
みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。
長引くコロナ禍を受けて、多くの企業が事業規模縮小・リストラ・ボーナスカットなどを余儀なくされています。新型コロナの影響による解雇が8万人を超えたという報道もありましたが、コロナ解雇の中で最も世間の注目を集めたのは、昨秋に報じられたディズニーの大量リストラではないでしょうか。
米国のウォルト・ディズニー社が、2021年3月までに米国内のテーマパークのスタッフを中心に3万2000人の雇用契約を打ち切るというものです。また、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドも、約4000人の正社員と嘱託社員の冬のボーナスを7割カットし、ダンサーら約1000人に対しては配置転換や退職を求めたことが報じられました。その結果、辞めることを選択する人も少なくなかったようです。
ディズニーはコロナの影響で入園者数の制限や営業時間の短縮が行われ、パレードやショーのプログラムも減らして営業しています。当然ながら、経営への悪影響は不可避であり、テーマパーク業界全体が追い詰められる中、何らかの手を打つ必要があるということは理解できます。
しかし、一連の報道を受けて、ディズニーは外資系企業のひとつにすぎないという事実を突きつけられた気がしました。そして、「ディズニー=夢の国」ではないということを実感させられ、悲しい気持ちになりました。
なぜなら、こういった経営判断は、確かに外資系企業としては一般的なことなのですが、日本社会にとってはまだまだ馴染みがないやり方なので、関係者に大きな衝撃を与えてしまうからです。また、素晴らしいブランド価値を有するディズニーだからこそ、ブランディングの視点から見ても、決してほめられるものではありません。
そこで今回は、外資系企業と日本企業の人材に対する意識の違いや、このリストラがブランディング的に失策だと考えられる理由を、お伝えしたいと思います。
日本社会に馴染まない外資系企業のやり方
一口に「外資系企業」と言っても、外国の企業が日本で会社を設立する場合、外国の企業と日本の企業が共同出資で会社を設立する場合、外国の企業が日本の企業を買収する場合など、いろいろなパターンがあります。そうした背景によって性質が異なるため一概には言えないのですが、外資系企業にとって「人材」の重要性はそこまで高くない場合がほとんどです。
外資系企業にとって最も大切なのは「株主」で、社員などの「人材」は会社の資産ではあるものの、経営不振の際にはカットする候補のひとつとなります。
外資系企業のリストラ話でよく耳にするのは、プロジェクトが終了もしくはなくなった場合にチームのメンバーも同時に解雇される、というような内容です。日本企業であれば配置転換などで雇用を維持し、むやみに人員削減策には手をつけません。そして、万策尽きたときに、ようやく早期退職や希望退職を募るのが普通です。また、その場合も退職金を多めに設定したり、次の就職先を斡旋したりするケースが多いです。