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東芝、議決権行使めぐり経産省が株主に圧力か…投資ファンド、第三者委員会の設置を要求

文=編集部
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東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)

 東芝は1月29日、東京証券取引所の第1部に、3年半ぶりに復帰した。2017年に不正会計や米原発事業の子会社の巨額損失で債務超過となったことで、第2部に降格されていた。東芝は約6000億円の大型増資や半導体メモリー事業の売却で、辛くも破綻を回避。18年にメインバンクの三井住友フィナンシャルグループ副社長を務めた車谷暢昭氏を会長(現・社長)兼CEOに招き、リストラを進めてきた。1兆円の損失を生む可能性のあった米国の液化天然ガス(LNG)事業を手放すなど経営リスクの遮断が進んだ。20年3月期の連結営業利益は1304億円。前期の3.7倍となった。

 車谷社長は1月29日、「1部への復帰は経営危機から再建途上にある当社において大きな節目。本日を東芝のリスタートの日として、カバナンス、コンプライアンスの一層の強化に努める」との談話を発表した。

 だが、厳しい経営のカジ取りが続く。「道なき道の悪路を行くようなものだ」(東芝の役員OB)という見方もある。21年3月期の連結営業利益は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって前期比15.7%減の1100億円にとどまる見通し。次の柱と期待する再生可能エネルギー事業などの育成が急務だ。

“物言う株主”が調査を求める

 東芝は依然として株主対策に追われている。車谷社長に対し、アクティビストファンド(物言う株主)や外資系ファンドが不信感を強め、相次いで臨時株主総会の開催を要求。東芝は、それを受け入れた。

 大株主である旧村上ファンド系の投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、「車谷社長の再任を決議した昨年7月の株主総会に“不正”があったのではないか」との疑問を投げかける。株主総会ではエフィッシモが社外取締役候補を独自に提案し、会社側と対立した。特に議決権ベースで4%超の東芝株を保有するハーバード大基金の投票行動に関心が集まっている。

 ロイター通信は<年金積立金管理運用独立法人(GPIF)のCIO(最高投資責任者)を務めた後、経済産業省の参与に5月に就任した水野弘道氏から説明を受け、ハーバード大基金は議決権行使を断念した>と報じた。水野氏は総会の1週間前、ハーバード大基金に対し、「会社提案にノーといえば、(外為法上の)インベスティゲーション(調査)が入りますよと連絡した」というのだ。

 改正外為法では複数の外国の投資家が合意し、上場会社の議決権を行使する場合、議決権の合算が10%以上になると新たな届出の対象となる。水野氏が指摘したのはエフィッシモとハーバード大基金の関係性。同基金はエフィッシモにも出資していた。両者の議決権を合算すれば2割(当時)に達していた。

 車谷社長は57%という低い賛成率で取締役に再任された。エフィッシモが提案した取締役候補3人の選任はいずれも否決されたものの、1人は44%の賛同を得た。ハーバード大基金が議決権を行使していればどうなったかという話になる。

 エフィッシモは「経産省の圧力で議決権行使を断念した株主が存在している」として、第三者委員会を設置して調査するよう東芝に求めた。しかし、東芝が、これに応じなかったため、「議決権行使に関する不透明な実態を明らかにする必要がある」として、臨時株主総会の招集を請求した。

チヌークは中期経営計画を突如、大きく変更したことを問題視

 米運用会社ファラロン・キャピタル系のファンド、チヌークホールディングスは再任された車谷社長が中期経営計画「東芝Nextプラン」を突如、大きく変更したことを問題視している。

 東芝は「(大型のM&Aの失敗を教訓として)自律的な成長と小規模M&Aにより、“巡航速度“での成長を目指す」としてきた。ところが20年11月、この方針を大きく変更。合理的な説明がないまま、「1兆円規模の資金をM&Aや自己株取得に充当する」ことを決めた。チヌークは総会で車谷氏に変更した理由を確認する構えだ。

 約6000億円の大型増資で、東芝の株主は一時期、海外投資家が約7割を占めた。半導体メモリー事業を約2兆円で売却したことで18年から19年にかけて7000億円規模の自社株買いを実施。この自社株買いに応じて一部の株主は持ち株を売却し、投下した資金を回収した。

 確かに海外投資家の比率は約6割まで下がったが、「アクティビストとされる株主が全体の2割以上を保有している状態が続いている」(関係者)。

 3月に開催される臨時株主総会の最大の争点は、「議決権行使を巡って、経産省から不当な圧力があった」として、この件を調査するために3人の弁護士を「調査者」として選任するよう求めるエフィッシモの提案に、ほかの株主がどういう態度をとるかだ。「調査者」は経営陣やエフィッシモから独立して調査を行う。

「東芝の定時株主総会で経産省が議決権行使に干渉したのではないか」との疑惑は、コーポレートガバナンスの核心にかかわるものだ。きちんと解明しなければならない。臨時総会が波乱を呼ぶ可能性は否定できない。

(文=編集部)

【続報】

 東芝は2月12日、3月18日に臨時株主総会を開くことを決めた。成長戦略を疑問視する大株主に車谷社長はきちんと説明できるのだろうか。

 同日、2021年3月期の連結純利益の見通しを上方修正し、配当を上積みすると発表した。20年4~12月期の連結最終損益は436億円の黒字(前年同期は1456億円の赤字)となった。同期間の黒字は2年ぶりのことだ。ただ、物流子会社、SBS東芝ロジスティクスの売却益が寄与したもの。

 売上高は前年同期比15%減の2兆995億円、営業利益は62%減の240億円だった。21年3月期(通期)の連結最終損益は700億円の黒字となる見通しだ。前期は1146億円の赤字だった。従来予想から200億円引き上げた。期末配当は1株40円と10円上積みした。この結果、年間配当は50円(前期は20円)となる。営業利益は1100億円の従来予想を据え置いた。

BusinessJournal編集部

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