キリンHD、クーデターのミャンマー国軍系企業と合弁、解消に壁…海外戦略が行き詰まりの画像1
麒麟麦酒本社(「Wikipedia」より)

 ミャンマーでアウンサン・スーチー国家最高顧問ら政権幹部を国軍が拘束する軍事クーデターが勃発し、現地に進出している日本企業の間に衝撃が走った。2月1日のクーデター発生から1カ月が経過したが、2月28日には治安部隊が各地で発砲するなど、デモの抑え込みに躍起となっている。国連人権高等弁務官事務所によると、18人以上が死亡、30人を超える負傷者が出た。市民は「不服従」で抵抗を続けており、混乱は各地で拡大している。

 キリンホールディングス(HD)はクーデター発生から4日後の2月5日、ミャンマーでのビール事業に関し、国軍系複合企業との合弁を早期に解消すると発表した。クーデターで実権を掌握した国軍の資金源となっている可能性を、人権団体や国連から指摘されていた。すでに合弁解消を申し入れており、今後別のパートナーを探して同国での事業継続を目指す。しかし、「市民は国軍系企業の傘下の会社が手掛けるビールやたばこなどの不買を呼びかけている」と現地では報じられている。

 多くの日本企業が合弁事業を展開している。クーデター後、合弁解消の動きが明らかになったのはキリンHDが初めてであった。

キリンHDは苦渋の選択

 キリンHDの磯崎功典社長は2月15日の決算会見で、「ミャンマーから撤退しない」との考えを明らかにした。合弁相手との「パートナーシップのもとでは、期待されるビール事業を継続することができなくなったと判断した」と説明する一方で、「ミャンマーから撤退することを意味するものではない。引き続きミャンマーでのビール事業を通じて同国に貢献していく」と述べた。

 ミャンマーのビール事業の合弁相手である国軍系複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)と合弁解消に向けた交渉を始めたことを明らかにした上で、協議を急ぐ考えを示した。事業を続けるために「新たな現地企業を迎えたい」とした。

 キリンHDは2015年、MEHLとシンガポールの飲料大手が経営していたビール最大手のミャンマー・ブルワリー株式を697億円で取得。ミャンマー市場に参入した。ミャンマー・ブルワリーの20年の売上高は318億円、事業利益は138億円と絶好調だ。17年、MEHLとキリンHDはミャンマー北部で中堅ビール会社、マンダレー・ブルワリーを設立した。いずれも出資比率はキリンHD 51%、MEHL 49%である。

 ミャンマーのビール市場は「ここ10年間で6倍になった成長市場」(関係者)といわれている。「キリンHDが買収した2社のシェアは合わせて9割に達する」(同)。

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