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高橋祐介「楽しいゲームの話だけさせてくれ」

ネガティブな話題先行の『アサシン クリード ヴァルハラ』の素晴らしさを大いに語ろう

文=高橋祐介/ライター、丘ヴァイキング

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 本記事を開いている時点で、ある程度ゲームに興味がある方だと仮定して質問してしまいますが、皆さんは先月発売されたPlayStation 5(以下、PS5)やXbox Series X(以下、XSX)を手に入れ、そのパワーを実感しているでしょうか。それとも、欲しい機種がなかなか手に入らない、興味が湧くゲームがないなどの理由で様子見しているところでしょうか。

 需要に対して供給量が圧倒的に足りない今、そのどちらも正しい選択だと筆者は思います。不当な転売価格で購入して、転売屋を利することだけは避けたいですしね。

 ちなみに以前の記事でも予想していたように、筆者もいつPS5を入手できるかわからない「PS5難民」になってしまいました……。が、XSXはなんとか予約購入でき、発売当日から自由に触っています。新品のPCやスマートフォンなどと同じように、開封したばかりのゲーム機はメニュー画面などの動作もキビキビしていて、やはり気持ちがいいものです。また、スマホアプリなどのように、起動中のゲームを素早く切り替えられる「クイックレジューム」もなかなか便利で、今の時代、当たり前に求められる機能がゲーム機にも備わったことが印象的でした。

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 さて、前回からだいぶ間があいてしまったこの連載ですが、その主な理由は『アサシン クリード ヴァルハラ』(PS5/PS4/XSX/ONE/PC)が楽しすぎて、原稿を書く時間を確保できなかったためです。

 ……というのは半分冗談ですが、『ヴァルハラ』はかなりの傑作で、最後までしっかり遊んでから原稿を書きたいという思いが湧いてしまったのです。「表現規制」に関するネガティブな話題ばかりが先行してしまった本作ですが、ここでは作品自体の素晴らしさ、魅力についてお伝えしていこうと思います。

『アサシン クリード』とは、十字軍の遠征やフランス革命、カエサルの暗殺といった歴史的事件の裏側で展開する、陰謀や冒険を描いてきたアクション・アドベンチャーのシリーズ。ですが、近年の作品は広大な舞台を旅する感覚を楽しめる、オープンワールドRPG的な性質も強くなっています。

『ヴァルハラ』の主な舞台となるのは9世紀後半のイングランド。この時代、現在のノルウェーやデンマークあたりに住んでいた人々(ノース人、デーン人)はヴァイキングとなり、ブリテン島をはじめ、ヨーロッパの沿岸部を荒らし回っていました。

 また、現在イングランドと呼ばれる領域では、いくつものアングロ人やサクソン人の王国がしのぎを削っており、ヴァイキングたちはそこに付け入るかたちでブリテン島に勢力基盤を築いていったと考えられています。

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 と、時代背景の解説から入ると「歴史ものか、難しそう……」と身構えてしまう人もいるかもしれませんが、本作が描くのはいわゆる中世暗黒時代。そもそも正確な資料があまり残っていないこの時代のイングランドを、『ヴァルハラ』は史実を元にしつつも、かなり自由な発想で描いています。歴史に興味がない人にとっては、本作の舞台は「中世ヨーロッパ風のファンタジー」そのものと感じられるはずです。

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 しかも主人公のエイヴォルはヴァイキングで、オーディンを主神とする「北欧神話」に基づいた世界観を持った人物。いわゆる「戦場で勇敢に戦って死ねば、戦乙女によってヴァルハラに導かれ、そこで永遠の宴と戦いに明け暮れる」というアレです。彼の行動原理、発言、そして戦いぶりは、我々現代人から見ればほとんどファンタジー世界の住民のようなものでしょう。それどころか、霊薬を飲んで神話の世界・アースガルズを冒険する(幻視体験ですが)展開まであります。

 本作は、歴史にあまり興味がない方や、『アサシン クリード』シリーズを未経験の方でも、ファンタジーRPGのような感覚ですんなりと入っていきやすいはずです。むしろ、これまで遊んだことのない人にこそ強くおすすめしたい作品だと筆者は感じました。

持たざる者たちの強み

 ちなみにヴァイキングとして暴れまわったノース人やデーン人たちは、もともとはドイツやポーランドあたりに住んでいた人々でした。ですが四世紀後半ごろ、中央アジアから進出してきた騎馬民族に圧迫され、スカンジナビア半島や現在のデンマークといった“辺境”へと追いやられていきます。

 そんな「かつて追いやられた人々」が数世紀後、ヴァイキング船に乗ってヨーロッパ各地を荒らし回り、フランス北部やブリテン島で王朝を打ち立てるほどの力を持っていくのですから、歴史の栄枯盛衰というものは面白いものです。

『ヴァルハラ』の主人公のエイヴォル率いる戦士団(正確には義兄のシグルドが率いているのですが)にも、そんな祖先たちと同じような運命が待ち受けていました。彼らはノルウェーの故郷を半ば追われるような形で、新天地・イングランドにやってきます。

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 エイヴォルの冒険の拠点となる「定住地」には、さまざまな施設をつくり、発展させていく要素があるのですが、そのためにはイングランド各地から物資と原材料を「略奪」してくる必要があります。略奪を繰り返せば繰り返すほど定住地を発展させることができ、『あつまれ どうぶつの森』のように、他の土地から住民が移り住んできたりもします(笑)。

『あつまれ どうぶつの森』といえば、そのキャッチコピーは「何もないから、なんでもできる」ですが、ヴァイキングたちもまた「何もないから、なんでもできる」というわけです。言葉の意味合いは大きく変わってきますが……。

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 そんなわけで、エイヴォルたち戦士団はヴァイキング船(作中ではロングシップと呼ばれます)に乗りこみ、河川を使ってイングランドの各地を襲撃していきます。もちろん、サクソン人たちもただ黙ってやられるわけはなく、まさに血湧き肉躍る、ハック&スラッシュな戦いが繰り広げられます!

 本作の戦闘では、素早い「弱攻撃」と、相手の守りを崩す「強攻撃」を使い分けて戦います。強攻撃は高威力ですが、スタミナゲージを消費するのであまり連発できません。スタミナは弱攻撃を挟むことで回復するので、ふたつをバランス良く使い分けることが大切です。

 防御手段は回避、ガード、受け流しの3種類。受け流しを何度も成功させると相手が体勢を崩して大ダメージを与えるチャンスが発生するため、どんどん狙いたいところですが、敵の強攻撃は受け流すことができません。しっかり見極めて対応する必要があります。

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 シンプルながら、しっかりした攻防を楽しめる本作の戦闘。難易度は4段階から選べるので、アクションゲームが苦手な人でもまず困ることはないでしょう。逆に少しプレイして歯ごたえが足りないと感じた人は最高難易度でどうぞ。難易度はいつでも切り替えることができます。

 また戦闘時のアクションや、敵を仕留めたときのビジュアルは、使用する武器やキャラクターの位置関係によって多彩なものが楽しめます。おもに流血に関する自主規制があるとはいえ、筆者はなかなかに「攻めた」絵作りだと思うのですが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。

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 なお、本作における略奪のメインターゲットとなるのは修道院です。9世紀から12世紀にかけて書かれ、後世まとめられた『アングロ・サクソン年代記』によれば、793年にリンディスファーン修道院が襲撃され、そのあまりの実入りの良さにゆえ、それまで散発的に来るだけだったヴァイキングたちが翌年もまたやってきたのだとか……。ただ、794年の襲撃は防衛側も準備を整えていたため、失敗に終わったそうですが。

 確かに、辺鄙な村を襲っても大したものは手に入らないでしょうし、かといって都市は攻略にも手間がかかるわけで、『ヴァルハラ』をプレイするとそのあたりが実感を伴って理解できます。

 ただ、定住地をどのように発展させるかはプレイヤーに委ねられている部分でもあるので、略奪時の犠牲を最低限に抑える「マイルドなヴァイキング生活」を目指してみるのもひとつの遊び方かもしれません(笑)。

近隣勢力との関係を描いた物語

 このように、エイヴォル率いる戦士団は各地で暴れまわるのですが、せっかく来たイングランドから追い出されても困るので、周辺の勢力と軍事同盟を結び、守りを固めていきます。

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 エイヴォルが行く先々の王国や州では、後継者問題、内乱、殺人事件、ラブロマンス(!)などなど、さまざまなゴタゴタが起きており、それらに介入したり、解決することで王族や太守たちに恩を売り、各勢力と同盟を結んでいくことになります。これが本作のメインストーリーに当たるものです。

 各地でのシナリオはそれぞれ完結しており、プレイヤーはある程度自由に、興味のわいた地域を選んで旅することができます。もちろん物語のキーとなる部分では、それまで各地で重ねてきた選択に応じて、熱い展開になったりもするのです(古くからのRPG好きの方は、名作『ロマンシング サ・ガ2』を思い出したのではないでしょうか)。

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 『アサシン クリード』シリーズではおなじみ、歴史の裏側で展開する「隠れし者(アサシン教団)」「古き結社(テンプル騎士団)」による暗闘も描かれはするのですが、本作においてはアクセント程度の控えめな扱いです。作り手側も、PS5やXSXなど次世代機の発売されるタイミングということもあり、新たにシリーズに触れるプレイヤーにも楽しみやすい物語を目指したのでしょう。

 が、先に進めていくとファンにとっても意外すぎる展開もあり、最後まで終わらせた今、シリーズの歴代作品を楽しんできた筆者的にもかなり満足度が高い状態です。まさかあの人とあの人がああなって、あの人があの場所に現れるなんて……。

 また、旅する先々では数々の「絶景」がプレイヤーを待ち受けています。このあたりは4K以上の解像度のテレビやモニター、そして次世代機が真価を発揮する所で、実際に旅行にいったときのような気分でバシャバシャと写真を撮りまくってしまった次第(今のゲーム機は気軽に画面写真を撮ることができ、今回の記事でお見せしているのはその一部です)。さらにマップ画面で、自分の撮った写真だけでなく、他のプレイヤーの撮った写真まで観ることができます。

※インターネットへの接続が必要。

 シリーズのこれまでの作品と同様、いやそれ以上に、史跡や勝景地をめぐるような楽しさを堪能できるわけです。新型コロナの影響で気軽に旅行に行きにくい情勢が続く今、仮想とはいえ「旅」する感覚が味わえたことはとても嬉しいことでした。

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 ……と、作品の魅力をまとめてお伝えするつもりが、まだまだ筆が進んでしまいそうな気配。今回はここまでで区切らせてもらい、次回も『アサシン クリード ヴァルハラ』について書こうと思います。

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高橋祐介/ライター、古ゲー伝承者

高橋祐介/ライター、古ゲー伝承者

フリーランス。ゲーム、アニメに関することが中心ですが、いいもの、好奇心をそそられたものへの雑感など

Twitter:@takahashi_write

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