もしも外出先でまとまった空き時間ができてしまったら、どこで過ごすのが得策だろうか。カフェで一息つくのもいいし、晴れた暖かい日なら、公園に行くのもいい。だが、夜遅くまで飲みすぎて終電を逃してしまい、始発が動くのを待たなければいけないときなどは、だいぶ選択肢が限られてくるだろう。
24時間営業の飲食店やカラオケ店もあるにせよ、静かな場所で横になり、なおかつ安く済ませたいと思ったら、ネットカフェが妥当なところかもしれない。大半の店舗は「ナイトパック」など、夜を明かすためのお得な割引プランを用意しているからだ。
また、軽食の提供やシャワーの貸し出しを行っている店舗も珍しくないし、そもそもネットカフェなので、パソコンを使った作業も可能。始発待ちのみならず、ちょっと休憩したいときや、集中して仕事したいときなど、さまざまなシチュエーションで重宝するのである。
とはいえ、ネットカフェにも多くのチェーンがあり、どの店舗に入ろうか、迷ってしまう人もいるのではないか。そこで今回は、ネットカフェ事情に詳しいライターの宮元大地氏に話を聞き、オススメの店舗を教えてもらった。
「快活CLUB」と「カスタマカフェ」はフリーフードが強み?
「私はライターという職業柄、よく旅先で飲食店の食べ歩きレポートなどをしており、ネットカフェを作業スペースや宿代わりにする機会が少なくありません。ときどき、そのエリアにしか展開していないであろうローカルなネットカフェに出くわすこともありますが、結局は駅前や繁華街に出店している大手チェーンのほうが使い勝手、アクセスともに良好です。
私が頻繁に利用しているチェーンは、まず全国に436店舗(2020年1月現在)展開する『快活CLUB』。ネットカフェや漫画喫茶をひっくるめて“複合カフェ”という呼び方をするのですが、快活CLUBは約368億円もの年間売上高を記録しており(2019年3月期)、複合カフェ業界で堂々の1位です。運営元は紳士服販売で有名なAOKIグループで、むしろ複合カフェ事業のほうがファッション事業より順調なのでは?という話は、たびたび報じられています。
そんな快活CLUBのコンセプトは、“バリ島の高級ホテル”というもの。日本では2007年に“ネットカフェ難民”という言葉が新語・流行語大賞のトップテンに入選しましたし、ネットカフェに暗い印象を抱いている人もいそうですが、快活CLUBの明るくて清潔感のある空間づくりは、そういったネガティブイメージを払拭しています。他店に比べ料金設定は高いものの、それに見合った居心地ですね。
私が快活CLUBで特に評価したいのは、午前6時~10時半まで実施されている無料モーニングサービス(未実施店舗もあり)。細切りポテトとパンが食べ放題なのですが、このうち細切りポテトは、今年1月に放送された『マツコの知らない世界』(TBS系)の『チェーン店フライドポテトの世界』という企画で絶賛されていました」(宮元氏)
ネットカフェのほとんどでは、仕切りがない「オープン席」、仕切りがあって個室になっている「ブース席」のどちらかを選んで入店することになり、一般的にはオープン席のほうが安価。宮元氏は休日の朝、快活CLUBのオープン席に自分のノートパソコンを持ち込み、無料の細切りポテトを食べながら作業するのが好きだという。
「昨今のネットカフェは、フリードリンクでWi-Fiも電源も完備というのが当たり前です。コストパフォーマンスを考えると、快活CLUBのようにフリーフードがある店舗は、頭一つ抜きん出ているのではないでしょうか。
その点で私が最近注目しているのは、首都圏に10店舗以上を展開する『カスタマカフェ』。歌舞伎町店(東京都新宿区)や池袋西口店(東京都豊島区)といった一部の店舗限定ではありますが、炊き込みご飯や卵かけご飯、カレーが24時間食べ放題となっており、それを知らずに初めて訪れたときは目を疑うほど驚いたものです。
なお、カスタマカフェは鍵つきの完全個室になっており、作業をするのにも睡眠を取るのにもうってつけです。快活CLUBと同じく料金設定は若干高めですが、夜はほぼ満席になっている状況を見ると、ビジネスホテルのような需要があるのだとわかります。
他には『アイ・カフェ』の一部店舗でも、予期せずしてフリーフードに出会ったことがありますね。例えば天王寺アポロ店(大阪府大阪市阿倍野区)は7時からトースト、11時から日替わり炊き込みご飯……といった具合に、時間によって提供メニューを変えていました。アイ・カフェは全国に『サイバック』や『まんがねっとラウム』などのグループ店が点在しており、メールマガジンに登録しておくと、月に1回半額クーポンを送ってくれるのも高ポイントです」(同)
シャワーやVR機器、Adobeソフトの利用が無料なネットカフェも
もっとも、「フリーフードを導入している店舗は、まだまだ全国的に少数派」だと宮元氏は語る。それ以外だと、何をネットカフェ選びの判断基準にするべきなのだろうか。
「ネットカフェに泊まり、朝そのまま出勤しなくてはいけないときなどは、どうしてもシャワーを浴びたくなると思います。チェーンのネットカフェなら大抵はシャワーを借りられますが、多くの店舗では席料に加えて別料金が発生したり、『個室○時間以上の利用でシャワー無料』という条件つきだったりするので、注意が必要です。
そんななか、全店舗でシャワーが無料かつ、席料も安めな『まんが喫茶マンボー』は貴重な存在ではないでしょうか。ただし、タオルやシャンプーといったアメニティは有料ですから、自分で持参するか、事前に100円ショップなどで調達しておくと安上がりですね。ちなみに、快活CLUBでは全国の半数近くの店舗がシャワー・タオル使い放題となっており、さすがは業界1位のホスピタリティです。
あとは個室のブース席でも、リクライニングチェアの部屋、マッサージチェアの部屋、マットが敷かれた部屋など、店舗によって複数の種類があります。睡眠目的なら当然マットの部屋がベストですが、夜は真っ先に埋まってしまうため、周りにネットカフェが何店舗もある場合は、電話で各所の空席状況を確かめるといいでしょう。私の経験上、リクライニングチェアでも眠れはするものの、やはり翌日の身体に響きますので……」(同)
最後に、「こんな使い方をするのも面白い」という、ネットカフェの意外な一面を教えてもらった。
「ネットカフェのパソコンは動画配信サービスが充実しています。また、『DiCE』ではVR(バーチャル・リアリティ)機器を無料でレンタルでき、個室で人の目を気にせずVR体験できるというのは、まさにネットカフェならではのメリットですね。
さらに、アイ・カフェグループの一部店舗では『Illustrator』や『Photoshop』といった高価なAdobeソフトを、席料のみで使わせてくれます。これは漫画喫茶にもいえることですが、『自分で買うほどではないけれど少し興味がある』程度のコンテンツを気軽に試す場として、ネットカフェは大いに役立つのです」(同)
個々のニーズに合わせ、各ネットカフェは、年々そのサービスを多様化させてきているのかもしれない。次はどのようなチェーンが頭角を現すのか、期待したいところだ。