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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国、香港国家安全維持法で世界中を摘発対象に…「戦争の理由」を得た米国が制裁強化へ

文=渡邉哲也/経済評論家
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香港返還23周年の記念式典で演説する林鄭月娥行政長官(写真:AFP/アフロ)

 中国による「香港国家安全維持法」が6月30日夜に施行された。これは、習近平指導部が香港の統制を強める目的で制定された法律で、中国共産党への批判や香港独立などの主張を違法とするほか、香港に中国政府の出先機関である「国家安全維持公署」の設置などを定めている。また、香港の法律より優先されることになっており、香港に2047年まで認められていたはずの「一国二制度」を崩壊させるものであることは間違いない。

 これを受けて、香港では民主派によるデモや集会が行われ、すでに同法違反の10人を含め、合計370人以上が逮捕されている。

 同法は「国家分裂」「国家政権転覆」「テロ活動」「外国・境外勢力と結託して国家の安全に危害を加える」の4つの行為を処罰の対象としているが、施行に合わせて条文が公開されたことで、新たな問題点も明らかになってきた。

 たとえば、第38条には「香港特別行政区の永住者の資格を有しない者が、香港特別行政区の外で香港特別行政区に対してこの法律に基づく罪を犯した場合に適用される」とある。つまり、外国人が海外で行った行為も処罰の対象としており、これは他国の主権を侵すことになるのではないだろうか。そのため、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は「すべての国に対する侮辱」と非難している。

 また、国家分裂罪に関しては、ウイグル、チベット、台湾の独立や中国との分離に関する言動も「武力を使用する、あるいは使用すると恫喝する、しないにかかわらず」とされており、外国人がウイグルやチベット、台湾の独立問題についてインターネットなどで支持を表明しただけでも、香港渡航時に摘発の対象となり得るわけだ。

 香港国際空港では、トランジット(乗り継ぎ)でも一旦入境しなければならないケースが多く、単なる乗り継ぎも危険ということになる。また、香港で活動する外国人駐在員などが常に危険にさらされることにもつながる。中国では、司法の運用に対する透明性はないに等しい。当局の恣意的な検挙や摘発により企業の社員などが逮捕される可能性が常にあり、事実上の人質となってしまいかねないのだ。

 また、企業や団体も摘発の対象となるため、違反すれば操業停止などに追い込まれることになる。このような状況で正常な企業活動を行うことができるのかどうかは、考えるまでもないだろう。

 1997年にイギリスから中国に主権が返還された香港は、中国と西側諸国をつなぐ窓口としての役割を果たしてきており、世界屈指の国際金融センターとして、物流や金融を支えてきた。しかし、中国は自らその地位を破壊してしまったといえるだろう。

英国は海外市民の受け入れを大幅緩和

 そして、香港問題に関して当事国であるイギリスも動き始めた。香港に居住する約290万人の「英海外市民」について、ビザなしでイギリスに滞在できる期間を6カ月から5年間に延長し、市民権の取得を促す緩和策を発表した。

 イギリスは植民地支配の歴史から、海外市民の存在を認めている。これは、イギリスの市民(国民)ではないが、イギリス連邦の市民(国民)として、イギリスおよびイギリス連邦諸国での活動を認められている人たちのことだ。そして、対象者には海外市民としてのパスポートも与えられている。

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