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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

【宝くじの闇・中】天下り総務省OBに多額報酬、無駄な広報費に売上から年100億円支出

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
【宝くじの闇・中】天下り総務省OBに多額報酬、無駄な広報費に売上から年100億円支出の画像3
自治総合センターが入居する内幸町東急ビル

 宝くじに潜む利権の闇を明らかにする連載の第2回目。今回は存在意義が不明な割に宝くじ全体の売上から約100億円もの巨額なカネが割り振られる「社会貢献広報費」を取り上げる。

 前回の記事では令和元年度の販売実績は7931億円と紹介したが、賞⾦、地⽅⾃治体への分配金、諸経費に収まらない「社会貢献広報費」に全体の約1%にあたる105億円が割かれている。日本宝くじ協会のホームページによると、「宝くじの社会貢献性について、一般財団法人日本宝くじ協会による公益法人助成を通じた広域的な広報や、一般財団法人自治総合センターによる市町村向け助成を通じた住民に身近な広報を実施しています」とのことだ。

 この105億円が割り振られるという、「一般財団法人日本宝くじ協会」と、「一般財団法人自治総合センター」の2団体。実は2009年から3年あまり続いた民主党政権による事業仕分けのターゲットとなった。当時の模様は本サイトでも記事化されているのでそちらも参照いただきたいが、民主党政権での行政刷新会議がこの両団体について「廃止」を決定したものの、枝野幸男・行政刷新担当相(当時)が原口一博総務相(同)と会談し、結論を撤回し存続したという経緯がある。

 そもそも当時の議論では、この2団体の幹部を総務省OBなど天下り役人が占めており、宝くじの収益の⼀部が高額な⼈件費に利⽤されているということに加え、両団体が公益法人に対して行う助成金が実効性の極めて疑わしい事業に流れているといった不透明な点が問題となっていた。

 社会貢献広報費は事業仕分けを受けて予算額が半額にされたが、いまだに毎年約100億程度も投入されている状態が続いている。当時から10年が経過した現在はどうなっているのだろうか、検証する。

2団体トップは相変わらず官僚OB

 まず両団体のトップについてみてみよう。宝くじ協会の理事⻑は2014年から東京都副知事を経験した都庁職員出⾝の横⼭洋吉⽒が務め、団体ナンバー2の業務執⾏理事は総務省⾃治⾏政局選挙部管理課⻑を経験した、これまた天下り官僚の菊池雄三⽒が17年から就任している。

 自治総合センター理事長の荒木慶司氏は総務省ナンバー3にあたる官房長経験者で、消防庁長官の後に同省を退官。天下りコースに入り、自治体通信衛星機構理事長、全国市長会事務総長を経て今年6月から自治総合センター理事長に就任している。理事にも総務省上がりの米本由雄氏、青木信之氏、稲山博司氏などがズラリで、すがすがしいほどの天下り団体ぶりを発揮している。宝くじの収益が相変わらず総務省OBなど天下り役人の⼈件費に消えていく構造は何も変わっていないというわけだ。

よくわからない公益法人への助成

 次に、公益法人の助成の状況ついて見ていこう。

 まず、宝くじ協会の令和2年度の事業計画によると、総助成額は消費税込みで27億円。内訳をみると、広報効果の怪しい冊子の制作に数百万円から数千万円もの助成金が突っ込まれていることがわかる。この事業計画によると、冊子やパンフレットなどに3分の2に当たる約18億円が投入されている。

 例をいくつかあげよう。総務省が所管する選挙に関連した「明るい選挙推進協会」では、「若者向け選挙啓発冊子」が150万部刷られ、3700万円、「明るい選挙推進情報誌『Voters』」には81万部で3300万円も制作費として計上されている。Votersの⽬次などを⾒ると、⼤学教授などの有識者へのインタビューなど凝った内容になっているが、若者の投票率が低いのに⼩難しい話をしても効果はないどころか、逆効果だろう。それに、筆者はこのような冊⼦を役所や関連団体の窓⼝くらいでしか⾒たことがない。PDFでも配信しているようなので、少なくとも81万部も印刷する必要性は薄いと言わざるを得ない。

 それと、「日本さくらの会」には宝くじ桜1万9000本のために6500万円もの助成金が支払われており、過去にさかのぼっても、ほとんど毎年同程度の実績があることがわかる。本当に桜にここまでカネを支払う必要があるのだろうか。

 全体として、地方自治や消防など総務省の所管分野はもちろんとして、警察など旧内務省系の省庁と関係が深い団体に助成金が支払われている。しかも、91の助成先のうち、この年の新規事業はわずか14で、ほとんどの事業が例年継続されていることがわかる。つまり、社会貢献広報活動と謳っている割には、毎年関係者しか読まないであろう冊子にほとんど定額で最低数百万円単位のカネが振り込まれていることになる。還元率が4割と公営ギャンブル中最低だとすでに書いたが、これならもう少し宝くじの購入者に還元すべきだろう。

地方のコンサートに5億円、元プロの試合で3億円

 次に、自治総合センターを見ていこう。

 令和2年度の事業計画をみると、総額74億円の事業の内訳は①地方自治振興事業(1250万円)、②国際交流活動事業(950万円)、③調査研究事業(2311万円)、④調査委託事業(2400万円)、⑤⽂化振興事業(8億6220万円)、⑥コミュニティ助成事業(63億6260万円)、⑦環境保全促進助成事業(4800万円)、⑧シンポジウム助成事業(1億260万円)となっている。

 このなかで、とりわけボリュームが大きいのが⑤と⑥だろう。他の事業もわざわざ「社会貢献広報費」として宝くじの収益を使ってまでやるものでもないと思うが、とりあえず、この2つについて掘り下げる。

 まず、⑤の文化振興事業だが、計画を見ると地方を中心としてコンサートなどの催し物をするようだ。それぞれいくらかかったかは明らかにされていないものの、全137団体への公演で総額5億1560万円かかっており、平均約370万円が会場代や出演者のギャラとして消えている。

 宝くじスポーツフェア事業というのもあり、こちらは元プロ選手などによるサッカー、バレー、野球の全国8地区での試合で、ギャラに2億9760万円。こちらについては、確かにハデではあろうが、宝くじの広報効果としてははなはだ疑問だ。

消防団など地方へのバラマキに60億円

 次に⑥だが、令和2年度コミュニュティ助成額の決定額をみると、47都道府県すべてにそれぞれ支払われ、総額は59億1900万円。一般コミュニティ助成金の使途はほとんどパソコンなどの備品代で、地元消防団や自治会といった全国1450団体に31億9900万円⽀払われている。コミュニティセンターをつくるための助成金に14億9640万円で、残りはおおよそ地元の消防団に防災資金の名目だ。総務省取材経験の⻑いベテラン記者はこの助成金の実態を「選挙協⼒のバーターとしてのバラマキ」だと指摘する。

「要するに総務省を通じて与党が地方にばらまくカネなんですよ。地元消防団も国や県だけでなく、宝くじの収益という名目で振り込んでくれれば喜ぶに決まっている。社会貢献広報費などとうそぶいていますが、どこが『社会貢献』の『広報費』なのか。政治家の『選挙』貢献への『報償費』の間違いでしょう」

賃料年間1億の最上階オフィス

 そして、何よりこの「社会貢献広報費」が総務省OBの利権なのかを象徴するのが、この令和2年度収支予算書。自治総合センターのものと、宝くじ協会のものを両方検証する。

 ⾃治総合センターのほうを⾒ると、まず⽬を惹くのが、総額5億1千万円の「管理費」の中に含まれる各名⽬である。まず役員報酬が4890万円、給与が1億2590万円、それに賃借料1億150万円だろう。定款によると、役員は理事5人以上10名以内、監事2人以内とするとしており、評議員会で支給基準を定めるとある。令和2年10月1日時点で理事8人と監事2人の計10人なので、単純計算すると一人当たり489万円が支給されていることになる。それに給与が乗っかると、幹部は年間1000万円近く⽀給されている計算になる。

 それに、賃借料が年間1億円もするのは、日比谷公園の近くの内幸町東急ビルに入居しているからだ。幹部の出⾝である総務省の近くでもある上、最上階13階だからそれくらいしても当然だろうが、本当に適正な物件の選択なのか、⼤いに疑問が残る。

 宝くじ協会のほうも、給料手当は4800万円と総合センターよりは少ないが、賃借料は1億2000万円と高額。⾃⺠党本部や全国都市会館の近くの地共済センタービル5階に⼊居しているのだから納得だが、公平に⾒て宝くじの収益⾦の分配をするだけの団体にしてはオフィスの⽴地がよすぎるのはいうまでもない。

予算半減でもやっぱり高い人件費

 Business Journal編集部を通して、質問状を自治総合センター宝くじ協会に送った。自治総合センターに対する質問と回答は以下の通り。

【質問1】

 宝くじの収益金が「社会貢献広報費」という名目で貴団体を通して年間74億円分配されていますが、貴団体の事業を確認したところ、大半が地方の消防団などへの備品整備のための助成金であったり、コミュニティーセンター建設のための資金であったり、宝くじの社会貢献性を広報するものとしては不適切なものであると考えられます。全国に毎年定額をばらまいているという指摘もありますが、選考の基準をご教示いただけますでしょうか。また、ハコモノ建設や備品の整備が、宝くじの社会貢献性を広報するものだとされる理由について、ご教示をいただけますでしょうか。

【回答1】

 公益性や広報効果など、発売団体から示された基準に従って決定しているものです。

【質問2】

 理事長と理事、監事、職員の年間給与の支給額について、令和2年度の収支予算書によると、役員報酬が4890万円、給与が1億2590万円となっていますが、分配の割合、および職員数をご開示いただけますでしょうか。

【回答2】

 それぞれの職責に基づいた職員20名分に係る給与となります。

【質問3】

 令和2年度の収支予算書によると、賃料が年間1億150万円となっていますが、貴団体が宝くじの収益金を分配することを主な目的とする組織であれば、このような高額なテナントに入居する必要はないと考えられますが、このテナントに入居されておられる理由をご教示いただけますでしょうか。また、転居して宝くじの収益金をくじの購入者に還元する可能性はございますでしょうか。

【回答3】

 発売団体、受託銀行や宝くじドリーム館と連絡調整が行いやすい場所としております。

 また、宝くじ協会に対する質問と回答は以下の通り。

【質問1】

 宝くじの収益金が「社会貢献広報費」という名目で貴団体を通して年間27億円分配されていますが、貴団体の事業を確認したところ、大半が広報効果が低い冊子などに毎年消えています。国⺠1⼈当たり2台スマートフォンを持つ時代に、PDF送信などにすればよく、毎年ほとんど同じ団体に1事業当たり数百万円以上もの高額な制作費が分配されていることについて、不適切な分配だという指摘もあります。助成の基準、および現在の上記分配を改める方針はお持ちでしょうか。

【回答1】

 公益性や広報効果など宝くじの発売団体から示された基準に従って助成を決定している。

【質問2】

 理事長と理事、職員の年間給与の支給額について、収支予算書によると4800万円となっていますが、分配の割合、および職員数をご開示いただけますでしょうか。

【回答2】

 それぞれの業務などに基づいた職員6名に係る給与である。

【質問3】

 賃料が年間1億2000万円となっていますが、貴団体が宝くじの収益金を分配することを主な目的とする組織であれば、このような高額なテナントに入居する必要はないと考えられます。このテナントに入居している理由をご教示いただけますでしょうか。また、転居して宝くじの収益金をくじの購入者に還元する可能性はございますでしょうか。

【回答3】

 宝くじの公益性、役割等について積極的に広報活動を行うために設置している、宝くじドリーム館2カ所(東京・大阪)の借り上げ経費などである。

助成⾦を即刻廃⽌して1億円くじを105本増やせ

 両団体からの回答を検証していこう。

 広報費の使い道について、「公益性や広報効果など、発売団体から示された基準に従って決定している」としているが、地元消防団の備品や関係者しか読まない冊子に本当に「公益性や広報効果」があるのかは大いに疑問だ。

 次に人件費だが、自治総合センターは役員報酬4890万円、給与1億2590万円を20人で割っているというが、当然20人全員が役員報酬を受け取れるわけではない。役員は先ほどご紹介したように10人だから、一人当たり500万程度だと仮定して、残りの1億2590万円を20人で割ると629万5000円。ヒラの職員はともかく、役員はそれぞれ1000万円程度は給与としてもらっていると考えていい。

 宝くじセンターは6人で4800万円とのことだが、単純計算で一人800万円の計算になる。実際は役職により違うと考えらえるため、トップは年収1000万円超えは間違いないだろう。

 両団体とも先ほどご紹介した前例を踏襲することが主となっている業務内容に対して、幹部職員の給与がこの⽔準では⾼いのはいうまでもない。

 賃貸料については、宝くじ協会の「宝くじドリーム館」も、総合センターの「連絡調整が行いやすい場所」のオフィスも、説明としては理解はするが、ドリーム館の必要性⾃体やリモートワークによる業務上の⾯会の削減などを考えれば、今後是正は可能だろう。

 これまで公開資料と質問状を通して、いかに宝くじの収益⾦が総務省OBなど天下り役人の⾼額な⼈件費や、総務省などの省庁と関連する公益法⼈の不透明な助成に流れているかを明らかにしてきた。これらの事業に105億円もつぎ込むのなら、1億円の当たりくじを105本増やして還元率を上げるべきだろう。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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