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不妊治療の現場で注目されているのは子宮内フローラの改善

文=HEALTHPRESS編集部
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新橋夢クリニックの瀬川智也院長

 菅総理が政策の目玉として打ち出した「不妊治療の保険適用の拡大」で、注目の集まる不妊治療の分野。保険適用拡大の具体策については、現在進行形でさまざまな議論がある中、「体外受精」や「顕微授精」、受精卵を子宮内に移植する胚移植などを含む生殖補助医療(ART)を中心に自費診療を行っている新橋夢クリニックの瀬川智也院長にお話を伺った。

「2007年に不妊治療センターとして新橋で開院以来、常に患者さんの負担が少なくかつ高い妊娠率を目指しながら、不妊治療を行ってきました。最近では私たちも患者さんも特殊な治療をやっているというイメージが少なくなってきましたね。1日70~80件ぐらいの外来がありますが、妊娠する為にARTしてまでもという方は少なくなってきています」と振り返る。

卵巣へ負担軽減、自然周期に近い状態での採卵法

 新橋夢クリニックの不妊治療の特徴として、まず先生があげられたのは個々人のAMH値(抗ミュラー管ホルモン)を重視する、低刺激なオーダーメイドな採卵方法。

 AMH値は卵巣にどの程度卵子が残っているのかを調べる検査だが、この数値を見極め、低刺激な内服薬を使い自然周期のホルモン値に近い状態で採卵し、その後、体外受精や顕微授精を行う。

「日本での不妊治療を受ける患者さんは高齢の方が多いため卵が出にくい傾向があります。多くのクリニックは注射による強めの排卵誘発剤を使用し、より多くの卵をとるという考え方をしますが、高用量の誘発剤では卵巣に負担がかかり腫れたり、逆に卵の数が減っていく、閉経が早まるなどの可能性もあるのです」(瀬川院長)

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 もうひとつ妊娠を成功へと導くために取り入れているのが「小卵胞穿刺採卵」。通常、1回の排卵タイミングで排卵できるのは良い発育状態の「主席卵胞」だけだが、これ以外の途中まで大きくなった残りの十数個の小卵胞を穿刺することで卵回収率を高める。つまり通常のクリニックでは使わない小さな卵も使うということだ。

「出血や痛みを少なくするため細い採卵針を使用するのですが、そのためには穿刺する高い技術が必要になります。当院生産症例(2017-2019年)のうち大卵胞由来児が63%、小卵胞由来児が37%ですから、その成果は大きいと思います」と瀬川院長。

子宮内のフローラを改善するラクトフェリン

 もうひとつ不妊治療の中で注目しているのは子宮内のフローラ(細菌叢)だ。腸内フローラはよく知られているが、最近では子宮内フローラが注目され、その検査も可能になっている。

「子宮内フローラに関しては数年前から学会などで話題になっていました。海外でラクトバチルス(Lactobacillus)という種類の常在菌が支配的であるほうが体外受精での妊娠成功率、生児獲得率ともにいい数字となっていることが報告されています。当院では反復着床不成功(RIF)の患者さんに子宮内フローラの検査を勧めています。その結果、フローラのバランスが乱れていれば改善策を提案しています。子宮内フローラも腸内フローラ同様に変えることができるからです」と瀬川院長。

 フローラ改善のためのアプローチは大きく分けてふたつ。生きた有用な菌そのものを体内に取り込む<プロバイオティックス>と、特定の細菌を増殖させることなどで有益に働く食品成分を摂取する<プレバイオティックス>だ。前者は乳酸菌製剤や乳酸菌食品となり、後者は食生活を改善し葉酸、ビタミンE、カルシウムなどを摂取して体内環境を調整する方法だ。

「当院では、プロバイオティックスとプレバイオティックスの併用を行っています。特に後者では食物繊維摂取の代用にもなる吸収効率のいいラクトフェリンのサプリメントを導入しています」(瀬川院長)

 ラクトフェリンは、哺乳動物の体内に存在し母乳や涙などに多く含まれる天然の多機能性たんぱく質。抗菌・抗ウィルス作用、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫調節作用、骨形成作用、抗がん作用など、様々な作用があるといわれている。子宮内のフローラを健全化することで腟内の細菌性疾患対策にもその効果が期待されているという。

「ラクトフェリン1日3錠、2カ月ぐらい内服していただき、その後に受精卵の移植などをおこないます。ラクトフェリンは腟内感染予防のほかに早産予防の効果があるとの研究があり、着床後から出産まで服用を続けた方がいいと思っています。妊娠すると便秘になりがちなのですが、便秘が解消するという良い面もあります」

 こう説明する瀬川院長。子宮内フローラ検査を行いフローラの環境改善をすることによって、RIF患者さんの半数近くが妊娠に至っているという実感を持つという。

妊娠率を高めるための着床前胚染色体異数性検査

 新橋夢クリニックでは、妊娠率を高め女性にかかる身体的精神的な負担を軽減し、かつ治療費用の削減につなげるため、日本産科婦人科学会が承認している施設のひとつとして参加している臨床研究がある。

「現在全国の92施設で1000~2000例を目標に進めている着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)です。着床不全や流産の主要な原因として考えられる染色体異数性を調べるため、反復ART不成功者、習慣流産(反復流産)患者では、受精後の胚の一部の細胞を取り出し染色体の異常の有無を調べます。

 これまでは異常かどうかを分からないまま胚を移植して結果がだめだったということがありました。これからは染色体数が正常なものだけを移植しますから成功率は飛躍的に変わると思います。染色体数に異常がない胚なのに妊娠しない場合は、次の段階として、子宮の内膜環境などが原因だと突き詰めていけることにもなります」と説明する瀬川院長。最後にこう付け加えた。

「結婚する若者が少ない、出生数が落ちているなどと言われていますが、そこはもちろん私たちのようなクリニックが関われる分野ではありません。しかし不妊治療の現場では、妊娠しやすい若い人たちが経済的な負担を理由に諦めてしまうというケースが少なくありません。不平等論もあるかもしれませんが、若い人の不妊治療に対する支援を少し手厚くしてくれたら出生数が上がると思います。不妊治療の世界はどんどん進化しています。子宮内フローラの改善もPGT-Aも今後の不妊治療では欠かすことのできないものとなるでしょう。私たちは子供を持ちたいと願うすべての人たちのために全力で支援していきたいと願っています」と結んだ。

(文=HEALTHPRESS編集部)

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瀬川智也(せがわ・ともや)
プロフィール
1992年に金沢大学医学部医学科卒業
金沢大学医学部助手、加藤レディスクリニック勤務を経て、
2016年より新橋夢クリニック院長・理事
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医
日本A-PART学会 理事

新橋夢クリニック
https://www.yumeclinic.net/

※子宮内フローラのためのラクトフェリンのご購入はこちら
https://www.varinos.com/lactoferrin

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