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国のコロナ対策、矛盾が鮮明…公共交通機関の利用制限・国民の移動制限、必要性の指摘も

文=編集部
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写真はイメージです(Robert Essel/Getty images)

 新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大に伴い、菅義偉首相は5日、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を表明した。新型コロナ対策の特別措置法に基づくもので、政府は感染リスクの高い飲食店などを対象として限定的に実施するという。政府は合わせて多くの企業にテレワークを要請するなどして人の移動」も抑制する方針も示しているが、急転直下の事態に多くの企業や労働者に動揺が広がっている。

 そんななか、テレワークを実施できない企業の関係者から特に不安視されているのが、昨年4月の1回目の緊急事態宣言発出以来、ずっと抜本的な対策もなく、手付かずのまま放置されている首都圏の通勤列車だ。鉄道各社による日々の消毒殺菌措置や、車内換気の徹底、オフピーク通勤奨励などで、かつてほどの密な「満員電車」は見られなくなったものの、政府や自治体が推奨する「ソーシャルディスタンス」からは程遠い混み具合であることは確かだ。

東京都の感染経路不明者は6割越え

 そんな中、多くの企業関係者が不安視するのは東京都で感染経路不明者が急増していることだ。都によると、昨年12月14日時点で、1週間平均の新規感染者に占める感染経路不明者は56%だったが、21日には59%、28日時点では62%に達した。

 東京都品川区の中規模IT企業に勤務する管理部門担当者は次のように語る。

「経理など、どうしても恒常的に出社が必要な社員以外はテレワーク、もしくは週1くらいの勤務シフトです。昨年来、テレワーク主体の運用なのですが、去年の12月に感染者が出て大騒ぎになりました。感染した社員は週1出社勤務でした。感染が判明した週、この社員が会社に滞在していた時間は2時間、通勤時間が往復で3時間です。それ以外の外出は近所のコンビニ以外はなかったとのことで、感染経路は不明となりました。会社内にいるより、通勤することのリスクが高い気がするのですが……」

保健所関係者「通勤列車が安全かどうかわからない」

 実際、コロナ禍での政府の公共交通機関の利用に関するガイドラインは、整合性がとれていない。外国から入国するすべての人(日本人の帰国者を含む)を対象とする政府のガイドライン「水際対策の抜本的強化」では、空港等から人との接触を避けるための待機場所(又は宿泊施設等)に移動する際、公共交通機関を利用しないことを強く要請している。つまり政府は感染拡大の防止に、公共交通機関の使用制限は効果的だと考えているのだ。

 厚生労働省医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全企画課検疫所業務管理室によると、水際対策における公共交通機関の利用制限要請の根拠は政府の閣議決定だという。だが、一方で政府は国民の移動に関しては、通勤列車はもちろん、むしろ「Go Toトラベル」で促進していた。東京都内の保健所職員は次のように話す。

「感染者が今ほど大量に出ていない時期ならまだしも、ここまで広がると、正直、通勤列車が“本当に大丈夫”かどうかわかりません。政府や自治体の専門家の先生方が複雑骨折したような衛生学的な見解を示されていますが、要は人との接触を極力減らすべきなので、乗らないに越したことはないということだと思いますが……。

 入国者が公共交通機関の利用制限要請を守らず、公共交通機関を利用してしがまった例もあります。また、ここまで国内で感染者が増加してしまえば、入国者と同じくらい国内のいる人間にも感染リスクがあると考えるのが自然でしょう。

 国会審議で新型コロナ特措法改正案にどのように盛り込まれるのかはわかりませんが、公共交通機関の大規模運休や国民の移動制限の是非に関しても早晩、議論する必要性が出てくるのではないでしょうか」

 新型コロナ特措法改正案をめぐっては飲食店などの営業自粛要請の強化や休業要請違反事業者の罰則規定の創設などが議題に上がっている。一方で法改正によって、『公共交通機関運行休止要請』や『国民の移動制限』などを含む、いわゆる『ロックダウン』を実施可能にするかどうかに関しては、国内経済への打撃が大きく自民党内では反対の声が大きい。自民党の中堅衆議院議員秘書は次のように声を潜める。

「結局は二階俊博幹事長次第ではないでしょうか。今でも『Go To』の早期再開を強く主張されているようです。東京オリンピックもあそこまで『開催する』と断言されているわけですからね。国民が移動できない、電車やバスが動いていないなんてことはあってはならないんでしょう」

 緊急事態宣言も特措法改正に伴う規制の強化も国民に痛みを強いる。だらだらと実効性のない散漫な対策を続ければ、ダメージは雪だるま式に大きくなる。規制を実施するのなら掛け声にとどまらず、短期かつ徹底的にできることすべて行う局面に差し掛かりつつあるのではないか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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