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巨額税金投入の“ツタヤ図書館もどき”、不祥事続出のCCCを「優れた事業者」判定の怪

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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宇部市発表基本計画より

 山口県宇部市は今年6月、レンタル大手TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と連携協定を締結した。百貨店撤退後の古いビルを改修して、ブックカフェやこどもプラザが入る複合施設の計画を進めている。

 しかし、古い建物の改修にもかかわらず事業費約30億円といわれる計画の中身には、首をかしげる市民も少なくない。全国で運営する“ツタヤ図書館”で不祥事を連発し、昨年2月には基幹事業であるTSUTAYAの宣伝が景品表示法違反として消費者庁から1億1753万円の課徴金を課せられたCCCを「優れた事業者」として選定するのは、おかしいとの批判も根強い。

「ツタヤ図書館もどきをつくるのか?」と疑問視する声が市民からあがるなか、この事業が進められてきた背景には、さまざまな人の思惑と利害が複雑に交錯していた。

 前回記事では、この基本計画に関する企画提案者にCCCが選定されたプロセスを詳しく見てきた。今回は、事業のスタートラインまで遡り、この不可解なプロセスを検証してみたい。

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宇部市発表基本計画より

情報公開を拒否した宇部市

 宇部市が基本計画の企画提案者にCCCを選定した背景として、ひとつ興味深い点が浮かび上がってきた。それは、今年8月末の基本計画案策定の前に、すでに施設の基本構想が作成されており、その基本構想の策定を手掛けたのがアール・アイ・エー(RIA)であると市の担当部署が認めたことだ。

 RIAといえば、CCCのフラッグシップ(旗艦店)である代官山蔦屋書店とその周辺一体であるT-siteの開発を手掛けるなど、CCCと関係の深い建設コンサルタントだ。

 今年6月、CCCが全国で6番目となるツタヤ図書館をグランドオープンした南海電鉄・和歌山市駅前一帯の再開発を手掛けたのもRIAであり、和歌山市では同社が計画立案当初からツタヤ図書館誘致の青写真を描いていたことが、最近筆者が独自入手した資料から判明している。

 下の図は、CCCが和歌山市から指定管理者として正式に選定される3年前の関係者会議で、RIAがツタヤ図書館を成功事例と紹介している場面だ。

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平成26年9月8日開催「南海和歌山市駅周辺活性化調整会議」より

 宇部市でも、水面下で似たようなことが行われていたのではないかという疑念を持たざるを得ない。

 そこで宇部市の担当部署に、CCC及びRIAの選定に関して詳しい経緯を教えてほしいと依頼したところ、「議会開催中で忙しい」として回答を引き伸ばされたたあげく、「宇部市の情報公開条例では、市外の者は請求できない」とシャットアウトされてしまった。

 施設改修にかかる費用については、国から全体の42%(30億円なら12.6億円)もの補助金を受ける計画にもかかわらず、市外の者には一切情報開示しない宇部市の姿勢は、果たして適切といえるのだろうか。

宇部市がビルを取得した経緯

 さらに調べていくと、そもそも宇部市が昨年、井筒屋が閉店したビルを買い取ったときの経緯からして、不可解な出来事の連続だったことが判明した。

 井筒屋が宇部店の完全閉店を発表したのは、2018年7月末のこと。地方都市の衰退を象徴する中心市街地での百貨店閉店は、地元経済に与える影響が大きい。そのため、すぐに久保田后子市長が営業継続を要請したと伝えられているが、井筒屋の閉店の意向は変わらなかった。

 中心市街地の再開発ともなれば、事業計画を立てて、関係する事業者との調整だけでも何年もかかり、その間、不動産は“塩漬け”になるイメージがあるが、幸いなことに宇部市の場合はそうはならず、この後、事態はとんとん拍子に進んだ。

 同年10月、地元商工会議所の安倍研一会頭が、宇部井筒屋の土地建物を買い取ることを表明。費用は会員企業からの寄付によってまかなうとした。これによって一件落着とみられていたが、翌年3月末、事態は急展開を迎える。

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