糖質制限で痩せるか痩せないかは遺伝子で決まる?かえって体重増加や健康被害のリスクも
長引くコロナ渦のストレスで、ついつい食べすぎたり飲みすぎたりで体重が増え、今度はダイエットにも取り組まなければならなくなった人も多いようです。
ダイエット法としては、「糖質制限」が人気です。糖質を減らす分をタンパク質や脂質の摂取によって補うことで、空腹を我慢ぜずに体重を減らすことができる画期的なダイエット法として、多くの人が実践しているようです。また、体重が減るだけでなく、糖尿病などの生活習慣病が著しく改善されたことを紹介する医師の著書もベストセラーとなり、今やスーパーやコンビにも糖質オフや低糖質の食品が溢れています。
筆者自身は、これまでにいろいろな方法で10kg以上の減量経験がありますが、いつの間にか元通りになってしまうので、もう太る体質なのだと、半ばダイエットは諦めかけていました。しかし、糖質制限は空腹の我慢がいらない夢のようなダイエット法と知り、6カ月ほど実行してみました。
ごはんやパン、麺類など主食から摂取する糖質は極力減らし、その分のエネルギーを野菜やナッツ類、肉類、チーズ、魚類などのおかずから多めに摂りました。アルコール類も糖質の殆どない焼酎やウイスキーハイボールに切り替えました。ごはんや麺類を食べられない物足りなさや、好きな日本酒を飲めない不満は多少ありましたが、なんといってもダイエットに付き物の空腹感と戦うストレスがほとんどないので無理なく続けることができました。
しかし、6カ月後の体重に変化はありませんでした。特に大きな数値目標を掲げていたわけではないのですが、それでも2~3kgは楽に減るだろうと思っていたのでがっかりしました。
遺伝子検査を受けてみた
そもそも、空腹を我慢しないで体重が減るなんて、そんな都合が良い話に乗った自分が馬鹿だったとも思いましたが、糖質制限で体重が減り、血圧や血糖値などの検査数値が改善されたとする体験者が多くいるのも事実なので、今ひとつ釈然としません。
そんな時に、比較的安価で遺伝子検査が受けられることを知り、早速申し込んでみました。3週間後に届いた結果を見て、体重が変化しなかった理由が判明しました。
私は糖質制限ダイエットには不向きな遺伝子を持っていたのです。私が受けた、肥満に関する遺伝子検査は、三大栄養素に即した「糖質代謝タイプ」「タンパク質タイプ」「脂質代謝タイプ」の3つのタイプのなかで、どれに当てはまるのかを解析してくれるサービスです。
その結果、私の遺伝的体質は脂質代謝タイプにタンパク質タイプも少しあるとわかりました。報告書を読んで一番驚いたのが、次の一文です。
「糖代謝リスクは標準で、炭水化物や甘いものなどを食べると太りやすい遺伝的体質ではない」
つまり、糖質制限ダイエットは不向きなのです。さらに、「脂質代謝リスクが高く、揚げ物やクリームなどを食べると太りやすい遺伝的体質である」ということで、私は「脂質制限ダイエット」が向いていたのです。
加えて、「タンパク質リスクがやや高く、十分にタンパク質を摂取しなければ、筋肉不足による肥満になりやすい遺伝的体質」でもあったのです。
まとめると、私のダイエットに糖質制限は意味がなく、減らすなら脂質で、加えてタンパク質を十分摂らないと肥満になりやすいという、割とやっかいな体質だと判明したのです。
しかし、糖質制限中は主食代わりに肉類や玉子、チーズなどタンパク質も多いが脂質も多い食べ物を増やしてしたので、続けていたら体質に合わない脂質の過剰摂取によって体重はかえって増加し、健康も害していたかもしれません。
そうならなかったのは、本連載の主旨である悪い油(サラダ油やマヨネーズ、また、それらを使った揚げ物やスナック菓子など)を避ける食生活が身についていたため、摂取した脂質の総量が少なめに抑えられていたからだと思います。偶然とはいえ、不幸中の幸いです。
ダイエットの基本は自分の体質を知ること
インターネット上やテレビ、雑誌でダイエット関連の情報が絶えることはありません。糖質制限ひとつを取ってみても、勧める情報もあれば否定する情報もあり、迷うばかりです。最近では、医師や著名人の「最高」「最強」「究極」を冠にした食事法の書籍が相次いで出版されるなど、ますます情報に振り回され、どれが正しいのか判断できない状況です。
しかし、今回の体験で自分の遺伝的体質を知り、それに即した方法でなければ効果は期待できないことを知りました。自分の遺伝的体質を知ることで無駄な情報に惑わされずに済みますし、健康を損なうリスク回避にもつながります。
もちろん、遺伝的体質がダイエットのすべてではありませんが、遺伝的体質は一生変わらないので、知っていて損はありません。遺伝子検査のサービスも増えています。
体重を減らす王道は、健康を損なわない範囲で過剰な摂取カロリーを減らし、適度な運動で消費カロリーを増やすことに尽きるわけですが、過剰なカロリーをどの栄養素から減らすかがポイントで、それを把握しておくことが重要なのです。体質に合わない方法は健康を損ねることになり、本末転倒です。
ダイエットの実践のみならず、情報の選別や日頃の健康に役立てるためにも、自分の遺伝的体質を調べることは有意義であると実感しました。
(文=林裕之/植物油研究家)
*筆者の受けた遺伝子検査はヘルスケアラボの「遺伝子博士」ですが、ほかにも検査を実施しているところはあるので、興味のある方は「遺伝子検査」で検索してください。