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日米マクドナルド、歴史的“立場逆転”…苦境の米国マック、好調の日本マック株売却の事情

文=編集部
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マクドナルドの店舗

 米マクドナルドがグループ会社を通じて保有する日本マクドナルドホールディングス(HD)株の一部を売却した。マクドAPMEAシンガポール・インベストメンツピーティーイー・リミテッドが8月20日付で財務省に変更報告書(5%ルール報告書)を提出してわかった。共同保有者のマクドナルド・レストランツ・オブ・カナダ・リミテッドと合わせて日本マクドナルド株の保有比率は49.99%から46.83%に低下した。1971年に日本マクドナルドを創業して以来、本格的な株式売却は初めてである。

 米マクドナルドは7月28日、20年4~6月期決算の電話会見で、「日本マクドナルドHDの保有株式の一部を売却する」方針を明らかにした。カナダとシンガポール法人を通じて保有する49.99%のうち、15%程度を売却する。米本体は筆頭株主として残り、特別決議への拒否権を持つ3分の1以上の株式を保有し続けるとしている。

 ケビン・オザン最高財務責任者(CFO)は「日本事業の強固な実績と現地の経営陣への信頼に基づいて、株式を段階的に減らす時期だと判断した」と述べた。35%程度を保有し続けることについては「日本事業へのコミットメントを示すものだ」と語った。

 米マクドナルドは新型コロナ危機を受けて、米国内で200店を閉鎖するなどリストラを進めている。新型コロナ禍でも業績が好調な日本マクドナルドの株を売却し、資金を調達。苦戦する他地域での立て直しを進める。15%すべて売却すれば1000億円近い資金を得られる見通しだ。

15年に米ベインや英ペルミラへの売却を計画

 日本マクドナルドは1971年、藤田田氏が経営する藤田商店と米マクドナルドが折半出資で設立された。2003年、藤田氏が会長を退任し、藤田商店との契約を解消。米本体が主導する経営体制に移った。

 日本マクドナルドは14年の鶏肉偽装問題などを受け、15年12月期まで2期連続で最終赤字に陥った。日本マクドナルドの業績悪化を受け、米マクドナルドは15年12月、ファンドなどへの売却を検討した。米マクドナルドは約5割を握る日本マクドナルド株のうち、発行済み株式の最大33%を売却する方針を立て、投資ファンドや総合商社に打診した。米ベインキャピタル、英ペルミラや三井物産の名前が挙がった。ベインキャピタルはファミリーレストラン最大手、すかいらーくや宅配ピザ大手、ドミノ・ピザジャパンの経営の立て直しに成功した。ベルミラは回転ずし大手、あきんどスシローの再建を手がけた。三井物産は他の総合商社に比べ生活消費関連分野が弱いため、マクドナルドに興味を示したとされる。

 しかし、売却交渉は不調に終わった。持ち株33%相当を1000億円で売却を打診したとされるが、「収益力などから勘案すると高すぎる」(M&Aに詳しいアナリスト)との声が圧倒的に多かった。「せいぜい600億~700億円程度」(同)が国際相場と見なされた。各社が提示した取得価格と米マクドナルド側の条件に大きな開きがあった。

 米マクドナルドは、日本マクドナルド株の売却計画を棚上げにしたが、コロナ禍で米本体の業績が悪化したため、再度、俎上にのぼった。前回は33%を1000億円で売却することを計画した。今回は15%を1000億円で売却する。「一括売却を試みたが、不調に終わったため、市場での売却に切り替えた」(前出のアナリスト)と見られている。「日本株は取引量が少なく、売却に時間がかかる」(オザンCFO)と不満を募らせている、との情報が駆けめぐる。

 前回、決裂した米ベイン、英ペルミラや国内の投資ファンドは日本マクドナルドHD株式の取得に動くのだろうか。前回と今回で決定的に違う点がある。前回は日本マクドナルドHDの業績は最悪だったが、今回は“コロナの勝ち組”といわれるほど業績は好調で株価も上昇している。

持ち帰り需要をつかみ業績は好調

 日本マクドナルドHDの20年1~6月期連結決算の売上高は2%増の1392億円。直営店とフランチャイズチェーン(FC)店を合計した全店売上高は6%増の2820億円で上半期(1~6月)として過去最高だった。営業利益は1%増の147億円で上半期の最高益だ。店舗の改装に伴う損失を計上したため純利益は5%減の91億円となった。新型コロナウイルスで休校や在宅勤務が広がるなか、FC店が多い郊外店が持ち帰り需要をつかんだ。これが既存店の売り上げを底上げした。

【既存店の21年期の四半期動向(前年同期比増分、%)】

       第1四半期(1~3月)    第2四半期(4~6月)

売上高      5.3%                          6.2%

客数                0.5%                        ▲19.7%

客単価              4.7%                         32.2%

(▲はマイナス)

 新型コロナ禍の直撃を受けた第2四半期(4~6月)は、客数が前年同期比19.7%減と大きく落ち込んだが、客単価は32.2%増と急増した。この結果、売上高は6.2%増えた。好調の原因はデリバリーだ。モバイルで注文を受けた商品を配達する「マックデリバリー」の実施店を19年末と比べて220店舗増やし、378店舗(6月末時点)とした。ウーバー・ジャパンが運営する料理宅配の「ウーバーイーツ」に対応する店舗も296店増やして900店となった。その効果が出た。

 米マクドナルドによる株式の売却について、下平篤雄副社長は「米社は徐々に売却すると言っている。現時点で自社株買いは検討していない」と説明した。

(文=編集部)

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