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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

認知症は40代から無自覚に進行、「新常識」に驚愕…早期治療で9割が回復するリコード法

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
認知症は40代から無自覚に進行、「新常識」に驚愕…早期治療で9割が回復するリコード法の画像1
「Getty Images」より

「人生100年時代」となった現代。人々の興味は、単に寿命を延ばすことではなく「健康寿命」をいかに長くするかということにシフトしている。健康意識が高い昨今、アンチエイジングのために筋トレを行ったりスポーツジムに通うミドル・シニア世代も多いが、脳の機能低下を防ぐことにも注目してほしい。

 脳の機能低下といえば、認知症が真っ先に思い浮かぶ。実は、これまでの医学では、認知症の「末期」の状態を「早期」と診断していた。本来、認知症は40代頃から明確な症状がないまま脳の中で着々と進行していく。そして、60代頃になって症状が現れたときにはすでに「末期」へと近づいている。

 アラフィフ、アラフォーともなれば物忘れが多くなるが、加齢と片付けず、自身の脳と向きあう良いチャンスであると捉えるべきだろう。物忘れが多いと感じる場合には、軽度認知症、すなわち「MCI(Mild Cognitive Impairment)」を疑ってみたほうがいいだろう。

 MCIとは、一言で言えば「認知症の一歩手前」の状態であり、物忘れのような記憶障害があるが日常生活にほぼ支障はなく、認知症ではない。しかし放置すれば、脳機能の低下は進行し、認知症となる可能性が高い。MCIの段階で適切な治療を行えば、脳機能の低下は回復する可能性は高くなる。

 その治療法として、「リコード法」が注目されている。リコード法は、早期なら約9割が快復するという革命的認知症治療である。日本初のリコード法認定医でブレインケアクリニック理事長の今野裕之医師に話を聞いた。

 

 認知機能の低下(COgnitive DEcline)の回復(Reversal)という3つの単語の頭文字から名付けられたリコード法は、30年以上にわたり脳の研究を続けてきたデール・ブレデセン医師によって確立された。これまでの医療で行われてきた治療は、その要因のひとつ「アミロイド仮説」をターゲットにしていたにすぎないが、リコード法では脳を認知症へと蝕む「36の要因」があることを解明し、それらは大きく以下の6つにタイプ分けされている。

1.炎症性 感染症などによる炎症
2.萎縮性 ホルモンやビタミンなどの不足
3.毒物性 重金属などの毒素
4.糖毒性 高血糖
5.血管性 血管の病気の併発
6.外傷性 頭部のケガなど

 要因は患者によって異なるため、患者の状態によりオーダーメイド治療を行う。その要因を特定するためには、さまざまな検査が必要となる。現在の医療制度では、リコード法は自由診療であるが、今野医師のもとを訪れる患者は後を断たないという。

認知症は40代から無自覚に進行、「新常識」に驚愕…早期治療で9割が回復するリコード法の画像2 気になるリコード法の効果だが、今野医師の指導の下、リコード法の治療を2年間、続けたMCIの70代女性で目覚ましい効果があったという。

「70代女性の患者さんで、物忘れが一番の悩みでほかの病院を受診されてMCIと診断され、抗認知症薬を処方されていましたが、ご家族がほかの治療法を求めて私のクリニックに相談に来られました」

 一般的にMCIや認知症と診断された場合、進行を遅らせる薬が処方されることが多いが、薬では認知症を引き起こす36の要因のひとつを塞ぐにすぎず、その効果は大きくはない。

「最初に行った認知機能検査では、『場所の見当識と短期記憶』の部分で障害が見られました。当院では、パソコンを使ってより詳しく認知機能の検査が可能ですが、その検査では、加えて注意力低下と反応時間の遅延があることがわかりました」

 MCIには、それまでの生活習慣が大きく影響するという。

「生活習慣を聞いてみると、甘いものをよく食べる、睡眠時間不規則で寝ている時間が短いというような問題がありました。血液検査では、血糖値が上がりやすくなっている、栄養素が不足している、炎症が起きやすくなっている所見が見られました」

 今野医師が行う血液検査は、一般的な健康診断等で行うものとは異なる。その血液検査の項目は非常に細かい。

・リコード法に不可欠な血液検査の一部
CRP、インスリン、HbA1c、ホモシステイン、葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、A/G、アルブミン、AST(GOT)、ALT(GPT)、BUN、クレアチニン、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、エストラジオール、テストステロン、DHEA-s、TSH、FT3、FT4、銅、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロール、水銀、鉛、ヒ素、

 リコード法の治療のために必要な血液検査の項目は非常に多く、すべてを調べる場合には、時間も費用も要する。そのため、今野医師は患者の生活習慣と食生活を十分にヒアリングし、必要と思われる項目を中心に血液検査を行うという。項目の中に重金属もあるが、現代人にとって知らず知らずのうちに蓄積するものであり、認知機能低下につながることから、この数年、重金属のデトックスなどが注目を浴びている。

認知機能改善には食事管理が必須

 長年続けてきた食習慣によって起きる栄養素の不足や毒素の蓄積が認知症リスクとなりうるため、改善には食事管理が必須であるという。血液検査で体の状態が判明すれば、その一つひとつを改善するための栄養療法と生活習慣の改善を地道に続けていく。

「食事管理は間違いなく必須です。前出の70代女性のケースでは、糖質をしっかり控えていただいて血糖値の急激な上昇を防ぐことをメインに、普段使う油をオリーブ油にしたり、小麦・乳製品を控えていただいたりといったことで、炎症が起きにくい体質にする食事を指導させていただきました」

 不足する栄養素を食べ物から摂取するには限界もあり、微量栄養素を中心としたサプリメントの摂取も推奨している。

「サプリメントに関しては、食事だけで十分栄養を摂れるという軽症の方であれば不要なケースもあります。ただ実際には、サプリメントを使ったほうが私の経験上、より早く効果がある場合が多いです」

 また、長年かけて蓄積された毒素の排泄も、食事によって促すこともできる。

「最近、ある有名な医学系の雑誌で、認知症のリスクとして大気汚染が問題との記事があったのですが、こういった身の回りにあるものが脳に影響を与えるということもわかってきています。その排泄を助けてくれる野菜、たとえばブロッコリー、アボカド、ニンニク、パクチーなどを積極的に摂っていただきたいです。また、綺麗な水を飲むことも毒素の排出を促します。

 そういったことを常時、指導し、実行していただいたところ、3カ月ぐらいたった頃から少しずつ変化が出てきました。認知機能を調べてみると実際に点数が上がってきましたが、まず『言葉の記憶力』『注意力』が目に見えて良くなっていきました。そして2年が経過し、すべてが正常となりました」
(*診断基準は認知機能検査MMSEとコグニトラックスを採用)

 現代の生活習慣にはジャンクフード、運動不足、不規則な生活リズムなど認知症リスクが多く潜む。現代人が心がけるべきことは何かを聞いた。

「糖質、タンパク質、脂質の摂り方を見直してください。現代の食事は、糖質が過剰になる傾向にありますので、糖質はなるべく控えてください。また、脂質に関してはオメガ6脂肪酸という、炎症を起こしやすい油が過剰になる傾向にありますので、こちらも控えてください。20~30分の有酸素運動を週に3回程度、1日7時間の睡眠をとるといったことを心がけていただくと、20~30年後に大きな違いとなると思います」

 今野医師がこれまでリコード法で治療してきた患者の多くが、改善しているという。物忘れがあるという方は、食事と生活習慣を見直してみてはいかがだろうか。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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