどの「のれん代」が発生する可能性が出てきた。

 ゼロックスは3月31日、「マクロ経済と市場の混乱で買収計画を継続できない環境になった」と撤回を申し出た。ゼロックスは米国の大手銀行やみずほフィナンシャルグループなどから総額240億ドル(約2兆6000億円)の融資の約束を取り付けていたが、コロナ危機の拡大で自社の株価も5割近く下落。「M&Aどころではなくなった」(アナリスト)。

キヤノン、ゼロックスとHPの統合を牽制

 米ゼロックスによる敵対的TOBの過程で、日本のライバル企業の水面下の動きが関心を集めた。キヤノンの御手洗冨士夫会長は3月初旬、「ゼロックスによるHPの買収が成立した場合、HPが販売するプリンターに欠かせない基幹部品の供給を停止する」との意向を表明した。キヤノンとHPは提携関係にある。HP向けの売り上げは、キヤノン全体の売り上げの14%近くを占める主要取引先である。それなのに、「35年にわたる協力関係を終了する」と衝撃発言したのはなぜか。

 ゼロックスの大株主である「もの言う株主」のカール・アイカーン氏に対する不信感が、御手洗氏の発言の底流にあるとされる。アイカーン氏は富士フイルムHDとゼロックスの合併を破談させ、ゼロックスによるHPの敵対的買収を仕掛けた、陰の主役といわれている。TOBが成立してHPがゼロックス傘下に入った暁には、HPの取締役は総入れ替えとなる。

 TOBが成立すれば、単純合算でキヤノンの2倍の7兆円規模の売上高を誇る巨大企業が誕生する。圧倒的なシェアを握り、値下げ圧力を強めてくることは目に見えている。御手洗会長は「HPの経営幹部と信頼関係を築いてきたが、一朝一夕に同じ関係は築けない」と語った。

 御手洗氏の発言には、ゼロックスのTOBを牽制する狙いがあったとされる。連結売上高の14%を占めるHP向けの部品供給を止めた場合、キヤノンの業績への影響は小さくない。だが、それ以上にHPが受ける打撃は大きい。HPのプリンターは世界で約半分のシェアをもつ主力商品で営業利益全体の6割をプリンターが占めているからだ。結果的にキヤノンがHP経営陣の援軍を買って出たという構図になった。

ゼロックスは新しい調達先の確保に動く

 キヤノンがHP向けの部品供給を止めた場合、HPはプリンター事業で新たな提携先を探す必要があった。ゼロックスも自身の調達先の見直しに着手している。ゼロックスは、富士ゼロックスから、今後5年間製品供給を受けるが、その後は解消する方向とされているからだ。

 複写機・複合機は日本勢が世界シェアを独占している。リコー、キヤノン、富士ゼロックス、コニカミノルタ、京セラが5強だ。

「富士ゼロックスの代わりに複写機を供給してくれないか」。米ゼロックス幹部は日本の事務機器大手にこう頼んで回っているという。「ゼロックスの要請にキヤノンは取り合わず、ほかの国内大手が新たに供給する動きも、まだ表面化していない」(関係者)。

 富士ゼロックスが米ゼロックスへの製品提供を止め、キヤノンがHPへの部品供給を停止すれば、残るのは3社だ。リコー、京セラ、コニカミノルタのいずれかが「漁夫の利」を得ることになるかもしれない。

(文=編集部)

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