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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

ラジコ、人気の秘密…窮地のラジオ業界に光、無料会員でも高機能サービスを享受

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
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「radiko」公式サイトより

 インターネットの普及は、マスメディアに大きな負の影響を与えている。YouTubeSNSなどに時間を消費し、テレビをみることがめっきり減ったという人も多いことだろう。さらに、マスメディアのなかでも、とりわけラジオは“もう終わったメディア”といった印象を持っている人も少なくないかもしれない。

 しかし、インターネットを通じて、ラジオ局の放送を無料で聴けるサービスを提供する「radiko(ラジコ)」は、順調にユーザーを増やしている。本稿では、ラジコの好調の要因とラジオの今後の可能性について検討する。

 株式会社radikoは2010年に設立された。当時のラジオ業界は苦境に陥っており、同年には広告費が10年連続で前年割れとなる状況であった。こうした状況を打破するために、全国のラジオ局や電通などが出資して設立されている。現在、NHKに加え、民放連加盟101局中93局が参加している。

 2019年4月時点において、日間アクティブユーザーは141万人、月間アクティブユーザーは768万人にも及んでいる。また、有料のラジコプレミアム会員は60万人を超えている。

 こうしたラジコの貢献もあってか、2010年以降、ラジオ広告費の減少は下げ止まっている。

 ラジコのサービスに関して、すでに利用している人も多いのではないかと思われるが、概要を確認しておこう。まず、無料のサービスに関して、ユーザーがネットに接続しているエリアのAMやFMをライブで聴くことができる。また、タイムフリー機能においては、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことができる。筆者の感覚では通常、こうしたタイムフリー機能は有料サービスとなってもおかしくないと思われるが、スポンサーへのアピールなどを第一に、とにかく聴取者を増やすということかもしれない。

 また、有料サービスのラジコプレミアム会員になると、エリアフリーで日本全国の放送を聴くことができる。このサービスを利用すれば、エリア外のプロ野球チームの試合、また出張でエリア外にいても、いつも聴いている放送を聴取できる。しかも、料金は月額350円(税別)と、とてもリーズナブルである。さらに、サイトもうまくできており、機能性が高く、操作性にも優れている。

 テレビと比較し、ラジオは音声だけで映像はなく、インパクトに欠けるメディアといった見方もあるかもしれない。しかし、テレビの場合、製作費が高額なため、多くの視聴者を必要とする。結果、朝のワイドショーのように各社、似たような番組が放送されることになってしまう。しかも、多くの人が強い不満を抱かないように無難な、当たり障りのない番組づくりに陥ってしまっている。

 しかし、ラジオの場合、製作費が低額で済む場合も多く、結果、ニッチな層を対象とした番組提供も可能である。たとえば、関東に住み始めて間もない筆者は知らなかったが、ニッポン放送では夕方に笑福亭鶴光氏がMCを務める『鶴光の噂のゴールデンリクエスト』という番組が放送されている。鶴光氏といえば、筆者が学生時代、『オールナイトニッポン』のMCを務め、リスナーが「この番組は放送して大丈夫なのか?」と思ってしまうほど下品な内容により、絶大なる人気を誇っていた。

 さすがに夕方の放送だと、そういうわけにはいかないだろうと思いつつ、試しに聴いてみたところ、当時となんら変わりなく、思わずニッポン放送に向けて拍手してしまった。さまざまなハラスメントが声高に叫ばれるなか、このような番組を放送する勇気に敬服してしまった。この番組は多くの中高年の男性にとって、昭和を回顧させる貴重な場になっていると、リスナーからの投稿などを聴きながら感じた。

 もちろん、テレビの視聴者数と比較すれば、聴取者の数はそれほど多くないかもしれない。しかし、ICTの影響により、メディアが多様化する現代においては数の多寡に加え、ロイヤリティの高低も重要なポイントになってくるだろう。その場合、ラジオはテレビや新聞と比較して、有意なポジションにあるのかもしれない。
(文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授)

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