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なぜ『鬼滅の刃』は4000万部越えの驚異的ヒットに?非マンガファンも虜にさせた秘密

文・取材=後藤拓也/A4studio
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『鬼滅の刃』(「Amazon HP」より)

 吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)による「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載マンガ『鬼滅の刃』シリーズの単行本累計発行部数が、2月4日に発売された19巻をもって、4000万部を突破したとして、話題になったのは記憶に新しい。

 大正時代を舞台に、家族を鬼に殺され、さらに妹が鬼に変貌してしまうという過酷な状況に置かれた主人公・竈門炭治郎が、妹を人間に戻すために鬼と戦っていく姿を描く同作。現在、社会現象と評されるほどに話題を集めているが、その大ヒットのきっかけをつくったのはアニメ化だったようだ。

 アニメ放送開始前、2019年2月時点でのシリーズ累計発行部数は、約350万部程度。しかし、アニメ放送が終了した9月末時点には、その売上を約1200万部にまで伸ばしており、前述したとおり現在は4000万部突破という快挙を達成。ここ1年数カ月で10倍以上の発行部数に増加したことになる。アニメ化によって、原作マンガの部数が伸びるのは珍しいことではないが、アニメ放送終了後にここまでの伸び率を示したのは極めて例外的なヒットの仕方だと言えるだろう。

『鬼滅の刃』がここまで人気となっている理由はどこにあるのだろうか。

 そこで今回は、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な視点でアニメを考察・研究しているアニメウォッチャーで、『鬼滅の刃』シリーズにも精通している小新井涼(こあらい・りょう)氏に、同作が大ブームを巻き起こしている要因を分析してもらった。

わかりやすく言えば『進撃の巨人』以来のヒット作

 近年、SNSなどを通じてお祭り状態のように盛り上がる、いわゆる“バズる”アニメは、オリジナル作品の『けものフレンズ』や、『おそ松くん』を原作に大胆アレンジをした『おそ松さん』などが中心となってきた。『鬼滅の刃』のような原作に忠実にストーリーを追うアニメ作品として、「こういうふうに盛り上がったのは『進撃の巨人』以来かもしれません」と語る小新井氏に、まずはシリーズ人気を支えているファン層を教えていただいた。

「初めに人気に火がついたのは、20代以上の女性たちの層という印象があります。コスプレなどのファン活動から人気が拡大していき、一つのブームになっていきました。ただし、これは『鬼滅の刃』シリーズの珍しいところなのですが、女性層にとどまらず男性層にもファンが増えていき、現在では一般層までが興味を持ち、手を出し始めています。コアなアニメファン層よりも母数としては多い、普段マンガやアニメを見ない方々まで巻き込んでいる状態だと思いますね」(小新井氏)

 気になるのは、マンガやアニメに普段はそれほど親しみのない人々までもが、熱中している理由だ。その理由を小新井氏に尋ねたところ、「AKB48のような大型アイドルグループ」を例に解説してくれた。

「大人数のグループであれば、誰か一人は好きになれる人がいるように、誰が見ても必ず一つは刺さるところがある、さまざまな層に刺さるものがちりばめられているというのが、幅広い層に受け入れられている要因なのではないでしょうか。実際、主人公が属する『鬼殺隊』の同期隊士たちや、『柱(はしら)』と呼ばれる『鬼殺隊』の最高位に立つ剣士たちなど、多数の人気キャラが存在し、ファンたちは自分の“推し”を決めていることが多いのです。

 また、ジャンプ連載作品のテーマとなっている『努力・友情・勝利』も『鬼滅の刃』ではしっかりと描かれているので、王道の少年マンガ好きな方ももちろん好きでしょう。加えて、その3つが多面的に描かれているんです。努力であれば、一生懸命汗をかくようなスポ根的な努力だけではなく、黙々と刀を研ぐような堅実な努力。友情であれば、仲間同士の絆といったものだけではなく、人と人との縁(えにし)のような人情的な友情。勝利であれば、ただ鬼に勝ったということだけではなく、倒された鬼も実は被害者で、主人公たちに倒されることによって、逆に救済されるといった側面が描かれています。こうした描写によって、単なる『努力・友情・勝利』であれば興味を持たなかったであろう層にも、支持される作品となっているのではないでしょうか」(小新井氏)

ここまでの大ヒットの熱量を維持させていくためには?

 ほかにも、シリアスな作品でありながら随所にギャグがちりばめられていたり、キャラクターが魅力的だったりと、さまざまな魅力を持っている同作。アニメ化に際しては、もともとアクションやバトルを描くことに長けたスタッフが集められ、小新井氏曰く「映画館で見たいなと思うほど」のクオリティをテレビアニメで実現していたという。

 とはいえ、それだけでコミックスの売上がここまで伸びるものだろうか。

「コミックスが売上を伸ばした理由の一つは、アニメで『鬼滅の刃』シリーズを知った人たちのなかに、アニメを見て物語を追うのではなく、コミックスで追い始めた人がいたからではないでしょうか。アニメ放送中に、後追いで単行本を読み始め、すぐ最新刊まで追いついたという方もいらっしゃいました。シリーズを追う選択肢の一つとして、コミックスが選ばれたのだと思います。さらに、アニメがとても魅力的だったので、アニメ最終回の続きが見たい、アニメ化されていないストーリーを読みたいということで、シリーズの途中から単行本を購入し始めたという人もいたはずです。

 またアニメファンは、一つの作品にハマると、隅々まで知りたくなってしまうという性分があります。本当にハマった人は、アニメだけでは満足できず、コミックスにしか描かれていない情報や、アニメではカットされた場面といったすべてを知りたいと思って、単行本を買い求めたことでしょう。現在、『鬼滅の刃』シリーズの小説版もかなり売れているのですが、それも同じ要因だと思います」(小新井氏)

 最後に、これからの『鬼滅の刃』シリーズのメディア展開について、予想していただいた。

「ゲーム作品のリリースが2本、すでに発表されていますし、劇場版作品が今年10月16日公開予定であることも発表されていました。ここまでの人気作となったので、映画公開以降も新たな展開があるだろうと予想していたのですが……新型コロナウイルスのこともあって、少し読めなくなってしまいましたね。

 事態が落ち着いて、ファンの熱がある内に映画が公開できれば、現在佳境を迎えている原作を元にして、アニメシリーズの第2期も作られることでしょうし、この熱量も維持されていくのではないでしょうか」(小新井氏)

 さまざまな魅力を持ち、誰にでも一つはハマれるポイントがあるという『鬼滅の刃』シリーズ。これまで同作をスルーしてしまっていたという方には、ぜひこれを機にアニメやマンガに触れてみてほしい。

(文・取材=後藤拓也/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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