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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

小林化工の爪水虫治療薬で事故続出、死亡例も…完全に信用失墜、業務停止の可能性も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
小林化工の爪水虫治療薬で事故続出、死亡例も…完全に信用失墜、業務停止の可能性もの画像1
小林化工・清間第二工場(小林化工広報YouTube画像)

 薬の服用に伴う眠気を気にする患者は多く、「この薬は眠くなりますか?」と聞かれることがよくある。クルマ社会の現代、眠気が出れば運転に支障もある。医師や薬剤師は、薬の作用機序(薬が効果を示すメカニズム)を前提に薬の説明をする。作用機序から考えて理論的には眠気が出ない薬でも、個人差がある。そのため、薬の服用に伴い眠気を感じると相談された場合は、生活に支障がなければクルマの運転などを避けて、注意して服用を継続するように促すのが一般的である。

 しかしながら、眠気が出ないと考えられる薬に「睡眠薬」が混入していたらどうだろうか。当然ながら、眠気に襲われる。誰もが「そんなことはあるわけない」と思うだろうが、実際にそんな信じられない事件が起きた。

 小林化工は12月初旬、睡眠薬成分が混入した経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠50『MEEK』」に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリルマザホン塩酸塩水和物が、通常臨床用量を超えて混入していたことが判明したとして各医療機関へ告知、自主回収を行った。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は脳の活動を抑制し眠気がでるだけでなく、過剰摂取すれば呼吸抑制が起き、死に至る危険がある。

 この自主回収は、「クラス1」の回収である。クラス1とは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。自主回収と聞くと、誠意ある対応を行っているという印象を受けるかもしれないが、この対応は遅すぎるくらいで、人の命を左右する薬を製造する企業としての責任を軽んじているとさえいえる。

相次ぐ意識障害

 患者の異変に最初に気づいたのは、医療機関で診療に当たる医師だったという。担当する患者7人が意識障害を起こし、そのうち2人の男性は自動車の運転中で、センターラインのポールに衝突したり、溝に脱輪するなどの事故につながっている。医師は7人に共通する治療として「イトラコナゾール」の服用を行っていたことから、意識障害の原因はイトラコナゾールだと確信し、メーカーへ報告したという。

 小林化工には、それまでにも同錠剤による副作用の報告が寄せられていたが、健康被害という認識に欠けており、その医師からの報告で初めて調査へ乗り出し、さらに多くの被害者がいることが判明するに至った。12月20日時点で被害者数は156人、そのうち自動車などによる事故が21人、救急搬送・入院が34件、死亡2人と発表されている。

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